来院者専用ブログ

栄養医学/栄養療法/食事/抗加齢

院長のとっておきの話 その5 ビタミンB3の一種「ナイアシンアミド」の驚くべき健康効果5選:美肌だけじゃない、筋肉、脳、そして口腔ケアにも

「ナイアシンアミド(ニコチンアミド、NAM)」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?おそらく、美容液の棚に並ぶ、あの白いボトルでしょう。その美肌効果は広く知られ、私たちの日常にすっかり溶け込んでいます。

しかし、この身近なビタミンが、加齢による筋肉の衰えと戦い、脳を保護し、さらには虫歯予防にも役立つ可能性があるとしたらどうでしょう?

最新の研究によって、ナイアシンアミド(またはニコチンアミド)は単なる美容成分ではなく、全身の健康維持に重要な役割を果たす多機能な分子であることが次々と明らかになっています。この記事では、科学的根拠に基づき、ナイアシンアミドが持つ特に驚くべき5つの健康効果を詳しく解説していきます。

【効果1】加齢による筋肉の衰え「サルコペニア」に立ち向かう

年齢を重ねるとともに、筋肉の量と力が自然に低下していく状態を「サルコペニア」と呼びます。これは多くの中高年にとって、活動的な生活を維持する上での大きな課題です。

近年の研究(Ancel et al., 2024)で、ナイアシンアミドがこのサルコペニアに対抗する新たな鍵となる可能性が示されました。研究によると、ナイアシンアミドはピリドキシン(ビタミンB6)と組み合わせることで、筋肉の修復と成長を担う「筋幹細胞」の増殖を促進し、その再生能力を高めることがわかったのです。これは運動で既存の筋線維を太くするのとは異なり、筋肉の再生能力そのものを高めるアプローチです。

この発見は、高齢者の筋力維持や怪我からの回復をサポートする、新しい栄養戦略の可能性を示唆しています。

【効果2】脳と神経の健康を守る「神経保護作用」

ナイアシンアミドは、私たちの最も重要な臓器である脳の健康を守る上でも、重要な役割を果たすことがわかってきました。

アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患のモデル研究において、ナイアシンアミドが神経細胞を保護する効果を持つことが報告されています(LEI et al., 2023)。特に驚くべきは、統合失調症様の症状を示す動物モデルを用いた研究です。この研究では、ナイアシンアミドの投与によって、認知機能の障害や神経細胞死が改善されるという結果が得られました(Hao et al., 2023)。

この効果の背景には、ナイアシンアミドが細胞のエネルギー産生に不可欠な「NAD+」という物質を増やし、ミトコンドリアの健康を維持する「SIRT3」というタンパク質を活性化するメカニズムがあります。健康な神経細胞は脳内の免疫細胞(ミクログリア)を穏やかに保ちますが、ダメージを受けると炎症反応を引き起こすことがあります。ナイアシンアミドは、神経細胞のダメージを防ぐことで、こうした脳内の炎症環境を鎮めることにも繋がるのです。

この驚くべき効果もまた、ナイアシンアミドが細胞の基本的なエネルギー供給をいかに支えているか、という根本的な役割に行き着きます。これは、ナイアシンアミドが細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを元気にし、その活動を最適化することで、脳全体の健康を根底から支えていることを意味します。

【効果3】心臓と骨の健康をサポートする縁の下の力持ち

ナイアシンアミドの恩恵は、筋肉や脳だけにとどまりません。生命活動の根幹を支える心臓や、体を支える骨にも良い影響を与える可能性が示されています。

非常にインパクトのある研究として、心停止後の生存率を向上させるという報告があります(Zhu et al., 2023)。心停止によって虚血状態(血流が途絶えた状態)に陥った心筋は、エネルギー源であるNAD+とATPが枯渇します。この研究では、ナイアシンアミドを投与することで心筋のNAD+レベルが急速に回復し、エネルギー産生が促進され、結果として心機能の回復と生存率の向上につながったことが示されました。

