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睡眠/ブラキシズム

院長のとっておきの話 その17 SNSで話題の「口テープ」、本当に安全?科学論文が明かす5つの衝撃の事実

TikTokなどのSNSで「口テープ(マウステープ)」というトレンドを目にしたことがあるでしょうか。「睡眠の質が向上した」「顎のラインがシャープになった」といった魅力的な効果から、歯科医師として特に注目せざるを得ない「口臭や虫歯が減った」という主張まで、数多くの体験談が語られています。

しかし、これらの主張に対して、科学的なエビデンスは何を語っているのでしょうか?この記事では、最新の系統的科学レビュー(複数の科学論文を分析・評価した研究)を基に、このトレンドの背後にある真実を解き明かしていきます。

1. 事実1:睡眠時無呼吸症候群への効果は「軽症」の場合のみ、しかも限定的

口テープが睡眠時無呼吸症候群(OSA)に効果があるという主張は、最も注目されているものの一つです。Rhee氏らが10件の研究を分析した系統的レビューによると、確かにいくつかの研究で無呼吸低呼吸指数(AHI)という重症度を示す数値の減少が報告されています。

しかし、この効果が確認されたのは「軽症」の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者に限られていました。さらに、その改善効果も臨床的に大きな意味を持つとは言えません。例えば、Lee氏らの研究ではAHIが8.3から4.7に(「軽症」から「軽症のボーダーライン」へ)、Huang氏らの研究では12から7.8に(依然として「軽症」の範囲内)改善したに過ぎず、その効果は限定的です。

中等症から重症の患者に対しては、口テープは推奨されていません。Rhee氏らのレビューでは、分析対象となった研究の一つからの以下の厳しい警告を強調しています。

「口テープは、中等症から重症のOSA患者には推奨されない。これらの患者にとっては、利益よりも危険をもたらす可能性があるためである。」 (Rhee et al. のレビューで引用された Lee et al. の研究より)

2. 事実2:最大の落とし穴は「鼻づまり」―窒息のリスクも

驚くべきことに、口テープの効果を検証した科学研究の多くは、アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症など、何らかの鼻づまりがある参加者を意図的に除外していました。これは、Rhee氏らのレビューが指摘する重要な事実です。

つまり、口テープが最も必要だと思われる人々、すなわち鼻の問題で口呼吸になっている人々にとって、口テープが最も危険になりうることを意味します。

同レビューでは、複数の研究が鼻づまりのある人における「深刻な窒息リスク」について明確に警告していると述べています。鼻が詰まっている状態で口を物理的に塞ぐ行為が、いかに危険であるかは想像に難くないでしょう。

3. 事実3:虫歯・口臭予防など、口腔健康への効果は科学的に「未証明」

歯科の観点から特に注目されるのが、虫歯予防、口臭改善、ドライマウスの防止といった口腔健康への効果です。SNS上ではこれらのメリットが広く主張されています。

しかし、Fangmeyer氏らによるTikTokの主張を分析した科学レビューによれば、これらの口腔健康に関する人気の主張は「現在、エビデンスに裏付けられていない」と結論付けられています。さらに「研究では全く裏付けられていない(entirely unsubstantiated in the research)」と断言されています。

これらのアイデアは、鼻呼吸がもたらす既知のメリットから類推されたものと考えられますが、口テープ自体がこれらの口腔健康上の効果を直接もたらすという証拠は、現時点では存在しないのです。

4. 事実4:喘息改善などの健康効果も証拠なし、むしろ矛盾する結果も

SNSでは、睡眠や口腔健康以外にも、喘息の改善といった健康効果が主張されることがあります。

しかし、Fangmeyer氏らのレビューで分析された、喘息症状のある患者を対象としたランダム化比較試験では、口テープによる統計的に有意な効果は認められませんでした

この結果は、SNS上の主張と「直接矛盾する」ものであり、バイラルなトレンドと科学的根拠との間の大きな隔たりを浮き彫りにしています。

5. 事実5:科学的根拠とされる研究自体が「質が低い」と評価されている

最も根本的な問題は、口テープの有効性の根拠とされている研究自体の質が脆弱であることです。

ある系統的レビュー(Rhee et al.)では、分析対象となった10件の研究すべてが「質が低い(poor quality)」と評価されました。この10件の研究に参加した患者は合計でもわずか213人です。

また、別のレビュー(Fangmeyer et al.)でも、研究間の「著しい異質性」が指摘され、ほとんどの研究が参加者21人以下という「極めて限定的な」ものであると述べられています。現在広まっている推奨は、非常に小規模で科学的に脆弱なエビデンスに基づいている、というのが実情なのです。

結論:トレンドに飛びつく前に

鼻呼吸を促進することは、健康上、非常に有効な目標です。しかし、現在の科学的エビデンスは、口テープが一般の人々にとって安全かつ効果的な方法であるとは支持していません。

この記事で明らかになった重要なポイントをまとめます。

  • エビデンスは軽症の睡眠時無呼吸症候群に限定されている。
  • 鼻づまりのある人には深刻な窒息リスクを伴う。
  • SNSで語られる口腔健康やその他のメリットの多くは科学的に証明されていない。

もしあなたが口呼吸、いびき、睡眠の質について懸念があるのなら、リスクのあるSNSのトレンドを試す前に、医師や歯科医師といった専門家に相談すべきです。あなたの健康を守る最も確実な道は、自己判断で安易な方法に頼るのではなく、専門的な診断と指導を求めることです。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Rhee J, Iansavitchene A, Mannala S, Graham ME, Rotenberg B. Breaking social media fads and uncovering the safety and efficacy of mouth taping in patients with mouth breathing, sleep disordered breathing, or obstructive sleep apnea: A systematic review. PLoS One. 2025 May 21;20(5):e0323643. doi: 10.1371/journal.pone.0323643. PMID: 40397877; PMCID: PMC12094774.

Fangmeyer SK, Badger CD, Thakkar PG. Nocturnal mouth-taping and social media: A scoping review of the evidence. Am J Otolaryngol. 2025 Jan-Feb;46(1):104545. doi: 10.1016/j.amjoto.2024.104545. Epub 2024 Dec 4. PMID: 39662104.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医