来院者専用ブログ

慢性炎症/歯周病/根尖病変/口腔がん

院長のとっておきの話 その21 驚きの事実!歯の根の治療が、あなたの血糖値とコレステロールを改善させるかもしれない理由

皆さんは「歯の根の治療」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?多くの方は、ひどくなった虫歯の治療、という印象かもしれません。専門的には「根管治療」と呼ばれるこの治療は、単なる応急処置ではありません。歯の根の先で細菌が繁殖し、慢性的な炎症が起こる「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」という病気を治すための、非常に重要な治療なのです。

「たかが歯1本の問題でしょう?」と思われるかもしれません。しかし、実はその歯の根の炎症が、血流に乗って全身に広がり、心臓病や糖尿病といった生活習慣病のリスクを高める可能性があることが、最新の研究(Zhang et al., 2025)で示されました。

この記事では、その研究から明らかになった「根管治療がもたらす予想外の4つの健康効果」について、分かりやすく解説していきます。

健康効果①:血糖値コントロールの改善(長期的な効果)

成功した根管治療がもたらす最も重要な長期的効果の一つが、血糖値のコントロール改善です。

研究によると、根管治療が成功した患者さんの血液を2年後に調べたところ、「グルコース(ブドウ糖)」と「ピルビン酸」という物質のレベルが、治療前と比べて有意に低下していたことが分かりました。

これは何を意味するのでしょうか?実は、高血糖と全身の炎症には「互いを悪化させ合う悪循環」の関係があります。根尖性歯周炎による慢性的な炎症は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の効きを悪くする「インスリン抵抗性」を引き起こし、血糖値を上げやすくします。そして、上がった血糖値は、さらに体内の炎症を悪化させてしまうのです。

根管治療で炎症の原因である歯の根の感染を取り除くことは、この悪循環を断ち切る重要な一歩となります。体全体の代謝バランスが整い、長期的には糖尿病のリスクを低減させる可能性を示唆する、非常にポジティブな変化なのです。

健康効果②:脂質代謝の改善(短期的な効果)

根管治療は、短期的に脂質(体内の脂肪)の代謝にも良い影響を与える可能性が示唆されています。

同じ研究では、治療後3ヶ月から6ヶ月の時点で、血液中の「コレステロール」と「脂肪酸」のレベルが有意に低下したことが報告されています。また、統計的に有意とまでは言えませんが、「中性脂肪」にも3ヶ月の時点で減少する傾向が見られました。

この結果は、歯の根の感染源を取り除くという歯科治療が、短期的にコレステロール値などに好ましい変化をもたらす可能性を示唆したものです。これは、心血管疾患(心臓病や動脈硬化など)のリスクを減らす上での潜在的なメリットがあることを意味しています。

健康効果③:全身の炎症レベル低下のサイン

根管治療によって、体全体の炎症レベルが低下したことを示す客観的なサインも確認されています。

その指標となるのが、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」という物質です。これは、慢性的な炎症や生活習慣病と関連があるとされる物質だと考えてください。

研究では、このBCAAの血中レベルが、治療後わずか3ヶ月で有意に減少したことが示されました。この発見は非常に興味深く、歯の治療が口の中という局所的な問題だけでなく、体全体の炎症状態を鎮める効果があることの客観的な証拠と言えます。つまり、あなたの体の負担が確実に軽減されているサインなのです。

健康効果④:体を守るアミノ酸「トリプトファン」の急増

最後に、体を守る働きを持つ特定の物質が増加するという、非常に興味深い発見をご紹介します。

その物質とは、「トリプトファン」というアミノ酸です。トリプトファンは、体を守る上で重要な役割を果たす物質であり、これが不足すると心血管疾患による死亡リスクなどと関連することが、他の研究でも示されています。

今回の研究で最も驚くべき結果の一つは、根管治療が成功した後、このトリプトファンの血中レベルが「継続的かつ大幅に増加し、2年後には治療前のほぼ2倍になった」ことです。

これは、全身の炎症が収まっただけでなく、将来の心血管疾患リスクが低減していることを強く示唆する、素晴らしい結果です。体が健康な状態へと回復し、自らを守る力を取り戻している強力な証拠と言えるでしょう。

結論:歯の治療は、未来の健康への投資です

歯の根に潜む隠れた炎症源を取り除くことで、あなたの体の代謝エンジンがリセットされ始めるのです。私たちはその証拠を、短期的な脂質の好ましい変化(健康効果②)や、長期的な血糖値コントロールの改善(健康効果①)に見ることができます。そして、その客観的な証拠として、全身の炎症マーカーが低下し(健康効果③)、体を守る物質が劇的に増加する(健康効果④)のです。

根管治療は、単に歯を1本救うだけの治療ではありません。それは、全身の健康状態を改善し、将来の大きな病気のリスクを減らすための「未来の健康への投資」なのです。

お口の健康が、これほどまでに全身の健康と深く結びついていることを考えると、次に鏡でご自身の歯を見るとき、少し見え方が変わってくるのではないでしょうか?

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Zhang Y, Le Guennec A, Pussinen P, Proctor G, Niazi SA. Successful endodontic treatment improves glucose and lipid metabolism: a longitudinal metabolomic study. J Transl Med. 2025 Nov 18;23(1):1195. doi: 10.1186/s12967-025-07110-0. PMID: 41250096; PMCID: PMC12625218.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医