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院長のとっておきの話 その23 歯周病治療の効果を高める?研究が示す「亜鉛」の驚くべき力

イントロダクション

歯周病の治療と聞いて、多くの方が歯科医院でのスケーリング・ルートプレーニング(歯石除去や歯根面の滑沢化)を思い浮かべるでしょう。これらは確かに歯周病治療の基盤となる重要な処置です。しかし、もし、ありふれた必須微量栄養素を一つ加えるだけで、この専門的な治療の効果を大きく高めることができるとしたらどうでしょうか?最近の科学的研究が、その可能性を示唆しています。

1. 意外な助っ人:「亜鉛」が歯周病治療を強力にサポート

研究が明らかにした主な発見は非常にシンプルです。歯周炎を持つ患者が、標準的なスケーリング・ルートプレーニング(SRP)に加えて経口亜鉛サプリメントを摂取した場合、SRPと偽薬(プラセボ)のみを投与された患者と比較して、はるかに大きな改善を示したのです。私たちの体は亜鉛を蓄えることができないため、日々の食事から摂取することが重要です。この研究は、そうした日常の栄養素が専門的な歯科治療をいかに支えるかを示唆しています。

ここで重要なのは、亜鉛が専門的な治療の「代替」ではなく、あくまで治療効果を高める「補助」として機能する点です。研究の結論では、亜鉛は「治療の簡単で、費用対効果が高く、無害で有益な補助手段」となり得ると述べられています。

2. なぜ効くのか?歯ぐきを壊す「酵素」を抑える亜鉛の働き

亜鉛がなぜこれほど効果的なのでしょうか。そのメカニズムは、私たちの体内で働く特定の酵素と深く関わっています。

  1. 歯周病になると、「マトリックスメタロプロテイナーゼ-8(MMP-8)」と呼ばれる酵素が過剰に活動し始めます。この酵素は、歯を骨に固定している「ケーブル」の役割を持つコラーゲン(I型およびIII型)を分解する特異な能力を持っており、歯を支える歯ぐきや骨などの組織の破壊を進行させる主犯格の一つです。
  2. 亜鉛は、MMP-8が正常に機能するためには不可欠な要素ですが、歯周病のようにMMP-8が過剰に産生された場合には、その破壊的な活動を抑制するブレーキ役としても機能します。この絶妙な調節機能が、歯周病治療において有益な効果をもたらす鍵となります。
  3. さらに、亜鉛には抗炎症作用や抗酸化作用があることも知られており、これらも歯周組織の健康維持に貢献します。

3. 科学的根拠:実際の研究で示された改善効果

この発見の信頼性を高めているのが、研究のデザインです。この研究は「無作為化二重盲検プラセボ対照試験」という、臨床試験において最も信頼性が高いとされる方法で行われました。42名の歯周炎患者が2つのグループに分けられ、一方にはSRPと亜鉛、もう一方にはSRPとプラセボが投与されました。

亜鉛グループでは、プラセボグループと比較して、以下の点で統計的に有意な改善が確認されました。

  • 歯ぐきの炎症 (Gingival Index, GI): 亜鉛を摂取したグループで「非常に有意な」改善が見られました。
  • 歯周ポケットの深さ (Probing Pocket Depth, PPD): 亜鉛グループで「非常に有意な」減少が見られました。
  • 出血 (Bleeding Index, BI): 亜鉛グループで「有意な」減少が見られました。
  • 歯ぐきの支持組織の回復 (Clinical Attachment Level, CAL): 亜鉛グループで「非常に有意な」改善(アタッチメントレベルのゲイン)が見られました。
  • 唾液中のMMP-8レベル (Salivary MMP-8 Level): 亜鉛グループで有害な酵素のレベルが「有意に」低下しました。

研究の結論は、この結果の重要性を次のようにまとめています。

スケーリング・ルートプレーニング単独と比較した場合、経口亜鉛補充を併用することで、中等度から重度の歯周炎患者において、臨床パラメータおよび唾液中MMP-8レベルのより大きな減少が示されました。亜鉛は歯周炎の管理において肯定的な効果を持ち、簡単で、費用対効果が高く、無害で有益な補助療法となり得ます。

結論:これからのオーラルケアへのヒント

歯科専門家による治療が歯周病管理の基本であることは変わりません。しかし、今回の研究は、亜鉛の補給のような栄養面からのサポートが、治療効果を高める強力なパートナーとなり得ることを示しています。ただし、サプリメントの摂取を始める前には、必ずかかりつけの歯科医師や医師に相談することが重要です。

日々の栄養が、将来の口腔内の健康を左右する重要な鍵になるのかもしれません。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Gupta V, Rastogi P, Ajay S, Lal N, Verma UP, Singhal R, Pathak AK, Nigam N, Rastogi P. To evaluate the effect of oral zinc supplementation on salivary MMP-8 levels in periodontitis: A randomized, double-blind, placebo-controlled study. J Oral Biol Craniofac Res. 2025 May-Jun;15(3):493-499. doi: 10.1016/j.jobcr.2025.02.013. Epub 2025 Mar 11. PMID: 40144642; PMCID: PMC11932852.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医