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セルフケア

院長のとっておきの話 その70 なぜ舌は白くなるの?放置は危険?歯科医が教える「舌苔」の5つの真実

はじめに:あなたの舌、見過ごしていませんか?

朝、鏡をのぞいたとき、舌の上が白っぽくなっていることに気づいた経験はありませんか?多くの人が「食べかすかな?」と見過ごしてしまいがちですが、その正体は単なる汚れではないかもしれません。実は、その白いものは「舌苔(ぜったい)」と呼ばれ、あなたの口の中だけでなく、全身の健康状態を映し出す重要なサインである可能性があります。この記事では、歯科医師の視点から、舌苔に隠された5つの真実を分かりやすく解説していきます。

真実1:舌苔の正体は、単なる汚れではなく「細菌のすみか」

まず知っておいていただきたいのは、朝起きたときに舌の上がうっすらと白くなっているのは、多くの人に見られる生理的な現象で、基本的には正常です。しかし、その白い膜が分厚かったり、日中もずっと消えなかったりする場合は、注意が必要かもしれません。

舌苔の正体は、剥がれ落ちたお口の中の上皮細胞、食べかす、そして非常に多くの微生物が固まってできた「バイオフィルム」と呼ばれる膜です。身近な例でいえば、川の中の石の表面にあるぬるぬるとした膜のようなものです。舌の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)という細かい溝や突起がたくさんあり、この複雑な構造が細菌や汚れを溜め込みやすい環境を作っています。特に、舌の溝が深い方は、滑らかな舌の方に比べて2倍もの細菌を溜め込んでいるというデータもあります。

事実、舌の上が口の中の他の場所よりも細菌数が多くなることがあり、これが様々なトラブルの温床となります。例えば、歯周病の原因となる細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリスなど)の温床となり、お口全体の健康を脅かすことにも繋がります。この細菌のすみかこそが、実は口臭(真実3)や味覚の低下(真実4)の直接的な原因となるのです。

真実2:舌の色は、全身の健康状態を知らせる「バロメーター」

驚くかもしれませんが、舌苔の色や状態は、全身の健康状態を反映する指標(バロメーター)となることがあります。舌苔の色によって、以下のような体の不調や疾患の可能性が示唆されることがあります。

  • 白: 厚く白い舌苔は、口腔カンジダ症(口の中のカビ)、糖尿病、胃の不調などと関連することがあります。
  • 黄: 胃の不調や、肝臓の疾患など、消化器系の問題を示している可能性があります。
  • 黒: 喫煙、抗生物質の使用、あるいは口腔内の衛生状態の悪化などが原因です。舌の表面にある糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれる細胞が異常に伸び、そこに細菌や食べかすが付着することで黒く見える状態です。
  • 赤: 舌が赤く炎症を起こしているように見える場合、「いちご舌」とも呼ばれ、ビタミンB12の欠乏や猩紅熱(しょうこうねつ)などのサインであることがあります。
  • 紫または青: 体内の血行不良や、心血管系の疾患と関連している可能性があります。

セルフチェックの重要なポイントは、その舌苔が舌ブラシなどで簡単に除去できるかどうかです。もし、こすっても取れない場合や、慢性的に厚い状態が続く場合は、単なる汚れではなく、何らかの体のサインである可能性が高まります。もちろん、これらの色が必ずしも病気を意味するわけではありませんが、舌苔の色がいつもと違う状態が長く続いたり、他に気になる症状があったりする場合は、歯科医師や医師に相談することが重要です。

真実3:口臭の主な原因は、胃ではなく「舌」にある

口臭が気になると、「胃が悪いのかな?」と考える方は少なくありません。しかし、口臭の主な原因の多くは、実は口の中にあり、その中でも特に舌が大きく関わっています。

口臭の元となるのは、「揮発性硫黄化合物(VSC)」というガスです。このガスは、舌苔の中に潜む細菌がタンパク質を分解する過程で産生されます。ある研究では、「口臭が口内由来の場合、およそ半数のケースで厚い舌苔が存在する」ことが報告されており、舌苔と口臭には非常に強い関連性があることがわかります。特に歯周病があると、歯周ポケットから流れ出た白血球などが舌に沈着し、舌苔が厚くなることで口臭がさらに強まることも分かっています。

真実4:舌苔は「味覚」を鈍らせることがある

舌苔が厚く付着すると、食べ物の味を感じるためのセンサーである「味蕾(みらい)」の上に物理的なバリアを形成してしまいます。これにより、甘味、酸味、塩味、苦味といった味覚を感じる能力が鈍ってしまう可能性があります。

味が分かりにくくなると、食事の楽しみが半減してしまったり、食欲に影響が出たりすることもあります。舌を清潔に保つことは、健康のためだけでなく、毎日の食事を美味しく楽しむためにも非常に重要なのです。

真実5:正しい舌ケアは「専用の道具」で「優しく」が基本

では、どのように舌苔をケアすればよいのでしょうか。間違った方法では舌を傷つけてしまうこともあるため、正しい方法を実践することが大切です。

  • 舌ブラシや舌スクレーパーの使用: 歯を磨くための歯ブラシは、硬いエナメル質を磨くように設計されており、毛先が硬すぎることがあります。デリケートな舌の粘膜には、専用の柔らかい素材でできた器具を使いましょう。舌ブラシと舌スクレーパーが一体になったタイプの器具が、口臭除去には特に効果的であるという研究報告もあります。
  • ケアのタイミング: 唾液の分泌が減少し、細菌が増殖しやすいのは夜間です。そのため、ケアは「朝」に行うのが最も効果的です。
  • 力の入れ具合: ゴシゴシと強くこする必要はありません。舌の奥から手前に向かって、優しくなでるように数回動かすだけで十分です。力を入れすぎると、味覚を感じる大切なセンサーである味蕾を傷つけてしまうだけでなく、逆説的ですが、舌の表面が荒れてさらに舌苔が付着しやすい環境を作ってしまうことにもなりかねません。
  • 食生活の工夫: 食物繊維の多い野菜や果物、例えばパイナップルやルバーブなどを食べることも、舌の表面が機械的に清掃されるのを助け、舌苔の付着を抑えるのに役立ちます。

まとめ:毎日の数秒の習慣が、未来の健康を守る

これまで見てきたように、舌苔は単なる見た目の問題ではありません。口臭や味覚の低下だけでなく、歯周病のリスクを高め、さらには全身の健康状態を知るための重要な手がかりにもなります。毎日の歯磨きのついでに、ほんの数十秒、舌のケアを加える習慣が、あなたの口内環境を改善し、未来の健康を守る第一歩となります。

今日から、あなたの舌が発するサインに少しだけ耳を傾けてみませんか?

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

AlBeshri S. Perspectives on tongue coating: etiology, clinical management, and associated diseases – a narrative review. Saudi Dent J. 2025 Aug 20;37(7-9):41. doi: 10.1007/s44445-025-00048-5. PMID: 40833644; PMCID: PMC12367605.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医