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院長のとっておきの話 その24 治りにくい口内炎…もしかして扁平苔癬?最新研究が示す「亜鉛」の驚くべき効果 亜鉛シリーズ第1弾

「口の中にできた痛い口内炎が、薬を塗ってもなかなか治らない…」そんな経験はありませんか?多くの方が悩まされるこの症状、実は単なる口内炎ではなく、「口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)」という慢性的な炎症性疾患の可能性があります。

この病気は、私たちの体を守るはずの免疫系が、口の粘膜を誤って攻撃してしまうことで引き起こされます。そのため、一度発症すると治りにくく、症状が長引くことも少なくありません。臨床現場では、この”治りにくさ”が患者さんの大きなストレスになっていることを日々実感します。

しかし、この治療が難しい症状に対して、驚くほど身近な栄養素が大きな効果を発揮する可能性を示した最新の臨床研究(Aboushousha et al., 2025)が発表されました。この記事では、専門家の視点からその画期的な発見を分かりやすく解説します。

そもそも「口腔扁平苔癬」とは?知っておくべき3つのこと

まず、口腔扁平苔癬とはどのような病気なのか、基本的な特徴を3つのポイントにまとめました。

  • 慢性的な炎症: T細胞という免疫細胞が関与し、口の粘膜に慢性的な炎症を引き起こす疾患です。
  • 多彩な症状: 頬の内側や舌に、白いレース状の模様が現れるのが典型的ですが、症状が進行すると粘膜が赤くただれたり(萎縮性・びらん性)、潰瘍ができて強い痛みを伴うこともあります。
  • がん化のリスク: まれではありますが、世界保健機関(WHO)によって「潜在的に悪性化する可能性のある疾患」に分類されています。報告によると、約1.09%ががん化するとされており、放置せずに適切な管理を続けることが非常に重要です。

この研究では、痛みなどを伴う症状のある(萎縮性やびらん性の)口腔扁平苔癬の患者さん42名を3つのグループに分け、8週間にわたって治療効果を比較しました。第一のグループは従来のステロイド軟膏のみ、第二のグループはステロイド軟膏に全身的な亜鉛の補給(サプリメント)を、第三のグループはステロイド軟膏にビタミンDのサプリメントを併用しました。このシンプルな比較から、画期的な結果が明らかになったのです。

最大の発見:治療効果を飛躍させたのは「亜鉛」だった

今回の臨床研究で最も注目すべき発見は、栄養素「亜鉛」の効果でした。なぜ亜鉛がこれほど重要なのでしょうか。亜鉛は、粘膜の上皮の成長や傷の治癒に不可欠なだけでなく、免疫細胞(T細胞)のバランスを整えたり、炎症の原因となる酸化ストレスを抑える抗酸化酵素の働きを助けたりする、重要な役割を担っています。

この結果、ステロイド軟膏に加えて「亜鉛」を補給したグループ(Group II)が、最も優れた治療結果を示したのです。

具体的には、以下のような改善が見られました。

  • 痛みの軽減: 治療開始からわずか3週目で、亜鉛を併用したグループの痛みは、ステロイド単独のグループに比べて大幅に低下しました。
  • 見た目の改善: 治療8週目には、亜鉛を併用したグループの病変スコア(Thongprasomスコア)の中央値が「0」(正常な粘膜)となり、見た目にも最も顕著な改善が確認されました。スコアが「0」になるというのは、臨床的に見て「治癒」に近い状態を意味し、これは非常にインパクトのある結果です。

この結果は、亜鉛が標準治療の効果を大きく高める可能性を示唆しています。研究者たちも次のように結論付けています。

全身的な亜鉛の補給をステロイド軟膏と組み合わせることは、口腔扁平苔癬の管理における補助療法として有用である可能性があります。

ビタミンDの効果は?亜鉛との違い

ビタミンDもまた、免疫反応を調整し炎症を抑える働きがあることから、その効果が検証されました。実際に、ビタミンDを補給したグループ(Group III)も、治療3週目までにステロイド単独のグループより痛みが軽減される効果が見られました。

しかし、8週間後の最終的な症状の改善度や痛みの軽減効果は、残念ながら「ステロイド単独の治療と同程度」という結果でした。つまり、ビタミンDにも一定の効果はあるものの、亜鉛ほど顕著な「上乗せ効果」は確認されなかったということです。

なぜ新しい治療法が重要なのか?

口腔扁平苔癬の標準治療で使われるステロイドは、炎症を抑えるのに非常に効果的です。しかし、長期間使用すると、副作用のリスクも考慮しなければなりません。特に口の中で使用する場合、最も頻繁に報告される副作用として口腔カンジダ症(口の中のカビ)があります。

亜鉛のような安全性の高い栄養素を補助的に使用することで、治療効果を最大限に高め、より早く、より安全に症状を改善できる可能性があります。ステロイドは依然として治療の第一選択ですが、亜鉛のような安全な栄養素を組み合わせることで、ステロイドの使用量を減らしたり、使用期間を短縮したりできる可能性も視野に入ってきます。これは、患者さんのQOL(生活の質)を長期的に維持する上で非常に重要です。

結論:まとめと今後の展望

今回の記事では、最新の研究に基づき、「口腔扁平苔癬の標準治療に亜鉛を追加することで、痛みと症状がより効果的に改善される可能性がある」という重要な発見をご紹介しました。

ビタミンDも一定の効果を示すものの、特に亜鉛の補助療法が今後の治療において有望な選択肢となることが期待されます。

あなたを悩ませるその症状の改善に足りなかったのは、もしかしたら身近な栄養素かもしれません。気になる症状があれば、自己判断せずに専門の歯科医師に相談し、最適な診断と治療法を見つけることが大切です。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Aboushousha A, Kamal Y, Ali S. Supplementary zinc and vitamin D in management of symptomatic oral lichen planus: a three-arm randomized clinical trial. BMC Oral Health. 2025 Jun 2;25(1):872. doi: 10.1186/s12903-025-06173-1. PMID: 40457259; PMCID: PMC12128342.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医