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院長のとっておきの話 その72 口紅を塗っても無駄?視線追跡研究が明かす「歯並び」が笑顔の印象を左右する驚きの真実

「笑顔に自信がないけれど、華やかな色の口紅を塗れば、歯並びの悩みから視線をそらして、もっと魅力的に見せられるはず」。多くの人が、一度はこんな風に考えたことがあるかもしれません。メイクアップの力で、コンプレックスをカバーし、美しさを引き立てたいと願うのは自然なことです。

しかし、最新の視線追跡研究は、その期待が科学的根拠に乏しい可能性を示唆しています。私たちの視線は、口紅の色を通り越して、より正直に「歯並び」そのものに注がれていたのです。

この記事では、「不正咬合の有無による女性の笑顔の魅力を左右する口紅塗布の影響:視線追跡研究」という学術論文に基づき、私たちの思い込みを覆すかもしれない、3つの驚くべき発見を分かりやすく解説します。

発見1:口紅は歯並びの印象をカバーできない

この研究が導き出した最も重要な結論は、「笑顔の魅力は、口紅の有無よりも歯並びの状態(不正咬合の重症度)によって大きく左右される」という事実でした。

研究では、不正咬合の重症度を測る国際的な指標であるIOTN(Index of Orthodontic Treatment Need)が用いられました。歯並びが整っているモデルを「IOTN 1」(治療の必要性がほとんどない)、歯が叢生(そうせい)している、つまり混み合っているモデルを「IOTN 3」、歯間に隙間(正中離開)があるモデルを「IOTN 5」として評価しました。

一般の参加者がモデルの笑顔の写真を評価した結果、歯並びが整っているモデル(IOTN 1)の魅力度スコアは、叢生があるモデル(IOTN 3)や隙間があるモデル(IOTN 5)よりも有意に高かったのです。

そして、特に衝撃的だったのは次の事実です。「同じ歯並びのレベル内では、口紅を塗っている場合と塗っていない場合で、魅力度スコアに統計的な有意差はなかった」のです。論文のデータ(Table 3)によれば、例えばIOTN 1のモデルにおいて、口紅ありとなしの魅力度スコアのp値は0.528であり、これは統計的に偶然の範囲を超えない、つまり「意味のある差はない」ことを示しています。口紅が歯並びのマイナスな印象を補う効果は、科学的には確認されませんでした。

ではなぜ、口紅の効果は限定的なのでしょうか。その答えは、私たちが笑顔のどこを「無意識に」見ているのかを明らかにすることで見えてきます。

発見2:人の視線は、あなたが思う以上に「口元」に集中している

この研究では、「アイトラッキング(視線追跡)」という、被験者の瞳孔の動きを精密に記録する技術が用いられました。これにより、人々が意識的にはぐらかそうとしても、無意識の視線が写真のどの部分に、どれくらいの時間集中したかを「ヒートマップ」として可視化できるのです。

ヒートマップ分析の結果、口紅を塗っているかどうかにかかわらず、全ての写真において、参加者の視線が最も集中したエリアは「口元」でした。さらに、「特に歯並びの問題が重度(IOTN 5)である場合、視線はほぼ完全に口元に集中し、目などの他の部分にはほとんど分散しなかった」という点も明らかになりました。これは、整っていない歯並びが、人の視線を強力に引きつける要素であることを物語っています。

非常に興味深いことに、高齢モデルの写真に口紅が塗られている場合に限り、視線がわずかに鼻や目にも分散する傾向が見られました。しかし、それでもなお、注意の大部分が口元に集中するという全体的な傾向は変わりませんでした。この結果から、私たちは笑顔を見るとき、無意識のうちに歯の状態に注目していると言えるでしょう。

視線が歯並びに集中するという事実は、単に見た目の魅力だけの問題では終わりません。この研究は、その視線がより実利的な社会的評価、つまり「雇用」の判断にまで影響を及ぼす可能性を明らかにしました。

発見3:歯並びは「魅力」だけでなく「採用」の判断にも影響を与えうる

この研究は、魅力度だけでなく、より社会的な評価についても調査しました。参加者は「この人を採用したいと思うか?」という質問にも回答しています。

その結果、歯並びが整っているモデル(IOTN 1)は、重度の不正咬合があるモデル(IOTN 5)と比較して、採用されやすいと評価される統計的に非常に有意な傾向(p < 0.001)がありました。

論文の考察では、「歯並びが整っている人は、より魅力的で、知的、社交的に見られるだけでなく、仕事を得やすいと認識される傾向がある」という、歯並びが与える社会的な認識について言及されています。

ただし、この研究の公平な側面として、「多くの参加者は、写真一枚だけで採用を判断するのは不可能だと回答した」という点も付け加えておく必要があります。

結論:あなたの笑顔の「本質」はどこにあるか

口紅は笑顔を彩る素晴らしいアイテムですが、今回の研究で、その土台となる歯並びが人の印象を本質的に左右することが科学的に示されました。視線は正直であり、メイクアップの工夫を超えて、口元、特に歯の状態に強く引きつけられるのです。

この研究は、一時的なカバーアップよりも、根本的な健康と構造が人の印象に深く関わることを示唆しています。それは、デンタルヘルスが単なる医療ではなく、自己表現とコミュニケーションの根幹をなす要素であることを改めて浮き彫りにします。

あなたの笑顔、その魅力を最大限に引き出すために、本当に注目すべきは「彩り」でしょうか、それとも「土台」でしょうか?

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Gasparello GG, Bark MJ, Yamaguchi GP, Machado RA, Suárez J, Tanaka O. Influence of Lipstick Application on the Attractiveness of Smile in Women With and Without Malocclusions: An Eye-Tracking Study. Orthod Craniofac Res. 2025 Oct;28(5):836-843. doi: 10.1111/ocr.12947. Epub 2025 Jun 7. PMID: 40482014; PMCID: PMC12418062.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医