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院長のとっておきの話 その47 歯茎だけの問題じゃない?歯周病が心臓に及ぼす、知られざる4つの衝撃的な事実

毎日歯を磨くのは、虫歯や歯茎の病気を防ぐため――これは誰もが知っている常識です。しかし、もしその歯磨きが、あなたの心臓の健康にも直接関わっているとしたらどうでしょうか?実は、口の中の健康、特に歯茎の状態は、全身の健康、とりわけ心血管系の健康と深く結びついていることが、科学的に明らかになってきています。そして、このつながりは非常に重要です。なぜなら、心血管疾患は依然として世界で最も多い死因であり続けているからです。

このつながりは、単なる可能性の話ではありません。複数の研究を分析した結果、歯周病にかかっている人は、冠状動脈性心疾患を発症するリスクが1.14倍から2.2倍も高まることが示されています。これは、歯茎のケアを単なる口内衛生の問題としてではなく、全身の健康を守るための重要な生活習慣として捉え直すべき、強力な理由と言えるでしょう。

1. 細菌の「チームプレー」:口の中の悪玉菌は協力して強力になる

歯周病を引き起こす細菌を、個別のトラブルメーカーだと考えてはいけません。むしろ、高度に組織化された犯罪集団のようなものです。科学者たちはこれを「多菌種間の相乗効果(ポリマイクロバイアル・シナジー)」と呼びますが、要するに、チームが合わさった時の破壊力は、個々の力を足し合わせたものをはるかに上回るのです。特に「レッドコンプレックス」と呼ばれる悪名高い3種類の細菌群(ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンティコーラ、タネレラ・フォーサイシア)は、ただの寄せ集めではなく、「バイオフィルム」と呼ばれる非常に構造化されたコミュニティを形成します。実験では、これらの細菌を一緒に培養すると「バイオマスの生産が著しく向上する」ことがわかっています。つまり、単独でいる時よりもはるかに大きく、頑丈なコロニーを築くのです。この協力関係は非常に緻密で、ある細菌(トレポネーマ・デンティコーラ)の移動能力が、コミュニティ全体の構造を維持するために不可欠であることまで解明されています。

この細菌たちのチームプレーは、体内の炎症反応を劇的に増幅させます。その影響は深刻で、ある研究では、これらの病原菌に対する抗体反応が高く、かつ体内の炎症マーカーも上昇している患者は、心血管イベント(心筋梗塞など)を起こすリスクが3.01倍から3.11倍にも達することがわかりました。これは、口の中の悪玉菌チームが、心臓にとって3倍以上の脅威になり得ることを意味しています。

2. 免疫システムの「人違い」:体が間違って心臓を攻撃してしまう仕組み

私たちの免疫システムは、通常、体を守るために細菌などの外敵を攻撃します。しかし、時にこのシステムが「人違い」を起こしてしまうことがあります。この現象は「分子的擬態」と呼ばれ、歯周病と心臓病を結びつける重要なメカニズムの一つです。

具体的には、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス・ジンジバリスが持つあるタンパク質(熱ショックタンパク質)が、人間の体内に存在するタンパク質(ヒトHSP60)と構造上、約60%も似通っているのです。この高い類似性が免疫システムを混乱させ、細菌を攻撃するために作られた抗体が、間違って自分自身の心血管組織まで攻撃してしまうのです。この「誤爆」が、動脈硬化の進行に寄与すると考えられています。

3. 「味方」が「敵」に変わる?善玉物質・一酸化窒素のパラドックス

一酸化窒素(NO)は、通常、血管を健康に保ち、しなやかに拡張させる働きを持つ「善玉」分子です。血管の健康維持に欠かせない、まさに味方のような存在です。

しかし、歯周病によって引き起こされる慢性的な炎症状態では、この常識が覆ります。炎症によって体内では大量の有害な「スーパーオキシド」という物質が生成されます。本来有益であるはずの一酸化窒素が、このスーパーオキシドと反応すると、「ペルオキシナイトライト」という非常に毒性の高い物質に変化してしまうのです。このプロセスは、有害物質を生み出すだけでなく、本来血管を守るはずだった善玉の一酸化窒素の量をも減少させてしまい、血管がダメージを受けやすくなるという悪循環に陥るのです。

さらに驚くべきことに、歯周病は私たちの体が善玉の一酸化窒素を作る能力そのものを奪ってしまいます。私たちの口は、野菜などに含まれる「硝酸塩」を原料に、体内で一酸化窒素を作り出すための「工場」のような役割を担っています。しかし、最新の研究で、歯周病になると、この変換を担う特定の善玉菌が口の中からいなくなってしまうことがわかりました。つまり、歯周病は口の中の「一酸化窒素工場」を破壊し、体全体で善玉物質が不足する事態を引き起こしていたのです。

4. 朗報:歯茎の治療は、血管の健康改善につながる

ここまで歯周病が心臓に与える深刻な影響について解説してきましたが、非常に重要な朗報があります。それは、歯周病の治療が、単に歯を守るだけでなく、血管の健康状態を測定可能なレベルで改善するということです。これがこの記事の最も重要なポイントです。

科学的な証拠もそれを裏付けています。

  • 歯周病治療は、IL-6のような全身の炎症マーカーのレベルを効果的に減少させることが示されています。
  • 複数の研究を統合したメタアナリシスによると、歯周病治療は血管内皮機能(血管の内壁の健康状態)を短期(3ヶ月以内)および長期(6ヶ月)にわたって有意に改善しました。特に、治療後180日(約6ヶ月)の時点では、血流依存性血管拡張反応が対照群と比較して2.0%も改善するという顕著な結果が見られました。

これは、歯茎の治療が単に口の中をきれいにするだけでなく、文字通りあなたの血管を「癒す」力を持っていることを示す、力強い科学的証拠なのです。

まとめ:口の健康管理は、心臓を守るための第一歩

私たちの口と体は決して別々のものではありません。歯茎の炎症は、口の中だけの問題にとどまらず、全身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。細菌のチームプレー、免疫システムの誤作動、そして善玉物質の裏切りといったメカニズムを理解すると、なぜ積極的なデンタルケアが全身の健康管理に不可欠なのかがよくわかります。

歯茎の健康は、心臓の健康のバロメーターです。

あなたは今日から、心臓の健康を守るために、歯茎のケアをどのように見直しますか?


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Ferrara E, D’Albenzio A, Bassignani J, Di Tanna I, Murmura G, Balice G. The Periodontal-Cardiovascular Disease Association: Molecular Mechanisms and Clinical Implications. Int J Mol Sci. 2025 Aug 9;26(16):7710. doi: 10.3390/ijms26167710. PMID: 40869031; PMCID: PMC12387035.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医