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院長のとっておきの話 その64 食いしばり治療の新常識?ボトックスが「本当に効く人」の意外な特徴が研究で判明

「もしかして私も?」多くの人が悩む食いしばり、その原因と最新治療
「朝起きると顎がだるい」「日中、無意識に歯を食いしばっている」「原因不明の頭痛や肩こりに悩んでいる」…こうした症状に、心当たりはありませんか?
現代社会のストレスを背景に、歯ぎしりや食いしばり(専門用語で「ブラキシズム」)に悩む人は増加傾向にあります。特に、新型コロナウイルスのパンデミック以降、その数は急増したとも言われています。

食いしばり治療にはマウスピースや行動療法など様々な選択肢がありますが、「自分にはどれが本当に効くの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。そんな中、最新の研究が、特にボトックス治療が「どのような人に最も高い効果を発揮するのか」を科学的に解き明かしました。
2025年10月末に発表されたある科学論文が、ボトックス治療に関するこれまでの常識を覆すかもしれない、驚きの事実を明らかにしたのです。
この記事では、最先端の研究から判明した「食いしばり治療とボトックスに関する3つの意外な事実」を、どなたにも分かりやすく解説します。ご自身の症状に悩む多くの方にとって、きっと新しい発見があるはずです。
驚きの事実①:「歯ぎしり」は病気ではなく「行動」だった

まず、最も驚くべき事実は、現代の医学では「歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)は、それ自体が病気とは考えられていない」という点です。
かつては異常な癖や病気と見なされていましたが、最新の国際的なコンセンサスでは、これはあくまで「行動」の一種と定義されています。そして、多くの人にとって、この行動は特に害のないものです。
では、どのような場合に治療が必要になるのでしょうか?
答えは、「その行動によって、何か悪い結果(ネガティブな影響)が生じたとき」です。例えば、顎の筋肉の痛みや疲労感、歯の過度なすり減り、顎関節の問題などが現れた場合に、初めて治療が検討されます。

つまり、ただ歯ぎしりをしているというだけで、すぐに治療が必要なわけではないのです。この考え方は、治療法を選択する上で非常に重要な前提となります。

大切なのは「食いしばりを止める」ことではなく、「食いしばりによる痛みや歯のすり減りといった問題を解決する」ことです。治療の目的は、あくまで悪影響を取り除くことにあります。
驚きの事実②:ボトックスは「もともと筋肉が硬い人」ほど効果が大きく、長持ちする

この記事の最も重要なポイントです。今回の研究で、ボトックス治療が「どのような人に最も効果的か」が具体的に示されました。これは、症状が重く、長年つらい思いをされてきた方にとって、非常に希望の持てる結果と言えるでしょう。
研究では、治療を受ける前の患者さんのあごの筋肉(咬筋)の「緊張度」や「硬さ」を特殊な機器で客観的に測定し、その数値の高さによって3つのグループに分けました。そして、ボトックス注射後の変化を比較したのです。
その結果、驚くべきことが分かりました。
治療前から筋肉の緊張度と硬さが最も高かったグループが、ボトックスによる最も大きな改善効果を体験し、さらにその効果が最も長く持続したのです。このグループでは、注射から3ヶ月後も筋肉の緊張が和らいだ状態が維持されていました。
一方で、もともとの緊張度が低かったり中程度だったりしたグループでは、効果はそれほど大きくなく、3ヶ月後には元の状態に戻ってしまう傾向が見られました。
この発見は、ボトックス治療が、特に「筋肉の過度な緊張による痛みや張りに深刻に悩んでいる人」にとって、非常に有効な選択肢となり得ることを科学的に示唆しています。
驚きの事実③:効果は「感覚」だけじゃない。筋肉の変化が客観的な数値で証明された

「治療を受けて楽になった気がする」といった患者さんの主観的な感覚だけでなく、この研究では筋肉の状態が客観的なデータでどう変化したかが明らかにされました。
研究者たちは「MyotonPro」という特殊な測定機器を使い、ボトックス注射の前後で顎の筋肉の特性がどのように変化したかを精密に測定しました。
その結果、主に以下のような改善が数値で確認されました。

- 緊張と硬さ: 筋肉の緊張と硬さが、特に強く噛み締めた時に著しく減少しました。つまり、筋肉が不必要にこわばるのを防ぐ効果が確認されたのです。
- 弾力性: 硬くなった輪ゴムが伸び縮みしにくいように、緊張した筋肉も弾力性を失います。治療によって、この筋肉本来のしなやかな「伸び縮みする力」が回復したことが示されました。
- リラックスする力: 力を抜いた後、筋肉がすっとリラックス状態に戻るまでの時間が改善しました。これにより、無意識の緊張が持続しにくくなります。

また、これらの効果の持続時間についてもリアルなデータが示されています。効果が最も顕著に現れたのは注射から3週間後で、3ヶ月後には効果が少しずつ薄れ始める傾向があることも分かりました。これは、患者さんが治療後の経過を予測する上で、非常に参考になる情報です。
あなたの食いしばり治療、次のステップは?
今回の科学論文が明らかにした3つの事実をまとめましょう。
- 食いしばりは「病気」ではなく「行動」。 痛みなどの悪影響がなければ、過剰に心配する必要はありません。
- ボトックスは、もともとの筋肉の緊張が強い人ほど、効果が大きく長続きする。
- その効果は、客観的な数値で証明された科学的根拠のあるもの。
ボトックス治療は、食いしばりが引き起こす辛い症状に対する、科学的に検証された有効なアプローチの一つです。そして、特に筋肉の過緊張に悩む方々にとって、大きな希望となる可能性を秘めています。

もしあなたが、長引く顎の痛みや食いしばりが原因の頭痛に悩んでいるなら、ご自身の筋肉の状態を客観的に評価することが、あなたに合った最適な治療法を見つけるための重要な鍵になるかもしれません。ぜひ一度、専門のクリニックにご相談ください。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)
引用)
