当院の治療例(Before&after)集

根管治療

感染根管治療の一例 001 #13

歯の内部に細菌が感染して(感染根管)、治療を行わず放置しておくと顎の骨が溶かされ(骨の密度が減少し)、歯の寿命に影響を与えることがあります。

腫れたと認識されることもありますが自覚症状はあまりなく慢性の経過をたどることが多いようですが、噛めない、時々腫れるといった症状や、急激に腫れて痛みを感じることもあるようです。

通常、歯の根っこ(根管)は骨の中に埋っており、さらに表面は歯ぐき(歯肉)にカバーされているため、感染する機会はありません。

どこから感染するのか? というと最も多いのがむし歯(う蝕)の延長線上(放置)にあります。むし歯はエナメル質にとどまるような表面的な初期むし歯を除き、自然治癒することがありません。むし歯が象牙質に達している場合は根の中への影響が出てきますので、早めに治療をしましょう。

では、本題に入ります。

本来、無菌空間であった歯の根の内部(以下、根管内と表記)の治療を根管治療といいます。簡単にいえば、根管内の細菌を限りなくゼロに近づけて、その後再び感染をしないようにする治療です。

「歯の根の先に膿がたまっています」とか「根の先に膿の袋があるようです」とか言われたことはありませんか?

通常のX線写真ではこのように見えます。根の先のまわりの骨がなんとなく黒っぽい感じです。根管内に感染した細菌の影響で骨の密度が溶けてるとはこのような状態です。

なかなかわかりにくいですね。では、文明の利器を用いてもっとわかりやすくしていきます。

歯科用のCTで撮影したものです。根の先の骨が溶けているように見えましたか?
実際にはX線に反応する骨の成分(無機質)が減っているだけなのか、空洞になっているかはわかりませんが、感染した根管が骨に影響を与えているという事実は確認できるでしょう。

別のCTの画像を見てみましょう。

向かって左側が唇方向、右側は上あごです。根管の先を中心にして骨が黒くなっています。
最初のレントゲン写真のように正面から見るとわかりにくいですが、この角度からみると一目瞭然ですね。

さて術前の状態が確認できました。治療の戦略を練ります。

この歯は、むし歯の放置が原因でこのような状況になっていました。
多くの場合そうですが、むし歯でどれくらい歯が溶けているか? 逆をいうと、どれくらい歯が溶けずに残っているかが、根管治療を行うかどうかのポイントになってきます。

つまり、根管治療を行ってもかぶせ物をしていくに耐えられるかどうかの判定をします。

これはなぜか? 

飾りとしておいておくのならいいのですが、歯は噛むためにあるわけですから、根管治療後は噛み合わせの力を一生受け続けるわけです。力に耐えられない歯は、根管治療の対象から外れることが多くあります。

この歯は、根管治療を行いました。

 

そして、約1年後の結果がこちらです。

標準に撮影するこのエックス線画像でみると骨の濃淡は均一化されているように見えます。

では、再び、もう少しわかりやすくしてみましょう。

CTによる3D再構成画像

CTの断面画像

 

比較してみましょう。

治療前

治療後

治療前

治療後

骨が溶けていたところに、骨が戻って来ているのが確認できたでしょうか?
約1年でここまで再生すれば非常に良い結果といえるでしょう。
根管内の細菌を取り除くことで、自然治癒力が発揮され、細胞レベルでの治癒が得られたという一例です。

例えば、根管治療を行ったが早期に再発や腫れが見られたため、根管の先端を切除する外科処置(歯根端切除術)を早期に行うことも稀にあります。実は今回のケースも早期の外科処置を想定していました。

根管内の感染物質を取り除くのは非常に難易度が高く、その治療戦略を立てるには特殊な治療機器(マイクロスコープ、CT、洗浄機器、MTA)を用いることでより良い結果を得られるようになりました。
この治療例は以前ブログに書いた新しく導入した根管洗浄システムを使用しています。

注意事項
この根管は1本ですが、枝分かれしてたり、曲がっている角度が急だったり、根管が複数本あったり、さらにそれらが連絡通路を作っていたりすると難易度があがります。そうなると治療時間も長くなります。

今回の治療のまとめ
治療時間 60分(1回)
観察期間 約1年