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院長のとっておきの話 その79 口内炎の意外な真実:最新研究から解説する4つの新常識

「口内炎ができて、食事がつらい」「治ったと思ったら、またすぐに繰り返してしまう」 多くの人が一度は経験する、この厄介な口内炎。その原因は、ストレスやビタミン不足だと考えている方が多いかもしれません。しかし、その原因は、あなたが思っているものとは違うかもしれません。

口内炎は口の中の炎症全般を指す言葉です。その中でも頻度の高い原因の一つが、カンジダという真菌(カビの一種)の過剰な増殖で、これを口腔カンジダ症と呼びます。この記事では、お口の潤いという一見単純な要素が、いかにして口腔内微生物の複雑な連鎖反応を引き起こし、治りにくい口内炎に繋がるのかを解き明かします。なぜそれが起こるのか、菌たちがどのように協力し合うのか、そしてなぜ一般的なアプローチでは不十分なのかを探っていきましょう。

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1. 真の犯人は「加齢」よりも「お口の乾燥」だった

口内炎の一種である「口腔カンジダ症」は、年齢とともにリスクが高まると考えられてきました。実際、ある研究では64.5歳が発症を予測する一つの目安とされています。

しかし、最新の研究で、年齢そのものよりもはるかに強力な予測因子が特定されました。それは「唾液の減少」、特に安静時の唾液流量の低下です。

唾液には、お口の中の細菌や汚れを洗い流す「自浄作用」や、病原菌の活動を抑える「抗菌作用」といった重要な役割があります。この唾液が減ってしまう状態、つまり口腔乾燥(ドライマウス)になると、カンジダ菌のような常在菌が異常に増殖しやすい環境が生まれてしまうのです。

なぜこの事実が重要なのか? それは、「もう年だから仕方ない」と諦める必要がないことを示しているからです。年齢に関わらず、意識的にお口の潤いを保つこと。それが、繰り返す口内炎を予防するための新しい鍵となるのです。

2. 「しっかり歯磨きしているから大丈夫」という思い込みは危険

「お口の中にカビ(カンジダ菌)が増えるのは、不潔にしているからだ」というイメージをお持ちではないでしょうか。もちろん口腔衛生は大切ですが、それだけが原因とは限りません。

ある研究では、口内炎とカンジダ症を併発している患者と、そうでない患者との間で、口腔衛生状態(歯磨きのレベル)に統計的な差は見られませんでした。驚くべきことに、調査対象となった口内炎患者の90%以上が「普通」から「良好」な口腔衛生状態を保っていたのです。

この事実は「歯磨きが無駄」という意味では決してありません。むしろ、「丁寧な歯磨きだけでは防ぎきれない要因がある」ことを示唆しています。このことは、問題が単に歯垢を取り除くことだけでなく、口腔環境全体の根本的なバランスにあることを示唆しています。

口内炎に悩んでいる方は、ご自身のセルフケアを責めるのではなく、唾液の量や全身の体調、免疫状態といった他の要因にも目を向けてみることが大切です。

3. 症状が「痛くない」からこそ注意が必要な口内炎

「感染症が加われば、口内炎はもっと痛くなるはずだ」と考えるのが一般的でしょう。しかし、ここにも意外な事実が隠されています。

研究によると、カンジダ症を併発している口内炎患者とそうでない患者とで、痛みの強さ(VASスコア)に統計的な差は認められませんでした

さらに、入れ歯(義歯)の下にできる「義歯性口内炎」は、痛みなどの自覚症状がないまま静かに進行することも報告されています。赤くなっているだけで痛みがないため、問題ないと自己判断してしまうケースも少なくありません。

この事実から学ぶべき教訓 痛みがないからといって放置せず、お口の中に気になる赤みやただれ、違和感がある場合は、専門家に見せることが非常に重要です。痛みは、必ずしも問題の深刻さを示すサインではないのです。定期的な歯科検診が、こうした静かなトラブルの早期発見に繋がります。

4. 悪さをするのは一種類の菌だけじゃない!口内フローラの「チームワーク」

これまで、お口のトラブルは特定の「悪玉菌」一つが原因だと考えられがちでした。いわば、「一つの病気には、一つの悪い菌」というモデルです。

しかし、特に高齢者の入れ歯の下にできる「義歯性口内炎」に関する最新の研究は、この考え方に変革をもたらしました。現代の科学が明らかにしたのは、単一の菌だけでなく、口腔内全体の微生物コミュニティのバランスが崩れる「ディスバイオシス(dysbiosis)」こそが問題の核心だということです。

具体的には、カンジダ菌が特定の細菌(例えば、ストレプトコッカス属やアクチノマイセス属など)と協力し合うことで、より強力なバイオフィルム(菌が作り出す膜)を形成し、病原性を高めることが分かっています。菌同士が「チーム」を組んで、悪さをしているのです。

この義歯性口内炎の研究は、口内炎の予防や改善が、特定の菌を殺菌することだけを目指す「細菌との戦争」ではなく、口内フローラ全体のバランスを健康に保つという、より広い「生態系の管理」という視点が必要であることを示す、強力な一例と言えるでしょう。

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今回ご紹介した4つの新常識は、口内炎に対する私たちの理解を根本から覆すものです。これらを統合すると、一つの新しい物語が見えてきます。

まず、唾液の減少(新常識①)が、お口の中の防御システムを弱め、トラブルの舞台を整えます。この脆弱になった環境では、丁寧な歯磨きだけでは防ぎきれない(新常識②)問題が進行します。そしてその舞台裏では、カンジダ菌を含む多様な微生物が複雑に協力し合う「ディスバイオシス」というミクロのドラマ(新常識④)が繰り広げられているのです。しかも、この深刻な状態は必ずしも強い痛みを伴わない(新常識③)ため、気づかぬうちに進行する可能性すらあります。

口内炎との付き合い方は、特定の「悪玉菌」を叩く殺菌中心の「局地戦」から、口腔内フローラ全体のバランスを育む「生態系マネジメント」へと、その考え方を大きく転換する必要があるのです。

あなたの口内炎、本当の原因は何だと思いますか?この記事をきっかけに、ご自身のお口の健康について、少し違う角度から見直してみてはいかがでしょうか。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)



引用)
Manzoor, M., Pussinen, P. J., Saarela, R. K. T., Hiltunen, K., & Mäntylä, P. (2025). Metagenomic analysis of the denture-associated oral microbiome in patients with denture stomatitis. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-025-16915-4

Lee, Y.-H., Seo, S., Kim, T.-S., & Lee, S.-W. (2025). Oral Candidiasis Associated with Aging and Salivary Hypofunction in Stomatitis Patients. Journal of Fungi, 11, 574. https://doi.org/10.3390/jof11080574

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医