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オーラルフレイル

院長のとっておきの話 その3 まるで別人?「口の衰え」が健康寿命を縮める、知られざる5つの真実

長生きの「質」を左右する、見過ごされたサイン

「いつまでも健康で、元気に長生きしたい」。これは、誰もが抱く共通の願いではないでしょうか。しかし、ただ寿命が長いだけでなく、誰かの助けを借りずに自立して生活できる期間、すなわち「健康寿命」をいかに延ばすかが、人生の質を大きく左右します。

実は、多くの人が気づかないうちに、その大切な健康寿命を脅かす「ある体のサイン」が存在します。それは「オーラルフレイル(口の衰え)」です。これは単なる歯の数の問題ではありません。日本の最新研究から、このオーラルフレイルが、あなたが自立して元気に過ごせる時間を1年以上も縮めてしまう強力な予兆であることが明らかになったのです。これから、あなたの未来を変えるかもしれない、知られざる5つの真実を解説します。

1. 高齢者の4割が該当?「オーラルフレイル」は決して他人事ではない

「自分はまだ大丈夫」と思っていませんか?しかし、日本の老年医学会、老年歯科学会、サルコペニア・フレイル学会という3つの主要学会によるコンセンサス声明は、地域在住の高齢者の約4割がオーラルフレイルに該当すると報告しています。これは決して一部の人の問題ではなく、非常に身近な健康課題なのです。

オーラルフレイルとは、単に歯が少なくなることだけを指すのではありません。硬いものが噛みにくくなる、お茶や汁物でむせる、滑舌が悪くなるといった、口の機能が複合的に衰える状態のことです。しかし、最も重要なのは、これが加齢による避けられない衰えとは異なるという点です。オーラルフレイルは、健康な口の状態と機能低下との間に位置する「重大ではあるものの、適切な介入によって回復可能な中間段階」なのです。だからこそ、早期に気づき、対処することが何よりも重要なのです。

2. じつは深刻。健康寿命が1年以上も短くなるという衝撃

では、この口の衰えが具体的にどれほど深刻な影響を及ぼすのでしょうか。日本人高齢者11,000人以上を対象とした6年間にわたる前向きコホート研究が、その衝撃的な現実を明らかにしました。

この研究によると、65歳の時点でオーラルフレイルの状態にある人は、そうでない人に比べて健康寿命が大幅に短くなることが判明したのです。具体的には、男性で約1.43年、女性で約1.13年も健康寿命が短くなるという結果でした。

さらに、オーラルフレイルの人は、健康な状態から要介護状態へ移行するリスクが1.23倍、死亡に至るリスクが1.34倍も高まることが示されました。口の健康は、私たちが思う以上に、全身の健康と、そして自立した生活と深く結びついているのです。

3. 逆転の鍵は「歯医者さん」?たった一つの習慣で健康寿命が約1年延びる

では、この口の衰えに対して、私たちは何ができるのでしょうか。先ほどの研究から、非常に希望の持てる、そして今日からでも始められる具体的な対策が示されました。

それは、「過去6ヶ月以内に歯科受診をした人は、オーラルフレイルの状態にかかわらず、受診しなかった人と比べて健康寿命が約1年長かった」という驚きの発見です。

この結果は、歯科受診が単なる「治療」の場ではないことを浮き彫りにします。それは、未来の健康を守るための極めて重要な「予防的ケア」なのです。

定期的な検診は、虫歯や歯周病だけでなく、自分では気づきにくい口の機能のわずかな低下を早期に発見する機会となります。さらに、口の中に現れる全身疾患のサインを管理したり、全身の健康悪化につながりかねない感染症を防いだりすることで、結果として自立した健康な生活を守ることにつながるのです。

