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院長のとっておきの話 その84 夜中の歯ぎしり… ストレスだけじゃない?見過ごされがちな3つの栄養素 【アドバンス】

朝、目が覚めたときに顎がだるかったり、原因のわからない頭痛がしたりすることはありませんか?あるいは、一緒に寝ているパートナーから「夜中に歯ぎしりをしているよ」と指摘された経験があるかもしれません。多くの方が、歯ぎしり(ブラキシズム)の主な原因は「ストレス」だと考えています。もちろん、それは大きな要因の一つです。

しかし、近年の研究では、ストレスと歯ぎしりの間には、もっと深く、意外な関係があることがわかってきました。それは、特定の「栄養素の不足」が、歯ぎしりを引き起こし、悪化させる可能性があるということです。ストレスによって体内の重要な栄養素が消費され、その栄養素が不足することで、さらに体がストレスに弱くなる…この記事では、この「悪循環」の正体と、それに関わる3つの重要な栄養素について、わかりやすく解説していきます。

ご自身の体からのサインを正しく理解し、根本的な解決への一歩を踏み出すための知識となれば幸いです。

1. ビタミンD:睡眠中の歯ぎしりと「太陽のビタミン」の深い関係

最近の研究で、ビタミンDの不足と睡眠中の歯ぎしりとの間に、非常に強い関連があることが示されています。ある研究では、歯ぎしりに悩む患者さんのうち実に60%がビタミンD不足でしたが、歯ぎしりのない対照群ではその割合は34%に留まりました。

さらに、体内のビタミンDレベルが低くなるほど、歯ぎしりの重症度が増す傾向があることもわかっています。ビタミンDには、主に2つの重要な役割があります。

  • 脳の神経細胞を保護する(神経保護作用):これは、慢性的なストレスが引き起こす物理的なダメージから脳細胞を守る「盾」のような働きだと考えてください。
  • 筋肉の正常な機能に不可欠なカルシウムの吸収を助ける:ビタミンDが不足すると、カルシウムがうまく吸収されず、筋肉は過敏になり、けいれんやこむら返りを起こしやすくなります。これが顎の筋肉で起こることが、無意識のうちの歯ぎしりにつながるのではないかと考えられているのです。

そして、ビタミンDが整える神経と筋肉の働きを、別の角度から支えるのが「リラックスミネラル」と呼ばれるマグネシウムです。

2. マグネシウム:「リラックスミネラル」が心と顎を落ち着かせる

マグネシウムは、私たちの神経系を落ち着かせ、心身をリラックスさせるために不可欠なミネラルです。このマグネシウムが不足すると、以下のような、歯ぎしりに悩む方に共通してみられる症状が現れやすくなります。

  • 神経や筋肉の過敏性(ピクつきなど)
  • 頭痛
  • 全般的な不安感

マグネシウムは、ストレスを感じたときに活性化する体の主要なストレス応答システム(HPA軸)の働きを抑制するのを助けます。つまり、体がストレスに対して過剰に反応するのを防ぐブレーキのような役割を果たしているのです。ストレスを感じると体はこの「リラックスミネラル」を大量に消費するため、悪循環のサイクルが特に回りやすくなります。

マグネシウムが不足すると、体はストレスに対するブレーキを失ってしまいます。

マグネシウムが不足すると、神経は過敏になり、ストレスに対する体の抵抗力が弱まってしまいます。それはまるで、体のアクセルが常にオンになったままで、心と筋肉の緊張が解けにくい状態に似ています。

3. オメガ3脂肪酸:ストレスに負けない「脳の栄養」

オメガ3脂肪酸は、ビタミンDのように歯ぎしりと直接的な関連が示されているわけではありません。しかし、歯ぎしりの根本原因である「ストレス」と、それが脳に与えるダメージを管理する上で、極めて重要な役割を果たします。

慢性的なストレスは、脳内で炎症を引き起こし、「海馬」のような重要な領域にダメージを与えることがあります。海馬は、体のストレス応答(HPA軸)を停止させる司令塔として機能する部分です。オメガ3脂肪酸には、こうした炎症から脳を保護し、ダメージを防ぐ働きがあります。実際、動物実験では、この重要な脂肪酸が不足するだけで、副腎が活性化され、慢性ストレスによって引き起こされるのとほぼ同じホルモンや神経の乱れが生じることが示されています。

また、歯ぎしりが女性に多い(約5:1の割合)一因として、女性は男性に比べて脳がストレスの影響を受けやすい可能性が示唆されています。これは、女性が海馬や扁桃体といった重要な領域に、ストレス下で炎症を引き起こす可能性のある脳の免疫細胞「ミクログリア」をより多く持っているためかもしれません。オメガ3脂肪酸はこれらの細胞の働きを調整するため、重要な保護機能を提供してくれる可能性があります。

ストレスと栄養不足の悪循環

ここで重要なのが、ストレスと栄養不足が「悪循環」を生み出すという点です。これを理解することが、歯ぎしり対策の鍵となります。

まず、強いストレスを感じると、私たちの体はビタミンDやマグネシウムといった重要な栄養素を通常より速いペースで消費してしまいます。そして、これらの栄養素が不足すると、今度は体がストレスにうまく対処できなくなり、不安や緊張をより強く感じるようになります。このサイクルが、絶え間ない心身の緊張状態と、それに伴う歯ぎしりを生み出してしまうのです。

まとめ:今日からできること

歯ぎしりは、単なる口元の癖ではなく、ストレスと栄養状態の両方に関わる、あなたの体からの「実行可能な情報(Actionable Intelligence)」です。この記事で得た知識は、ご自身の体を包括的に理解し、より生産的な対話を医師と行うための強力なツールとなります。

この記事は、特定の栄養素の摂取を推奨するものではありません。サプリメントなどを検討する前には、必ずかかりつけの医師や歯科医師に相談し、ご自身の状態について話し合うようにしてください。専門家は、あなたの全体的な健康状態を考慮した上で、最適なアドバイスを提供してくれます。

最後に、少しだけご自身のことを振り返ってみてください。

「あなたの体は、日々のストレスと戦うための栄養素を十分に持っていますか?」


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Pavlou IA, Spandidos DA, Zoumpourlis V, Adamaki M. Nutrient insufficiencies and deficiencies involved in the pathogenesis of bruxism (Review). Exp Ther Med. 2023 Oct 19;26(6):563. doi: 10.3892/etm.2023.12262. PMID: 37954114; PMCID: PMC10632959.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医