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歯ならび/歯列矯正

院長のとっておきの話 その46 子どもの出っ歯、矯正はいつ始めるべき?最新研究が明かす3つの意外な真実

お子さまの上の前歯が少し前に出ている「出っ歯(上顎前突)」について、心配されている保護者の方は少なくありません。実はこれは非常によくあることで、例えば英国では12歳の子どもの約4人に1人がこの状態にあると報告されています。前歯が出ていると、転んだ時などに歯を傷つけるリスクが高まったり、見た目が気になってしまったりすることがあります。

多くの保護者の方が直面するのが、「まだ乳歯も残っている低年齢のうちに治療を始めるべきか、それとも永久歯が生えそろう思春期まで待つべきか」という悩みです。どちらのタイミングにもメリット・デメリットがあるように感じられ、決断は簡単ではありません。

この記事では、信頼性の高い大規模な科学的レビュー(コクラン・レビュー)から明らかになった、矯正治療のタイミングに関する意外な、しかし非常に重要な事実をご紹介します。この情報が、保護者の皆さまが納得のいく決断を下すための一助となれば幸いです。

真実1:早期治療の最大のメリットは「見た目の仕上がり」ではなく「ケガの予防」

最も意外で、直感に反するかもしれない事実がこれです。7歳から11歳頃に治療を始める「早期治療」は、最終的な歯並びや顎の位置といった仕上がりの美しさを、思春期(12歳から16歳頃)に治療を始める場合よりも良くするわけではない、ということが科学的に示されています。研究によれば、すべての治療が完了した時点での前歯の突出度(オーバージェット)や顎の骨格的な関係に、両グループ間で違いは見られませんでした。

では、早期治療の最大のメリットは何なのでしょうか?それは、前歯をぶつけてケガをするリスク(切歯の外傷)を減らす効果がより高いという点です。

これは中等度から質の低いエビデンス(科学的根拠)に基づくものですが、現時点で最も信頼できる結論です。具体的なデータを見てみましょう。機能的装置(Functional appliance)を用いた場合、思春期に治療したグループでは30%の子どもが新たに前歯をケガしたのに対し、早期治療を受けたグループではその割合が19%に減少しました。また、ヘッドギアを用いた場合でも、早期治療グループのケガの発生率は、思春期治療グループの半分近くまで減少しました。

このレビューの「著者の結論」は、この点を非常に明確にまとめています。

質の低い、または中等度のエビデンスによると、上の前歯が突出している子どもに早期の矯正治療を行うことは、思春期に1回で治療を行うよりも、前歯のケガの発生率を減らす上でより効果的である。思春期での治療と比較した場合、早期治療にはこれ以外に利点はないようである。

真実2:「もう手遅れかも?」は間違い。思春期の治療でも十分な効果が期待できる

「うちの子はもう小学生ではないから、治療を始めるには遅すぎたのでは…」と心配されている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。その心配は不要です。

今回のレビューでは、思春期に1回で集中的に行う治療も、出っ歯を改善する上で非常に効果的であることがはっきりと示されています。質の低いエビデンスに基づきますが、思春期に機能的装置を用いた治療は、何もしない場合と比較して、固定式の装置で平均5.5mm、取り外し式の装置で平均4.6mmも前歯の突出を効果的に減少させることが確認されています。

つまり、選択肢は「早期治療か、さもなければ無治療か」という二者択一ではありません。どちらのタイミングで治療を始めても、最終的には良い結果を得ることが可能です。したがって、「早期治療」か「思春期治療」かは、ご家庭の状況に合わせて最適なタイミングを選ぶという視点で考えることができます。

真実3:「魔法の装置」は存在しない。最適な装置は一人ひとり違う

矯正治療には、ツインブロック、ヘッドギア、固定式の装置、取り外し式の装置など、様々な種類の装置が使われます。「うちの子にはどの装置が一番良いのだろう?」と悩むのは当然のことです。

このレビューでは、これらの異なる装置の効果も比較検討されました。その結果、明らかになったのは、「どんな患者さんにも絶対的に優れている魔法のような装置」は存在しないということです。

例えば、固定式の装置と取り外し式の装置を比較した研究では、固定式の方がわずかに前歯の突出を減らす効果が高く、一方で取り外し式の方が骨格的な変化を促す上でわずかに有利である可能性が示されました。しかし、これらの差は小さく、臨床的にどれほど重要かは議論の余地があります。また、人気の高いツインブロックと他の装置を比較した研究でも、最終的な前歯の突出度(オーバージェット)に大きな差は見られませんでした。骨格への影響でわずかな差が示唆されたものの、臨床的に重要と言えるほどの違いではありませんでした。

結論として、特定の「最高の装置」を探すのではなく、お子さま一人ひとりの歯並びや骨格の状態、ライフスタイルに合わせて、担当医と相談しながら最適な装置を選択することが最も重要です。

おわりに

今回の科学的レビューから得られた重要なポイントをまとめます。まず、出っ歯の早期治療(7〜11歳)における最大の科学的根拠のあるメリットは、最終的な仕上がりを良くすることではなく、前歯をケガするリスクを減らすことです。そして、何らかの理由で早期治療を選ばなかったとしても、思春期(12〜16歳)からの治療で十分に良い結果が得られるため、決して手遅れではありません。

最終的に、治療のタイミングを決定することは、「ケガのリスクを減らす」という明確なメリットと、治療期間、費用、お子さまの協力度といったご家庭ごとの要因を天秤にかける作業と言えるでしょう。あなたの家族にとって、最も重要な要素は何でしょうか?

最善の第一歩は、お子さまに合わせた個別の治療計画について話し合うことです。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Batista KB, Thiruvenkatachari B, Harrison JE, O’Brien KD. Orthodontic treatment for prominent upper front teeth (Class II malocclusion) in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Mar 13;3(3):CD003452. doi: 10.1002/14651858.CD003452.pub4. PMID: 29534303; PMCID: PMC6494411.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医