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院長のとっておきの話 その34 あなたの体にも蓄積?カドミウム・鉛から身を守る「亜鉛」の驚くべき防御力

はじめに:忍び寄る脅威と、意外な味方

私たちの食生活や環境には、目に見えない脅威が潜んでいることがあります。事実、ある調査では、米国人口の約半数が3種類以上の有害金属に複合的にさらされているというデータもあります。特に、食品や水に含まれる可能性のあるカドミウム、鉛、ヒ素といった有害な重金属は、知らず知らずのうちに体内に蓄積し、健康に影響を及ぼすことが懸念されています。これらの物質の中には、世界保健機関(WHO)のがん研究専門機関である国際がん研究機関(IARC)によって発がん性が認められているものもあります。

しかし、私たちの体には、こうした脅威から身を守るための防御システムが備わっています。そして驚くべきことに、ごくありふれた必須栄養素の一つが、その防御システムにおいて「盾」として非常に強力な役割を果たしていることが、数多くの研究で明らかになってきました。

その栄養素とは「亜鉛」です。亜鉛は、免疫機能の維持や成長に不可欠なミネラルとして知られていますが、実は有害金属の毒性から体を守るための、驚くべき4つの重要な機能を持っています。この記事では、亜鉛がどのようにして私たちの体を守ってくれるのか、そのメカニズムを分かりやすく解説していきます。

2.0 有害金属は体内の重要パーツを乗っ取る「ニセモノ」

私たちの体には、「ジンクフィンガー・プロテイン(亜鉛フィンガータンパク質)」と呼ばれる、生命活動に不可欠な構造を持つタンパク質が約3000種類も存在します。これらは、遺伝情報を担うDNAの修復など、数えきれないほど多くの重要な役割を担っており、その名の通り「亜鉛」が組み込まれることで正常に機能します。

ところが、ヒ素やカドミウムのような有害金属は、この亜鉛と化学的な性質が似ているため、「ニセモノ」のように振る舞います。これらはジンクフィンガー構造に侵入し、本来そこにあるべき亜鉛を追い出してしまいます。しかも、これらの「ニセモノ」は無差別に攻撃するわけではありません。例えば、ヒ素はシステイン残基を3つ以上含む特定のジンクフィンガー構造を好み、カドミウムは別のタイプを標的にするなど、専門性を持って重要なパーツを狙い撃ちするのです。重要パーツを乗っ取られたタンパク質は、DNA修復などの本来の機能を果たせなくなり、細胞にダメージが蓄積する原因となります。

体内に十分な亜鉛が存在することは、この「乗っ取り」を防ぐための鍵となります。亜鉛がしっかりと所定の位置を確保していれば、ニセモノである有害金属が入り込む隙を与えず、タンパク質の正常な機能を維持することができるのです。

3.0 亜鉛は単なる抗酸化物質ではない、体の「ボディーガード」

「抗酸化作用」と聞くと、活性酸素(ROS)のような有害物質を直接中和する成分を思い浮かべるかもしれません。しかし、亜鉛の働きはもっと巧妙で、体全体の防御システムを指揮する司令官や、脅威を捕らえるボディーガードのような役割を果たします。

  1. 防御システムへの司令塔機能 亜鉛は、私たちの体がもともと持っている強力な抗酸化酵素(例:Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ)が働くために不可欠な「補因子」として機能します。つまり、亜鉛は自らが戦うのではなく、体が持つ本来の防御チーム(抗酸化酵素)を活性化させ、その能力を最大限に引き出す司令塔の役割を担うのです。
  2. 脅威を捕獲・無力化する機能 亜鉛は、「メタロチオネイン」と呼ばれる特殊なタンパク質の生成を促します。このメタロチオネインは、有害金属を捕まえて結合し、無力化する「ボディーガード」のような存在です。体内に十分な亜鉛があると、この強力なボディーガードの数が増え、カドミウムなどの有害金属をしっかりと捕獲・隔離し、毒性を大幅に低減させることができます。さらに、このボディーガードは非常に万能で、メタロチオネインと結合しにくいヒ素のような有害金属に対しても、それらが引き起こす活性酸素を消去することで間接的に体を守る働きもします。

4.0 細胞の「門番」として、有害金属の侵入を防ぐ

有害金属が体内でダメージを引き起こすには、まず細胞の中に入り込み、組織や臓器に蓄積する必要があります。細胞には、特定の物質だけを通す「トランスポーター」と呼ばれる、ドアやゲートのような仕組みが存在します。

実は、亜鉛とカドミウムのような一部の有害金属は、同じトランスポーターを使って細胞内に入ろうとします。例えば、私たちの細胞には「ZIP8」というトランスポーターがありますが、これは亜鉛だけでなく、有害なカドミウムも細胞内に運んでしまいます。ここで亜鉛が門番として活躍するのです。

体内に十分な亜鉛があれば、それらが優先的にトランスポーターを通過したり、結合したりします。その結果、有害金属が細胞内に入るための「ドア」がふさがれ、体内への侵入を物理的にブロックすることができます。このように、亜鉛は有害金属が組織に蓄積する量を減らすことで、毒性から体を守ってくれるのです。

5.0 亜鉛不足は、有害金属のダメージを増幅させる

亜鉛と有害金属の関係は、単に「亜鉛が体を守る」というだけではありません。むしろ、「亜鉛が不足していると、有害金属による害をより受けやすくなる」という深刻な側面があります。

動物モデルを用いた複数の研究では、亜鉛が欠乏した状態でカドミウムやヒ素にさらされると、毒性が著しく増強されることが示されています。亜鉛不足は、有害金属に対する体の防御力を弱め、ダメージをより深刻にしてしまうのです。

この問題は、決して他人事ではありません。実際、亜鉛不足は驚くほど身近な問題なのです。

米国では、人口の15%が亜鉛の摂取量が不十分であると推定されています。

6.0 結論:体の自然な防御力を高めるために

亜鉛は、タンパク質の乗っ取りを防ぎ、体の防御システムを指揮するボディーガードとして働き、細胞への侵入を防ぐ門番となることで、有害金属の脅威から私たちの体を多角的に守ってくれます。

環境中の汚染物質を完全になくすことが難しい現代において、体内の亜鉛を充足させることは、健康を守るために個人ができる、リスクの低い積極的な一歩と言えるでしょう。事実、亜鉛の恩恵は有害金属からの防御にとどまりません。免疫機能の正常化、酸化ダメージの軽減、そして慢性疾患の原因となる炎症の抑制など、健康全般を底上げする多岐にわたる効果が知られています。

あなたの体は、見えない脅威と戦う準備ができていますか?


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Hudson LG, Dashner-Titus EJ, MacKenzie D. Zinc as a Mechanism-Based Strategy for Mitigation of Metals Toxicity. Curr Environ Health Rep. 2025 Jan 18;12(1):5. doi: 10.1007/s40572-025-00474-x. PMID: 39827326; PMCID: PMC11742765.

Sangubotla R, Syed S, Mastan A, Lakshmi BA, Kim J. Zinc-Mediated Defenses Against Toxic Heavy Metals and Metalloids: Mechanisms, Immunomodulation, and Therapeutic Relevance. Int J Mol Sci. 2025 Oct 8;26(19):9797. doi: 10.3390/ijms26199797. PMID: 41097062; PMCID: PMC12524768.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医