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院長のとっておきの話 その40 電子タバコは歯周病に本当に「マシ」なのか?意外と知られていない5つの真実

最近、クリニックの患者様から「電子タバコ(ベイプ)は、普通のタバコより歯に良いんですよね?」という質問をよくいただくようになりました。確かに、電子タバコは急速に普及しており、その健康への影響、特にお口の健康への影響に関心が高まっています。

その答えは単純ではありませんが、近年の研究から、これまであまり知られていなかった事実が明らかになってきました。今回は、電子タバコと歯周病の関係について、科学的な証拠に基づいた「5つの意外な真実」をわかりやすく解説します。

意外な真実1:電子タバコは「無害」ではない。非喫煙者と比べると歯周病リスクは高まる

まず知っておくべき最も重要なことは、電子タバコは歯周組織(歯を支える歯茎や骨など)にとって無害ではないということです。

複数の研究で、電子タバコの使用者は非喫煙者と比較して歯周病の状態が悪いことが示されています。具体的には、電子タバコ使用者の歯茎からは、炎症を引き起こす物質(炎症性バイオマーカー)が多く検出されることがわかっています。

さらに、歯周病を悪化させる代表的な細菌である「ポルフィロモナス・ジンジバリス」「フソバクテリウム・ヌクレアタム」といった細菌が、電子タバコ使用者のお口の中で増加することも報告されています。これらの菌は、歯茎の腫れや出血、最終的には歯を支える骨を溶かしてしまう歯周病の直接的な原因となります。

つまり、「煙が出ないから安全」というイメージとは裏腹に、電子タバコは歯茎の炎症を引き起こし、歯周病菌が繁殖しやすい環境を作ることで、非喫煙者よりも歯周病のリスクを高める可能性があるのです。

意外な真実2:「従来のタバコよりはマシ」は本当か?科学的な比較

では、「従来の紙巻きタバコと比べてどうなのか?」という点が気になりますよね。

これについては、現在の科学的証拠を見る限り、「電子タバコは、従来のタバコ喫煙よりは歯周組織への害が少ない」と考えられています。

実際に、電子タバコ使用者は、従来のタバコ喫煙者と比べて、

  • 歯垢の付着量(プラーク指数)が少ない
  • 歯周ポケットの深さ(PPD)が浅い
  • 歯を支える骨の喪失が少ない

といった傾向があることが、複数の研究で示されています。

ただし、ここで絶対に誤解してはいけないのは、「害が少ない」は「健康的」や「リスクがない」という意味ではないということです。あくまで、非常に有害な従来のタバコと比較した場合の話であり、非喫煙者と比べれば明らかにリスクがあることを忘れてはいけません。

意外な真実3:禁煙のために電子タバコへ切り替えると、一時的に歯茎から「出血が増える」ことがある

これは非常に意外に思われるかもしれませんが、禁煙目的で従来のタバコから電子タバコに切り替えた直後に、歯茎からの出血(歯磨きや歯間ブラシを使った際の出血)が増えることがあります。

ある小規模な研究(Wadiaらによるパイロット研究)では、参加者が喫煙から電子タバコに切り替えた後、「プロービング時の出血(BoP)」という歯周病の指標が増加したことが報告されました。

「えっ、悪化しているの?」と心配になるかもしれませんが、これは必ずしも悪い兆候ではありません。実はこの現象は、タバコを完全にやめた(禁煙した)時に起こる体の反応と非常によく似ています。タバコの有害物質によって抑えられていた歯茎の血流が、禁煙によって正常化する過程で一時的に出血しやすくなるのです。

つまり、この出血は歯周病の悪化ではなく、むしろ歯茎が健康な状態を取り戻そうとしているサインである可能性が示唆されています。

意外な真実4:歯周病やインプラントの「治療効果を妨げる」可能性がある

電子タバコが、歯周病やインプラントの治療結果に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。

ある研究(Shahらによる)では、歯周病の基本治療(歯石の除去など、メスを使わない治療)を行った後の経過を比較しました。その結果、「過去に喫煙していて、現在は電子タバコを使用している人」は、治療への反応が「禁煙した人」や「非喫煙者」よりも悪く、むしろ「現在もタバコを吸っている人」と同程度だったのです。これは、電子タバコが歯周組織の治癒を妨げる可能性を示しています。

また、インプラント周囲の健康についても、電子タバコ使用者は非喫煙者よりも歯周ポケットが深く、骨の喪失も大きいなど、臨床的な状態が悪いことが報告されています。

まだ研究データは限られていますが、電子タバコが歯周病やインプラントの治療成功を妨げるリスクがあることは、知っておくべき重要なポイントです。

意外な真実5:世間のイメージと科学的証拠には「大きなズレ」がある

ここまで見てきたように、科学的には「電子タバコは無害ではないが、従来のタバコよりは害が少ない」というのが現在の見解です。しかし、一般の方々の認識は少し違うようです。

英国の調査によると、成人の43%が「電子タバコは従来のタバコと同程度、あるいはそれ以上に有害だ」と考えていることがわかりました。

この「イメージ」と「科学的証拠」のズレには、メディアの報道が影響していると考えられます。研究によれば、電子タバコの潜在的な危険性を強調する報告は注目されやすい一方で、害が少ない、あるいは害がないことを示す研究はあまり報道されない傾向があるのです。もちろんリスクを軽視すべきではありませんが、既存の喫煙者にとっては、より害の少ない選択肢(ハームリダクション)となり得るという側面が正しく伝わっていない可能性があります。

まとめ:では、私たちはどう考えればいいのか?

ここまで5つの真実を見てきました。最後に、歯科医療の専門家として、この問題をどう考えればよいかをお伝えします。

結論として、電子タバコは「無害ではないため、非喫煙者が新たに始めるべきものではない。しかし、従来のタバコ喫煙者にとっては、より害の少ない代替手段となり得る」というのが、現在の科学的証拠に基づいた考え方です。

この複雑な状況を、イングランドの元首席医務官であるクリス・ウィッティ氏の言葉が的確に要約しています。

「もしあなたがタバコを吸うなら、電子タバコの方がはるかに安全です。もしあなたがタバコを吸わないなら、電子タバコを吸ってはいけません。」

お口の健康、そして全身の健康を守るために、正しい知識を持って判断することが何よりも大切です。もしご自身の喫煙習慣や電子タバコについてご不安な点があれば、いつでも私たちにご相談ください。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Robson G, Lim XC, Chaudhari I, Hurley J, Khalil S, Amin V, Nibali L. Trying to clear the air: e-cigarette use and periodontal disease. Br Dent J. 2025 Nov;239(10):687-692. doi: 10.1038/s41415-025-8919-5. Epub 2025 Nov 28. PMID: 41315696; PMCID: PMC12662773.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医