また、骨の健康に関しても、ナイアシンアミドが骨を形成する細胞(骨芽細胞)への分化を促し、酸化ストレスから細胞を守ることで、骨の健康維持に貢献する可能性が示唆されています(Yoon et al., 2023)。

心臓のようなエネルギーを大量に消費する臓器から、常に新陳代謝を繰り返す骨まで、ナイアシンアミドが細胞レベルの基本的な生命活動を支えていることがわかります。

【効果4】過剰な免疫反応を鎮める「抗炎症作用」

私たちの体を守る免疫システムも、時に過剰に反応し、慢性的な炎症や自己免疫疾患を引き起こすことがあります。ナイアシンアミドには、こうした免疫の暴走を鎮める働きがあることもわかってきました。

最新の研究(Nijhuis et al., 2025)によると、ナイアシンアミドは免疫の司令塔である「CD4+ T細胞」の過剰な活性化や増殖を抑制する効果があります。さらに、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の産生を減少させることで、体内の炎症反応を穏やかにする働きが確認されました。

この免疫調節機能により、ナイアシンアミドは、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療において、副作用の少ない有望な選択肢となる可能性を秘めています。

【効果5】美肌だけじゃない!皮膚がん予防から虫歯予防まで

スキンケア成分として有名なナイアシンアミドですが、その効果は単なる美容目的だけでなく、より深刻な健康問題の予防にもつながります。

紫外線は皮膚の細胞のDNAにダメージを与え、皮膚がんの原因となります。ナイアシンアミドは、この紫外線によるDNA損傷の修復を助け、細胞のエネルギー低下を防ぐことで、日光角化症(AK)や非黒色腫皮膚がんの発生を予防する「化学予防」効果があることが、複数の研究で示されています(Camillo et al., 2025; Belardi et al., 2024)。

そして、ここからが特に注目すべき点です。ナイアシンアミドは、口腔内の健康にも貢献することが報告されています。研究によると、ナイアシンアミドは主要な虫歯菌である「ミュータンス菌」の増殖や、菌の温床となるバイオフィルムの形成を抑制する効果があります。

さらに、口腔カンジダ症の原因となる「カンジダ菌」に対する抗菌活性も示されています(LEI et al., 2023)。

お口の健康は全身の健康の入り口です。ナイアシンアミドは、その両方に貢献する可能性を秘めた成分なのです。

なぜこんなに多くの効果が?秘密は細胞のエネルギー通貨「NAD+」

ここまで紹介した筋肉、脳、心臓、免疫、口腔への多様な効果は、どのようにして生まれるのでしょうか。その秘密の多くは、ナイアシンアミドが体内で「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という非常に重要な物質に変換されることで説明できます。

NAD+は、しばしば「細胞のエネルギー通貨」や「ダメージ修復部隊の燃料」に例えられます。細胞が正常に機能し、ダメージを修復するために不可欠な存在です。しかし、このNAD+は加齢とともに体内で減少することが知られています。これは、DNA損傷の修復(NAD+を消費するPARP酵素が担う)や慢性的な炎症といった、加齢に伴う体の変化がNAD+を絶えず消耗するためです。

ナイアシンアミドを補給することは、この減少したNAD+レベルを維持・回復させるための鍵となります。ただし、全ての効果がNAD+だけで説明できるわけではありません。例えば、筋肉に対する効果ではNAD+とは異なるメカニズムも発見されており(Ancel et al., 2024)、研究は今もなお進行中です。

まとめ:未来の健康戦略の鍵を握るビタミン

ナイアシンアミドは、もはや単なるスキンケア成分ではありません。筋肉の維持から脳の保護、心臓や骨の健康、免疫バランスの調整、そして口腔ケアに至るまで、全身の細胞レベルで私たちの体を支える多機能な分子です。

このシンプルなビタミンが、私たちの体の基本的なプロセスをどのようにサポートするのか、その全容が解明されるにつれ、未来の健康長寿戦略において中心的な役割を果たすことになるかもしれません。あなたはどう思いますか?

