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院長のとっておきの話 その51 歯ぎしり治療の意外な真実!ボツリヌス治療でわかる5つの驚き

あなたのその悩み、もしかして歯ぎしりが原因?

朝起きたときの顎のだるさ、原因がはっきりしない頭痛、マッサージを受けてもなかなか取れない肩こり…。もしあなたがこんな悩みを抱えているなら、その原因は意外なところにあるのかもしれません。

実は、これらの不調の陰に「歯ぎしり」や日中の「食いしばり」が隠れているケースは少なくありません。歯ぎしりは非常に一般的なもので、ある研究によれば成人の最大22%が世界中で経験しているとされています。多くの人が無意識に行っているこの癖が、知らず知らずのうちに体に大きな負担をかけているのです。

この記事では、そんな歯ぎしり・食いしばりの治療法の一つである「ボツリヌス治療」について、最近の科学的研究から明らかになった5つの意外な事実をご紹介します。科学が教えてくれる驚きの真実を知ることで、あなたの長年の悩みへの新しいアプローチが見つかるかもしれません。

ボツリヌス治療、実は女性の方が効果が出やすい?

最初の驚きは、ボツリヌス治療の効果に男女差が見られるという点です。

ある研究によると、治療前の顎の筋肉の活動量(筋電図の振幅)には、男女で大きな差はありませんでした。しかし、ボツリヌス治療を行った後の筋肉活動の「減少率」を比較すると、女性の方が男性よりも有意に高いことがわかったのです。

具体的には、筋肉活動の減少率は女性で66.9%だったのに対し、男性では61.1%でした。これは、治療に対する反応性が生物学的な性差によって影響を受ける可能性を示唆しており、非常に興味深い発見です。

また、関連する症状として、首や肩のこりを訴えるレベルは、治療の前後を問わず女性の方が男性よりも著しく高いことも報告されています。このことからも、歯ぎしりに関連する症状の経験の仕方に、男女で違いがあることがうかがえます。

年齢で効果が変わる?若い人より治療効果が高いという逆説

一般的に、噛む力や顎の筋肉の活動量は、若い人ほど強く、年齢とともに自然に低下していくと考えられています。そのため、治療効果も若い人の方が出やすいのではないか、と直感的に思うかもしれません。

しかし、研究が明らかにしたのは、その逆説的な事実でした。特に「噛む力」に関しては、もともとの力が弱いにもかかわらず、高齢の患者さんの方が、ボツリヌス治療による「減少率」が大きかったのです。

一方で、筋肉の活動量(筋電図)の減少率については、データはより複雑です。ある分析では年齢による差は見られなかったものの、別の分析では年齢が高いほど減少率が大きいという相関関係が示されました。これは、治療の効果が単なる筋肉の強さだけで決まるわけではなく、年齢によって変化する筋肉の性質や神経毒との相互作用が複雑に関わっていることを示唆しています。科学がまだ解明の途上にある、興味深い領域です。

症状が重い人ほど、治療の恩恵が大きい

ボツリヌス治療は、誰にでも同じように効くわけではありません。研究によると、この治療法が最も大きな効果を発揮するのは、治療を始める前の時点で、筋肉の緊張やこわばりが最も強い患者さんでした。

症状が重い患者さんほど、治療による改善効果はより顕著で、その効果が長期間持続する傾向が見られたのです。反対に、症状が比較的軽かった患者さんでは、効果はそれほど大きくなく、持続期間も短い傾向にありました。

この事実は、ボツリヌス治療が万能薬ではなく、他の治療法(マウスピースなど)で改善が見られなかった重度の歯ぎしり・食いしばりに悩む人にとって、特に強力で的を絞った選択肢となることを示しています。

歯ぎしりの影響は口だけじゃない!肩こり・頭痛との深い関係

歯ぎしりの影響は、歯や顎だけにとどまりません。多くの研究が、歯ぎしりが肩こり、首のこり、そして緊張型頭痛といった二次的な症状と深く関連していることを示しています。

そして、顎の筋肉(咬筋)へのボツリヌス治療が、これらの全身症状の軽減にもつながることがわかってきました。特に注目すべきは、「頭痛の減少率」と「肩こりの減少率」の間に正の相関関係が見られたことです。これは、肩こりが改善するにつれて、頭痛も一緒に改善する傾向があることを意味します。

さらに、治療前の筋肉の活動量が多く、睡眠の質が低い患者さんほど、治療によってより大きな恩恵を受ける傾向があることも報告されています。顎の緊張を和らげることが、全身の健康や睡眠の質にも良い影響を与える可能性を示唆しています。最近の研究では、こうした全身の症状と心理的なストレスとの関連も指摘されており、顎の緊張が心と体の両方に影響を与えることが示唆されています。

治療後に「噛む力」が強くなることがある?

これが最も驚くべき、そして直感に反する発見かもしれません。通常、ボツリヌス治療は筋肉の力を弱めることで効果を発揮しますが、一部の患者さんでは、治療後に最大で噛む力が「増加」するという予想外の結果が見られました。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?研究者たちは、その理由を次のように推測しています。治療前、これらの患者さんは強い筋肉の痛み 때문에、測定時に本来の力で噛むことができませんでした。しかし、治療によって痛みが和らいだことで、初めて痛みなく全力で噛むことができるようになり、結果として治療前よりも高い数値が記録された、というわけです。

この発見は、痛みが筋肉の機能にどれほど複雑な影響を与えているかを浮き彫りにしています。治療の目的は単に力を弱めることではなく、痛みをコントロールし、筋肉の正常な機能を取り戻すことにあるのかもしれません。

あなたの歯ぎしり、個別のアプローチが必要です

ここまで見てきたように、歯ぎしりの影響やボツリヌス治療の効果は、年齢、性別、症状の重さといった要因によって大きく異なります。万人に当てはまる「一つの正解」はないのです。

ボツリヌス治療は、特に症状が重い場合に検討される専門的なアプローチですが、その効果を最大限に引き出すためには、一人ひとりの状態に合わせた「オーダーメイド」の視点が不可欠です。

あなたの長年の頭痛や肩こり、もしかしたら顎の緊張と関係があるかもしれません。一度、全体的な視点からご自身の体を見直してみませんか?



【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Coelho MS, Oliveira JMD, Polmann H, Pauletto P, Stefani CM, Maciel LCL, Canto GL. Botulinum Toxin for Bruxism: An Overview. Toxins (Basel). 2025 May 16;17(5):249. doi: 10.3390/toxins17050249. PMID: 40423331; PMCID: PMC12115368.

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Matusz K, Drużdż A, Górna N, Glapiński M, Gałczyńska-Rusin M, Czajka-Jakubowska A, Michalak M, Przystańska A. Functional Effects of BoNT-A Application in Masseter Muscle in Patients with Symptoms of Bruxism. Toxins (Basel). 2025 Oct 31;17(11):540. doi: 10.3390/toxins17110540. PMID: 41295855; PMCID: PMC12655946.

Hamad SA, Ahmed O, Alraad A. Effect of Botulinum Toxin Injection into the Masseter Muscle in Patients with Bruxism: A single-arm, Institutional-Based Prospective Clinical Study. J Clin Exp Dent. 2025 Mar 1;17(3):e268-e272. doi: 10.4317/jced.62496. PMID: 40231137; PMCID: PMC11994210.

Furuhata A, Yoshida K, Isono S. Factors Influencing the Effectiveness of Botulinum Toxin Therapy in Bruxism Management. Toxins (Basel). 2025 Jul 31;17(8):384. doi: 10.3390/toxins17080384. PMID: 40864060; PMCID: PMC12389857.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医