来院者専用ブログ

睡眠/ブラキシズム

院長のとっておきの話 その60 朝の頭痛、原因は寝室のドア? 睡眠の質を科学する2つの新事実

「十分な時間眠ったはずなのに、なぜか疲れが取れない」「朝、なんとなく頭が重い」。このような、すっきりしない目覚めを経験したことはありませんか?多くの方が、その原因を枕やマットレス、あるいは日中のストレスや、いびきなどの口腔内の問題に求めてきたかもしれません。

しかし、もしその不調の原因が、これまで考えもしなかった「寝室の空気」や、私たちが眠っている間に繰り広げられる「脳の驚くべき働き」にあるとしたらどうでしょう。

この記事では、最新科学が解き明かす「睡眠中の見えない環境」—寝室の「外的な空気環境」と、私たちの脳内で繰り広げられる「内的な防御システム」—に関する2つの驚くべき事実をご紹介します。

1. 寝室のドアを少し開けるだけで、朝のパフォーマンスが変わるかもしれない

多くの人が、プライバシーや静けさを確保するために、寝室のドアをしっかりと閉めて眠る習慣があるのではないでしょうか。しかし、この当たり前の習慣が、実は翌朝のコンディションに悪影響を与えている可能性が、近年の研究で指摘されています。

Mota氏らが主導した研究では、ある興味深い実験が行われました。研究者たちは、大学の学生寮の部屋に高感度のセンサーを設置し、一晩はドアを完全に閉めた状態で、別の晩はドアを少し(約10cm)開けた状態で、睡眠中の室内の二酸化炭素(CO2)濃度を精密に測定したのです。

その結果は驚くべきものでした。

  • ドアを閉めた場合: 睡眠開始後、室内のCO2濃度は急激に上昇。健康上の推奨値とされる1000ppmを、実に約3時間にわたって超え続けました。
  • ドアを少し開けた場合: CO2濃度の上昇は非常に緩やかで、一晩を通して推奨値を超えることはありませんでした。

では、なぜCO2濃度がこれほど重要なのでしょうか。実は、室内のCO2濃度が一定レベルを超えると、私たちの脳のパフォーマンスに直接影響することが分かっています。

これを分かりやすく解説すると、「945〜1400ppmのCO2レベルに晒された人々は、認知機能や意思決定能力の低下が見られ、2000〜3000ppmに達すると頭痛や倦怠感などの健康症状を引き起こす可能性がある」ということです。

つまり、朝起きた時の原因不明の頭痛やだるさ、日中の集中力不足は、寝ている間に高濃度になったCO2を吸い続けていたことが原因かもしれません。

寝室のドアをほんの少し開けて換気を促す。これは、科学的根拠に裏付けられた、誰でも今夜から実践できる最も簡単な「ライフハック」です。明日のすっきりした目覚めのために、試してみる価値は十分にあります。

2. 睡眠中の脳は驚くほどタフ。睡眠時無呼吸がもたらす「低酸素」との戦い

次に、私たちの脳が睡眠中に見せる、驚くべき自己防衛能力についてご紹介します。

睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に呼吸が断続的に停止する病気で、脳卒中のリスクを高める深刻な健康問題として知られています。当院でも、いびきや歯ぎわりのご相談からこの病気が見つかるケースは少なくありません。OSAが危険視される主な理由の一つは、呼吸が止まるたびに体、特に脳が「間欠的低酸素」という危険な状態に晒されることです。

私たちの脳には、「脳自動調節能(dCA)」という、非常に重要な自己防衛機能が備わっています。これは、「血圧が多少変動しても、脳への血流を常に一定に保つ」という、生命維持に不可欠な仕組みです。

常識的に考えれば、低酸素という過酷な状態が繰り返されれば、この重要な脳の機能も損なわれてしまうはずです。しかし、Beaudin氏らの研究は、私たちの予想を裏切る事実を明らかにしました。

研究チームは、健康な若い男性を対象に、睡眠時無呼吸症候群を模した短期的な低酸素状態を人為的に作り出し、その間の脳自動調節能を測定しました。その結果、驚くべきことに、ノンレム睡眠中においては、低酸素状態に約2時間にわたって晒されても、脳の血流を調整するこの重要な機能は損なわれなかったのです。

この発見のインパクトは、研究論文の結論部分に明確に示されています。

これは、「これらの結果は、脳自動調節能がノンレム睡眠のステージ2/3において有効であり、間欠的低酸素を伴う約2時間の睡眠によって影響を受けないことを示している」という意味です。

さらに驚くべきは、低酸素状態が続くにつれて脳への血流速度そのものは実際に低下し始めたにもかかわらず、脳の自己調節機能は決して壊れなかったという点です。これは、脳が単に「タフ」であるというだけでなく、多大なストレス下で血流を維持するために、信じられないほどの努力を続けていることの証左と言えるでしょう。

もちろん、これは睡眠時無呼吸症候群が安全だという意味では決してありません。 この研究はあくまで健康な若年男性を対象とした短期的な実験の結果であり、長期間にわたる慢性的な低酸素状態が脳や血管に与えるダメージは、依然として非常に大きいことが分かっています。

この研究が私たちに教えてくれるのは、私たちが眠っている間も、脳は自らを守るために驚くべき回復力と防御メカニズムを発揮している、ということです。しかし、その素晴らしい機能に頼り切ってしまうのは危険です。大きないびきや日中の強い眠気など、気になる症状がある場合は、決して自己判断せず、専門医に相談することが何よりも重要です。

まとめ:今夜からできること

この記事では、睡眠の質を左右する2つの科学的な事実をご紹介しました。

  1. 寝室のドアを少し開けるだけで空気の質が劇的に改善し、翌朝の頭痛や倦怠感を防げる可能性があること。
  2. 私たちの脳は、睡眠時無呼吸症候群が引き起こすような低酸素状態に対しても、驚くほど強靭な自己防衛機能を持っていること。

今夜、ベッドに入る前に、あなたの寝室の「見えない環境」について少しだけ意識を向けてみませんか?

ドアを少し開けることで「外的な空気環境」を整える。それは、私たちが眠っている間に「内的な防御システム」が最高のパフォーマンスを発揮するための、シンプルで力強いサポートになるのです。私たちが休んでいる間も、私たちの体は健康を守るために驚くべき働きを続けていることを忘れないでください。

※ また睡眠/ブラキシズムに関する別記事もご参照ください。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Mota A, Serôdio C, Briga-Sá A, Valente A. Implementation of an Internet of Things Architecture to Monitor Indoor Air Quality: A Case Study During Sleep Periods. Sensors (Basel). 2025 Mar 8;25(6):1683. doi: 10.3390/s25061683. PMID: 40292775; PMCID: PMC11945692.

Beaudin AE, Prsa AJ, Hanly PJ, Raneri JK, Pun M, Mitsis GD, Poulin MJ. Dynamic cerebral autoregulation in healthy males during sleep accompanied by intermittent hypoxia. J Appl Physiol (1985). 2025 Dec 1;139(6):1492-1504. doi: 10.1152/japplphysiol.00099.2025. Epub 2025 Oct 14. PMID: 41087156.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医