未来の健康戦略を塗り替える可能性を秘めたナイアシンアミドですが、サプリメント等での摂取を検討する際は、ご自身の判断だけでなく、必ず医師や歯科医師、薬剤師にご相談ください。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

ナイアシンアミドによる象牙質知覚過敏症への応用については別記事にてご紹介します。

引用)
Ancel S, Michaud J, Migliavacca E, Jomard C, Fessard A, Garcia P, Karaz S, Raja S, Jacot GE, Desgeorges T, Sánchez-García JL, Tauzin L, Ratinaud Y, Brinon B, Métairon S, Pinero L, Barron D, Blum S, Karagounis LG, Heshmat R, Ostovar A, Farzadfar F, Scionti I, Mounier R, Gondin J, Stuelsatz P, Feige JN. Nicotinamide and pyridoxine stimulate muscle stem cell expansion and enhance regenerative capacity during aging. J Clin Invest. 2024 Nov 12;134(24):e163648. doi: 10.1172/JCI163648. PMID: 39531334; PMCID: PMC11645154.

Lei ZX, Lin YW, Li YQ, Zhou XD. [Research Progress in Niacinamide in the Prevention and Treatment of Mouth and Systemic Diseases]. Sichuan Da Xue Xue Bao Yi Xue Ban. 2023 Jan;54(1):14-19. Chinese. doi: 10.12182/20230160105. PMID: 36647637; PMCID: PMC10409037.

Nijhuis L, Bodelόn A, Scholman RC, Houtzager I, Sijbers LJPM, Mocholi E, Picavet LW, Calis JJA, Mokry M, Vastert SJ, van Loosdregt J. Nicotinamide Inhibits CD4+ T-Cell Activation and Function. Cells. 2025 Apr 8;14(8):560. doi: 10.3390/cells14080560. PMID: 40277886; PMCID: PMC12025565.

Hao K, Chen F, Zhao L, Xu S, Xiong Y, Xu R, Xie X, Huang H, Shu C, Liu Z, Wang H, Wang G. Nicotinamide ameliorates mitochondria-related neuronal apoptosis and cognitive impairment via the NAD+/SIRT3 pathway. Schizophrenia (Heidelb). 2023 May 20;9(1):32. doi: 10.1038/s41537-023-00357-w. PMID: 37210391; PMCID: PMC10199898.

Yoon, H., Park, S.G., Kim, HJ. et al. Nicotinamide enhances osteoblast differentiation through activation of the mitochondrial antioxidant defense system. Exp Mol Med 55, 1531–1543 (2023). https://doi.org/10.1038/s12276-023-01041-w

Zhu X, Li J, Wang H, Gasior FM, Lee C, Lin S, Justice CN, O’Donnell JM, Vanden Hoek TL. Nicotinamide restores tissue NAD+ and improves survival in rodent models of cardiac arrest. PLoS One. 2023 Sep 15;18(9):e0291598. doi: 10.1371/journal.pone.0291598. PMID: 37713442; PMCID: PMC10503771.

Camillo L, Zavattaro E, Savoia P. Nicotinamide: A Multifaceted Molecule in Skin Health and Beyond. Medicina (Kaunas). 2025 Feb 1;61(2):254. doi: 10.3390/medicina61020254. PMID: 40005371; PMCID: PMC11857428.

Belardi R, Pacifici F, Cosio T, Lambiase S, Shumak RG, Artosi F, Rivieccio A, Cavalloro D, Dellambra E, Bianchi L, Della-Morte D, Campione E. Role of Nicotinamide in the Pathogenesis of Actinic Keratosis: Implications for NAD+/SIRT1 Pathway. Biomolecules. 2024 Nov 27;14(12):1512. doi: 10.3390/biom14121512. PMID: 39766219; PMCID: PMC11673244.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医