4. 口の衰えは全身の衰えへ。危険な「負の連鎖」の正体

なぜ、たかが口の衰えが、健康寿命を1年以上も縮めてしまうのでしょうか。その背景には、口から始まる、心身の衰弱を加速させる「負の連鎖」のメカニズムがあります。

  • 栄養不足 噛む力や飲み込む力が衰えると、肉や野菜のような繊維質の多い食品を避けがちになり、柔らかく食べやすいものに食事が偏ります。その結果、筋肉や骨の維持に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルが不足し、低栄養状態に陥りやすくなります。
  • 身体的衰弱(フレイル・サルコペニア) 低栄養は、全身の筋肉量が減少し、筋力が低下する「サルコペニア」を引き起こします。これにより、歩く、立ち上がるといった日常の動作が困難になり、転倒のリスクも高まります。これが、全身の虚弱である「フレイル」へとつながっていきます。
  • 社会的孤立 滑舌が悪くなると、人と話すのが億劫になります。また、食事をうまく楽しめなくなることで、友人や家族との会食の機会も減りがちです。このようなコミュニケーションや社会参加の機会の減少は、社会的な孤立を深め、認知機能の低下やうつ状態を招く原因にもなります。

これら3つの要素は互いに影響し合い、雪だるま式に心身の衰えを加速させてしまうのです。これは単なる理論ではありません。2024年の研究では、オーラルフレイルがまさに「食の多様性の低下」と「社会的な孤立」という経路を経て、間接的に全身のフレイル(身体的衰弱)を引き起こすことが確認されており、この危険な連鎖が現実であることが証明されています。

5. あなたもチェック!「口の衰え」は改善できるサイン

オーラルフレイルは、専門家でなくても気づくことができるサインです。日本の老年医学会、老年歯科学会、サルコペニア・フレイル学会の合同ワーキンググループによって開発された、信頼性の高いセルフチェックリスト(OF-5)を使って、ご自身やご家族の状態を確認してみましょう。

【オーラルフレイル 5項目チェックリスト】

以下の5つの質問のうち、2つ以上当てはまったら要注意です。

  • 歯の数: 自分の歯が19本以下である。
  • 噛む力: 半年前に比べて、硬いものが食べにくくなった。
  • 飲み込み: お茶や汁物でむせることがある。
  • 口の渇き: 口の中が乾きやすいと感じる。
  • 滑舌: 言葉をはっきりと発音しにくいことがある。

このチェックリストは、オーラルフレイルの危険性を手軽に把握するためのものです。そして最も重要なことは、オーラルフレイルは「改善できる」状態だということです。もし当てはまる項目があれば、それは未来の健康を守るための大切な「気づき」のサイン。気づいた今こそ、対処を始める絶好の機会です。

結論:未来の自分への最高の投資は、口の健康を見直すこと

今回解説した5つの真実を振り返ってみましょう。

  1. 高齢者の約4割が「オーラルフレイル」に該当する身近な問題であること。
  2. オーラルフレイルは健康寿命を1年以上も縮める可能性があること。
  3. 定期的な歯科受診という習慣が、健康寿命を約1年延ばす可能性があること。
  4. 口の衰えは、栄養不足・身体衰弱・社会的孤立という「負の連鎖」を引き起こすこと。
  5. 簡単なセルフチェックで気づくことができ、そして改善が可能であること。

口の健康に関心を持つことは、もはや歯を守るためだけではありません。それは、自立した生活を守り、人生の質を高めるための、未来の自分への「最高の自己投資」です。

あなたの次の歯科検診は、もはや単なる歯の治療ではありません。未来の健康と自立した生活への、最も確実な投資です。今すぐ、その予約を入れてみませんか?

こちら↓はまとめ動画です。

引用元)Khairinisa S, Kiuchi S, Matsuyama Y, Iwasaki M, Aida J. Oral Frailty, Dental Visits, and Healthy Life Expectancy: A 6-Year Prospective Cohort Among Japanese Older Adults. Geriatr Gerontol Int. 2025 Oct 21. doi: 10.1111/ggi.70230. Epub ahead of print. PMID: 41117508.

Tanaka T, Hirano H, Ikebe K, Ueda T, Iwasaki M, Minakuchi S, Arai H, Akishita M, Kozaki K, Iijima K. Consensus statement on “Oral frailty” from the Japan Geriatrics Society, the Japanese Society of Gerodontology, and the Japanese Association on Sarcopenia and Frailty. Geriatr Gerontol Int. 2024 Nov;24(11):1111-1119. doi: 10.1111/ggi.14980. Epub 2024 Oct 7. PMID: 39375858; PMCID: PMC11843523.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医