来院者専用ブログ

慢性炎症/歯周病/根尖病変/口腔がん栄養医学/栄養療法/食事/抗加齢

院長のとっておきの話 その11 ビタミンDの新常識:骨だけじゃない、口腔がん細胞を自滅させる力 ビタミンDシリーズ第2弾

1.0 はじめに:太陽のビタミンの意外な秘密

ビタミンDと聞くと、多くの人が「骨を強くする」「免疫力を高める」といった役割を思い浮かべるでしょう。日光を浴びることで体内で生成されることから「太陽のビタミン」とも呼ばれ、私たちの健康維持に欠かせない栄養素として広く知られています。

しかし、この身近なビタミンが、実はあまり知られていない、極めて重要な役割を担っているとしたらどうでしょうか?近年の研究で、ビタミンDと「口腔がん」との間に、驚くほど深い関係があることが明らかになってきました。

この記事では、最新の科学研究から得られた重要な発見を、誰にでも分かりやすく解説します。ビタミンDがどのようにして口腔がんと戦うのか、その驚くべきメカニズムを紐解いていきましょう。

2.0 ビタミンDと口腔がんに関する5つの意外な事実

2.1 ポイント1:単なる予防ではない—がん細胞と直接戦う力

ビタミンDの役割は、がんの発生を「予防する」だけにとどまりません。研究によると、ビタミンDは口腔がん細胞に対して、非常に積極的な攻撃を仕掛けることが分かっています。

具体的には、ビタミンDはその活性型である「1,25(OH)2D3」という物質に姿を変え、がん細胞の増殖を抑制します。これは、細胞が増殖する周期(細胞周期)の「G0/G1期」という段階で細胞を停止させることで実現されます。さらに、ビタミンDは「アポトーシス」を誘導する力も持っています。アポトーシスとは、いわば「細胞のプログラムされた自死」のことであり、異常な細胞が自ら消滅するよう促す重要なメカニズムです。これは、がんの「無限増殖」という最も厄介な性質に、ビタミンDが直接ブレーキをかけることを意味します。

一般的なビタミンが、分子レベルでがん細胞の成長を止め、自滅に追い込む力を持っているという事実は、非常に画期的と言えるでしょう。

2.2 ポイント2:標準的ながん治療の強力な味方になる

ビタミンDは、単独で効果を発揮するだけでなく、化学療法(抗がん剤治療)といった標準的ながん治療と連携することで、その効果を増強する力を持っています。

研究では、ビタミンDが口腔扁平上皮がん(OSCC)の腫瘍細胞を、化学療法に対してより敏感にさせることが示されました。特に注目すべきは、この効果が、これまで化学療法に耐性を示していた(薬が効きにくかった)腫瘍においても確認されたという点です。

これは、ビタミンDが治療の切り札になるという意味ではありません。しかし、既存の確立された治療法をより効果的にするための「価値あるサポート役」として、患者さんにとって大きな希望となる可能性を秘めています。

2.3 ポイント3:患者の生活の質(QOL)を改善する

ビタミンDの恩恵は、細胞レベルの生物学的な話だけではありません。がん治療を受ける患者さんの日々の快適さや幸福感、つまり「生活の質(QOL)」にも直接的な好影響を与えることが報告されています。

ある研究では、手術が不可能な進行した口腔がん患者にビタミンDを補給したところ、生活の質に顕著な改善が見られました。具体的には、「嚥下(飲み込み)機能の改善」や、化学療法による副作用である「口内炎、痛み、発赤」といった毒性の発生率が減少したのです。

これは、ビタミンDが、困難な治療と向き合う患者さんの身体的な苦痛を和らげ、日々の生活を支える上で重要な役割を果たすことを示しています。

2.4 ポイント4:ビタミンD低値は、明確なリスク因子である

体内のビタミンDレベルと口腔がんのリスクには、明確な逆相関の関係があることが分かっています。つまり、ビタミンDのレベルが低いほど、口腔がんのリスクは高まるということです。

この関係を具体的に示すデータとして、Fanidiらによる研究が挙げられます。この研究では、「血清ビタミンD濃度が2倍になると、頭頸部がん(HNC)のリスクが45%低下した」と報告されています。

この統計は、十分なビタミンDレベルを維持することが、口腔がんのリスクを低減するための潜在的な戦略としていかに重要であるかを強く裏付けています。

2.5 ポイント5:がん細胞はビタミンDに抵抗するための「スイッチ」を持つ

私たちの体の中では、ビタミンDとがん細胞の間で、まるで生物学的な「攻防戦」が繰り広げられています。がん細胞は、ビタミンDの効果を無力化するための巧妙な防御メカニズムを持っているのです。

この攻防戦の鍵を握るのが、2つの酵素です。

  • CYP27B1: ビタミンDを活性型に変換する「善玉」酵素です。しかし、がん細胞の分化度が低い(悪性度が進んだ状態の)腫瘍では、この酵素の発現が低下していることが分かっています。
  • CYP24A1: 活性型のビタミンDを分解し、無力化してしまう「悪玉」酵素です。この酵素は、より悪性度が高く、攻撃的で、治療抵抗性のある腫瘍で非常に多く発現しており、予後が悪いことと関連しています。

これは、がん細胞がいかに巧妙に生き残りを図るかを示す証拠であり、この「スイッチ」の強さが、がんの悪性度を測る重要な指標となりうるのです。

3.0 結論:口腔の健康に対する新たな視点

これまで見てきたように、ビタミンDの健康における役割は、一般的に知られているよりもはるかに複雑で、極めて重要です。特に、口腔がんの予防と治療において、その影響は計り知れません。

ビタミンDは、がん細胞の増殖を直接抑制し、標準治療の効果を高め、さらには患者さんの生活の質をも改善する多面的な力を持っています。

この「太陽のビタミン」と健康との強力なつながりを踏まえた上で、ご自身の全体的な健康のために、ビタミンDのレベルを意識する簡単な一歩を考えてみてはいかがでしょうか?

当院では、浦安市の口腔がん検診(写真撮影による検査)、および血中ビタミンD濃度測定(腕からの採血、自費2,200円)を行っています。血中ビタミンD濃度値に基づいて、ビタミンD値を上げて維持するための戦略を個別にお伝えしています。

ビタミンDに関しては多機能なためシリーズで解説しますので、そちらも参考にしてください。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Mumena, C.H., Akimbekov, N.S., Sasi, R., Mlawa, M., Mudhihiri, M.H. (2026). Vitamin D and Oral Cancer. In: Razzaque, M.S. (eds) Vitamin D Function. Advances in Experimental Medicine and Biology, vol 1493. Springer, Cham. https://doi.org/10.1007/978-3-032-04357-3_9

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医