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院長のとっておきの話 その78 その不調、「腸漏れ」が原因かも?亜鉛があなたの腸の”壁”を修復する驚きの研究結果 亜鉛シリーズ第3弾

イントロダクション

なんとなく続く体調不良、肌荒れ、アレルギー、そして気分の落ち込み。これらは一見すると無関係に見えるかもしれませんが、実は体の中心「腸」の状態が関係しているかもしれません。

最近、健康に関心のある方々の間で「リーキーガット(腸漏れ)」という言葉を耳にする機会が増えました。これは正式な病名ではありませんが、腸の粘膜バリア機能が低下し、本来なら体内に入るべきでない物質が血中に漏れ出してしまう「腸管透過性の亢進」という状態は、医学的にも注目されています。

この腸の”漏れ”が、全身の様々な不調の引き金になる可能性が指摘されています。そして最近の研究で、この状態を改善する、驚くほどシンプルで身近な栄養素の力が明らかになりました。今回の記事では、その研究結果を分かりやすく解説していきます。

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研究が明らかにした3つの驚くべき事実

この研究は、安全で安価な必須ミネラルである「亜鉛」が、私たちの腸の健康にどのように貢献するのかを、3つの重要な側面から明らかにしました。

1. 亜鉛は、腸の「漏れ」を示す血液マーカーを平均21%減少させた

この研究で最も重要な発見は、亜鉛が腸のバリア機能を測定可能なレベルで改善したことです。

健康なボランティアが7日間亜鉛のサプリメントを摂取するという実験が行われました。研究チームが注目したのは、血液中の「D-乳酸」という物質です。これは腸内細菌によって作られる物質で、通常はほとんど血中には漏れ出しません。しかし、腸のバリアが弱っていると、このD-乳酸が血中に漏れ出てくるため、「腸の漏れ」を測る信頼性の高いマーカーとなります。

結果は驚くべきものでした。もともとD-乳酸の値が高かった(=腸が漏れやすかった)参加者において、亜鉛を摂取した後、D-乳酸の血中濃度が平均で21%も減少したのです。これは、亜鉛が特に腸のバリア機能が低下している人に対して、より顕著な効果を発揮する可能性を示唆しています。

さらに、全身の炎症を示すマーカーである「高感度CRP」の値も、同様にもともと数値が高かったグループで統計的に有意な低下が見られました。これは、亜鉛が腸の”漏れ”を機能的に抑え、関連する炎症も軽減させる可能性を示す具体的な証拠と言えます。

2. 亜鉛は、腸の細胞間の「つなぎ目」を物理的に強化する

亜鉛は一体どのようにして腸の”漏れ”を食い止めるのでしょうか?その答えは、腸壁の構造そのものにありました。

私たちの腸の壁を、レンガを積み上げた壁に例えてみましょう。一つ一つのレンガが「腸の細胞」だとすると、そのレンガ同士を固くつなぎ合わせているのが「モルタル」です。このモルタルの役割を果たしているのが、細胞同士を固く結合させる「タイトジャンクション」と呼ばれる構造です。リーキーガットとは、このモルタルがもろくなり、レンガの隙間から水が漏れ出すような状態なのです。

この研究では、参加者から採取した腸の組織を分析しました。その結果、亜鉛を摂取したグループでは、この「モルタル」を構成する重要なタンパク質が劇的に増加していることが判明しました。具体的には、「モルタル」の主成分である「クローディン-2」が平均40%、「トリセルリン」が平均45%も増加しており、統計的にも有意な差が認められたのです。

これは非常に重要な発見です。亜鉛は単に症状をごまかすのではなく、腸のバリアの物理的な構造そのものを再構築し、”壁”を頑丈に修復する働きがあることを示しています。

3. 亜鉛は、遺伝子レベルで「腸壁を強化せよ」と指令を出す

亜鉛の効果は、さらに根源的なレベル、つまり遺伝子にまで及んでいました。

研究チームが腸の細胞の遺伝子の働きを分析したところ、亜鉛はタイトジャンクションの構築と維持に直接関わる遺伝子群のスイッチを「オン」にすることが分かりました。つまり、亜鉛は体に対して「もっと頑丈な腸壁を作れ」と指令を出していたのです。

さらに興味深いことに、亜鉛は同時に、炎症を引き起こす遺伝子群(例:「TNFαシグナル伝達」関連)のスイッチを「オフ」にすることも確認されました。

まとめると、亜鉛は私たちの体の設計図である遺伝子レベルで働きかけ、「バリアを強化し、炎症を抑制する」という二重の指令を出すことで、腸を内側から健康な状態へと導いてくれるのです。

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なぜ歯科医院が「腸の健康」について語るのか?

「なぜ歯医者さんが腸の話を?」と不思議に思われるかもしれません。しかし、私たちの体はすべてつながった一つのシステムです。

「リーキーガット」の状態になると、本来は腸の中に留まるべき炎症を引き起こす物質や細菌の断片が血流に漏れ出してしまいます。これにより、体は常に弱い火がくすぶっているような「慢性的な全身性炎症」の状態に陥ります。

この全身性の炎症は、お口の中で起きる問題に「火に油を注ぐ」ような働きをします。お口の中には誰にでも歯周病菌などの細菌が存在しますが、体が慢性的な炎症状態にあると、これらの細菌に対する免疫反応が過剰になってしまうのです。この過剰な反応こそが、歯ぐきの腫れや出血を悪化させ、歯を支える骨を溶かす歯周病の進行を加速させる大きな要因となります。

したがって、亜鉛によって腸のバリア機能を強化し、全身に広がる炎症の「火種」を元から断つことは、お口の中の免疫バランスを整え、歯周病になりにくい、より健康な口腔環境を作ることにも直結するのです。

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まとめと今後の可能性

今回のヒトを対象とした研究により、安全で安価な必須微量栄養素である「亜鉛」が、腸の細胞間のつなぎ目(タイトジャンクション)を再構築し、炎症を抑えることで、腸の透過性(漏れ)を減少させる可能性があることが示されました。

これは、亜鉛がリーキーガットに関連すると考えられている様々な疾患に対する「予防的な」役割を果たす可能性を示唆するものです。

私たちの健康は、日々の食事から摂取する栄養素によって支えられています。亜鉛のような必須ミネラルに少し注意を払うことが、私たちの長期的な健康を守るための、最もシンプルで、かつ強力な一歩になるとしたら、どうでしょうか?


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Del Rio EA, Valenzano MC, DiGuilio KM, Rybakovsky E, Kjelstrom S, Montone G, Mercogliano G, Newman G, Wong P, Albert N, Burris V, Szymanski K, Rodriguez A, Hollis E, Kossenkov A, Mullin JM. Orally Administered Zinc Gluconate Induces Tight Junctional Remodeling and Reduces Passive Transmucosal Permeability Across Human Intestine in a Patient-Based Study. Int J Mol Sci. 2025 Sep 2;26(17):8540. doi: 10.3390/ijms26178540. PMID: 40943460; PMCID: PMC12429388.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医