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歯ならび/歯列矯正

院長のとっておきの話 その44 歯列矯正後のリテーナー、その常識はもう古い?科学が明かす4つの意外な真実

長い歯列矯正治療、本当にお疲れ様でした。美しい歯並びを手に入れた今、次なる重要なステージ「保定期間」が始まります。この期間に使うリテーナー(保定装置)は、後戻りを防ぐために不可欠ですが、その使用方法については多くの誤解や古い常識が残っているのも事実です。

実は最近、信頼性の高い科学的レビューによって、リテーナーに関するこれまでの常識を覆すような、いくつかの驚くべき事実が明らかになってきました。

この記事では、世界中の質の高い研究を集めて分析した「Cochrane Database of Systematic Reviews」(2023年、Martinら)の報告から、患者さんにとって特に重要なポイントをわかりやすく解説します。あなたのこれからのリテーナー生活をより快適で効果的なものにするための、最新の知識を手に入れましょう。

「え、ずっと着けなくていいの?」リテーナーの装着時間、驚きの事実

多くの歯科医院では、取り外し式リテーナーは「最初の数ヶ月は食事と歯磨き以外、一日中(フルタイムで)装着してください」と指導されます。しかし、今回のレビューでは、この常識に一石を投じる結果が示されました。

結論から言うと、透明なマウスピース型リテーナーでも、ワイヤー付きのホーレータイプリテーナーでも、歯の安定性(後戻りのしにくさ)において、フルタイム装着とパートタイム装着(夜間のみなど)の間に大きな差はないことが示唆されたのです。

レビューの考察部分では、「2つの研究で、透明プラスチックリテーナーのパートタイム装着とフルタイム装着の安定性に差が見られなかった」「1つの研究では、ホーレータイプリテーナーのパートタイム装着は、フルタイム装着と同程度に後戻りを防ぐ効果があった」とまとめられています。特に、透明なマウスピース型リテーナーに関するこの結果は、レビュー全体の中でも比較的確実性が高い(中程度の確実性)と評価されており、非常に注目すべき点です。

つまり、リテーナーの装着がストレスで、ついサボりがちになってしまうくらいなら、夜間だけの装着を徹底する方が、現実的で効果的な選択肢になる可能性があるということです。

「固定式が最強」は思い込み?動かしやすさ・健康・快適性のトレードオフ

「固定式リテーナーは一度つけたら安心」と思われがちですが、科学的なデータはその神話を少し違った角度から照らし出します。

固定式リテーナーは、パートタイム使用の取り外し式リテーナーと比較して、わずかに歯を安定させる効果が高い可能性はありますが、その差は「臨床的に重要ではないほど小さい」と報告されています。つまり、「固定式が圧勝」というわけではないのです。むしろ、どちらを選ぶかは、何を優先するかという「トレードオフ」の問題であることが明らかになりました。

  • 歯茎の健康: 取り外し式リテーナーの方が、歯茎の健康状態(歯肉炎や出血の少なさ)が良い傾向にあることがわかりました。研究では「透明プラスチックの取り外し式リテーナーの方が、固定式リテーナーよりも良好な歯茎の健康を達成できる可能性がある」と結論づけられています。
  • 故障と快適性: パートタイム使用の取り外し式リテーナーは、固定式に比べて故障(破損や脱離)のリスクが低い一方で、装着時の不快感は強い傾向にあることも報告されています。

これはつまり、選択の基準は「どちらが最強か」ではなく、固定式の大変な清掃と、取り外し式の不快感や着脱の手間を、ご自身の生活スタイルの中でどう天秤にかけるか、ということなのです。

透明マウスピース型 vs. ワイヤー付きの伝統的なリテーナー

最新の透明マウスピース型は、あらゆる面で伝統的なワイヤー付きリテーナーより優れていると思っていませんか?実は、データが示すのはもっと複雑な物語です。取り外し式リテーナーの主流である2種類、透明なマウスピース型(クリアリテーナー)と、昔ながらのワイヤーとプラスチック床でできたホーレータイプリテーナーを科学的に比較すると、意外な事実が見えてきました。

まず、歯並びを維持する能力については、両者に大きな違いはない可能性が示されました。

次に、より驚きだったのは耐久性です。レビューによると、伝統的なホーレータイプリテーナーの方が、透明なマウスピース型リテーナーよりも故障のリスクが低く、長持ちする傾向にあったのです。

しかしその一方で、患者さんの満足度調査では、耐久性では劣るものの、透明なマウスピース型リテーナーの方が「満足度が高い」という結果も出ています。見た目の良さや快適性が、この評価につながっているのかもしれません。

したがって、この選択は「故障しにくい頑丈さ」という安心感を優先するのか、それとも「日々の快適さや見た目の良さ」を重視するのか、という個人の価値観にかかっていると言えます。

「絶対」はない?リテーナー研究の最前線

この記事で紹介している情報は、「システマティック・レビュー」という、科学的根拠の中でも非常に信頼性の高い手法に基づいています。しかし、そのレビューの著者たちが最も強調している、驚くべき結論があります。それは、リテーナーに関する研究の多くは、まだエビデンスの確実性が「低い、または非常に低い」という事実です。

全体として、歯列矯正後の歯の位置を安定させるための保定法に関して、結論を導き出すための中等度または高度な確実性を持つエビデンスは存在しない。参加者を少なくとも2年間追跡する、よく計画されたプロトコルを持つ質の高いランダム化比較試験が必要である。

これは患者さんにとって何を意味するのでしょうか? それは、歯の後戻りを防ぐ方法は非常に複雑で、まだ科学的に解明されていない点が多いということです。だからこそ、「誰にとってもこれが絶対」という一つのルールは存在せず、あなたの歯科医師と相談しながら、あなた個人の状況に合わせたオーダーメイドの計画を立てることが何よりも重要になるのです。

あなたのベストなリテーナーは、あなた自身の選択

今回の科学的レビューが教えてくれたのは、リテーナー選びに「唯一の正解」はないということです。「最高の」リテーナー戦略は、利便性、口腔衛生の習慣、耐久性への懸念など、個々の患者さんが何を優先するかによって大きく変わります。

歯の後戻りは「生涯にわたるリスク」であり、継続的な保定が重要であることは変わりません。

この記事で学んだことを元に、あなたにとっての優先順位を考えてみましょう。見た目の自然さや快適さを最優先しますか?それとも、故障しにくい頑丈さの方が安心できますか?あるいは、装着時間の柔軟性が何より重要でしょうか。次の診察で、これらのトレードオフについて話し合い、あなただけの最適なプランを見つけましょう。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Martin C, Littlewood SJ, Millett DT, Doubleday B, Bearn D, Worthington HV, Limones A. Retention procedures for stabilising tooth position after treatment with orthodontic braces. Cochrane Database Syst Rev. 2023 May 22;5(5):CD002283. doi: 10.1002/14651858.CD002283.pub5. PMID: 37219527; PMCID: PMC10202160.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医