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院長のとっておきの話 その76 最近、匂いが分かりにくい?その原因、意外にも歯周病かもしれません

1. はじめに:その「匂いの変化」、見過ごしていませんか?

淹れたてのコーヒーの香ばしいアロマ、季節の変わり目を告げる花の甘い香り、あるいは雨上がりの土の匂い。私たちの日常は、豊かな「匂い」に彩られています。匂いを感じる喜びは、食事を美味しくし、記憶を呼び覚まし、日々の生活に深みを与えてくれる大切な感覚です。

では、もし最近、そうした香りを感じにくくなったとしたら、どうでしょうか。「歳のせいかな」「鼻の調子が悪いのかな」と、やり過ごしてしまうかもしれません。しかし、その原因は思いもよらない場所、つまり「お口の中」にある可能性が、最新の研究で示唆され始めています。

2. 驚きの新事実:歯周病が「嗅覚」を低下させる可能性

デンマークで198人を対象に行われた最新の臨床研究(Schertel Cassiano L, et al. 2024)が、歯周病と嗅覚の間にこれまで見過ごされてきた関連性があることを明らかにしました。

この研究の核心的な発見は、「歯周病がある人は、ない人と比較して嗅覚機能が低い傾向にある」という事実です。歯周病とは、歯を支える歯茎や骨などの組織に炎症が起こる病気ですが、この口の中の病気が、鼻の機能にまで影響を及ぼす可能性が示されたのです。ただし、研究者らによると、この関連性は現時点では「弱い」ものとされていますが、非常に注目すべき発見です。

さらに興味深いのは、低下していたのが単に匂いの強さだけではなかった点です。研究では、嗅覚の3つの側面が評価されましたが、そのすべてにおいて低下が見られました。

  • Threshold (検知能力): 微かな匂いを感知する能力
  • Discrimination (識別能力): 似た匂いの違いを区別する能力
  • Identification (特定能力): 匂いが何であるかを特定する能力

つまり、歯周病は「匂いが弱くなる」だけでなく、「匂いの違いが分かりにくくなる」「何の匂いか当てにくくなる」といった、より複雑な嗅覚の衰えにつながる可能性があるのです。

3. 意外な結論:「口臭」が直接の原因ではなかった

「歯周病が嗅覚に影響する」と聞くと、多くの人が直感的にこう考えるかもしれません。「歯周病による口臭が強くて、その匂いに鼻が慣れてしまい、他の匂いが分かりにくくなっているのでは?」と。

しかし、この研究の最も意外な発見は、この直感的な仮説が裏付けられなかったことでした。分析の結果、口臭(halitosis)の強さと嗅覚の低下との間に、直接的な因果関係は見出されなかったのです。

この事実は、「では、本当の原因は何なのか?」という新たな疑問を私たちに投げかけます。口臭という分かりやすい原因ではないとすれば、一体どのようなメカニズムが働いているのでしょうか。

4. では、本当のメカニズムは?考えられる2つの可能性

研究者たちは、口臭よりもさらに複雑なメカニズムが働いている可能性を考察しています。現在、有力視されているのは以下の2つの仮説です。

  • 1. 「Unified Airway(つながる気道)」という考え方 口と鼻は別々の器官に見えますが、呼吸をするための「気道」という一つの連続したシステムの一部です。この「Unified Airway」という概念に基づけば、口の中で起きている炎症(歯周病)が、気道を通じて鼻の粘膜や機能にも影響を及ぼし、結果として嗅覚を低下させている可能性があります。
  • 2. 口腔内細菌による鼻のマイクロバイオーム(細菌叢)の変化 歯周病によって増殖した口の中の特定の細菌が、呼吸などを通じて鼻の内部に移行し、鼻のマイクロバイオーム(細菌の生態系)のバランスを乱す可能性も指摘されています。鼻の中の正常な細菌バランスが崩れることが、嗅覚機能の低下につながるという仮説です。

5. まとめ:お口の健康が、豊かな毎日を守る

今回の研究は、歯周病のケアが単に歯や歯茎を守るだけではないことを教えてくれます。それは、食事や季節の香りを楽しむといった、私たちの生活の質(QOL)そのものを守ることにもつながっているのです。

もちろん、嗅覚が変化する原因は様々であり、歯周病だけが原因とは限りません。しかし、もしあなたが最近「匂いが分かりにくくなった」と感じているなら、それはお口の健康状態を示すサインの一つかもしれません。一度、歯科医院で歯周病のチェックを受けてみることを検討してみてはいかがでしょうか。さらに、今回の研究は最も重度な歯周病患者を含んでいなかったため、実際にはこの関連性はさらに強い可能性も示唆されています。

日々の食事や好きな花の香り、これからも存分に楽しむために、一度お口の健康を見直してみませんか?

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Schertel Cassiano L, Jensen AB, Pajaniaye J, Lopez R, Fjaeldstad AW, Nascimento GG. Periodontitis is associated with impaired olfactory function: A clinical study. J Periodontal Res. 2025 Jan;60(1):55-63. doi: 10.1111/jre.13315. Epub 2024 Jun 18. PMID: 38888002; PMCID: PMC11840459.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医