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院長ブログ

文明の利器と経験と直感

左下の奥歯が痛む、その歯の神経を残したい、神経温存療法は可能ですか? と来院された方です。「かみ合わせの調整を毎回してもらっていたけど、いまいち良くならなかった」「部分的にかぶせ直しをしたけど、やはり時々おかしい気がする」「いつも検査してもらうけどX線では異常なしと言われる」大体、こういうパターンなっていると思います。神経温存療法の適応なのかどうか、まずはX線写真で全体を調べてみます。

どの歯が問題の歯なのかと言いますと、

この歯(赤丸)です。もう少し詳細なX線写真を撮影してみます。

深いむし歯治療の痕跡があります。果たして歯の内部の神経や血管は治療をして温存できる範囲にあるのでしょうか?

どうもこの辺り(赤矢印)の写り方がおかしく感じます。

やはり、これらのX線写真では異常ありと確定するのは難しく、これまでの経緯で経過をみましょうというのも間違っているとは言えないと思います。

しかし、なんとなくのおかしさを感じた違和感というのを明らかにしたので説明していきましょう。

CT撮影を行い3次元的に観察してみますと、異常が明らかになりました。


歯の内部に感染が波及して、骨の密度が減っています。

おそらく神経や血管は残っていないので、温存する対象物も無いということになるでしょう。

 

下の奥歯の場合、外側(頬側)に非常に分厚い骨がある(赤矢印)ので、中の状態がカムフラージュされてしまうことがあり、通常のX線写真では骨の中の問題が見逃されてしまうことがあります。

詳細な診断が可能となるデンタルX線写真においての盲点が存在することがあるということです。

私自身、何度かこのようなCT画像診断の経験をしていると、通常のX線像からなんとなく直感的におかしさを感じたりするもので、やっぱりかという感じです。

「そんなに周り道をするなら、最初からCT撮影すればいいじゃないですか!?」 
確かに結果から見ればそうなのですが、保険治療ではCT撮影できる条件が定められているので、最初から撮影出来ません。また他のX線写真に比較して、CTの弱点もあるのでどちらにしても最初にCTを撮影することはなく今回のように順を追っていくようになります。

今回はCTにて周囲の骨の異常が明らかにわかったので判断しやすかったのですが、CTでも異常が見られないケースもありますから、CTが万能と早合点しないようにご注意ください。画像だけでなく総合的に診断していくこと、場合によってはその時点で判断できず経過を見ながら判断せざるを得ないこともあります。

さて、問題点を検出することが出来ましたら、治療を行います。この場合は根管治療を行い、かぶせ物をすることになります。

がしかし、ここでまた問題が発生します。根管治療をしたとしてその治療後の骨の回復の判定をするのは一般的にこの写真で判定します。

カムフラージュされたX線写真で適切に効果判定は出来るのでしょうか? という問題が起きます。骨の内部は細胞レベルで治癒しているのか、していないのか、どういう変化をしているのか、それを調べられるのはCTになりますが、保険診療ではCTによる治療後の判定は許容されていないというのが現実です(2022年)。

以上、ある程度核心をついたことは書けますが、なにしろブログでは医療広告規制法により書けないことの方が圧倒的に多いので、どういう風に治していく行くのかとか治療例とか気になることがありましたら来院された時に直接お聞きになって下さい。