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院長のとっておきの話 その45 「ヘルシー」だと思っていたのに…科学論文が警告する「超加工食品」の意外な落とし穴5選

はじめに:あなたの食卓にも潜む「超加工食品」
現代の食生活は、驚くほど便利になりました。忙しい日々の中で、私たちは手軽に栄養を摂ろうと、健康に「良さそう」な食品を意識して選んでいます。全粒粉のパン、低脂肪ヨーグルト、植物性の代替肉――これらは健康的な選択肢だと、多くの人が信じているでしょう。
しかし、もしこれらの食品が、最新の科学が警鐘を鳴らす「超加工食品(Ultra-Processed Foods, UPF)」に分類されるとしたら、どうでしょうか。超加工食品とは、単なる「ジャンクフード」だけを指す言葉ではありません。

この記事では、最新の科学的研究から明らかになった、多くの人が見過ごしがちな「超加工食品」に関する5つの意外な事実を、管理栄養士の視点から分かりやすく解説します。
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1. 「ヘルシーな超加工食品」でも体重は減りにくい

多くの人が健康のために選ぶ全粒粉パンやヨーグルト、植物性代替肉なども、その製造過程によっては「超加工食品」に分類されることがあります。これは最も意外な事実の一つかもしれません。
ある注目すべき臨床試験では、栄養成分(カロリー、脂質、糖質、食物繊維など)が厳密に一致するように作られた2種類の食事の比較が行われました。その結果、「健康的な食生活指針に従った超加工食品の食事」を摂ったグループは、「最低限の加工に留めた食品の食事」を摂ったグループに比べて、体重の減少効果が低いことが示されました。

さらに驚くべきことに、この「健康的な超加工食品」を摂取したグループは、便秘といった過敏性腸症候群(IBS)に似た症状をより多く報告したのです。この発見は、単なる一研究の結果にとどまりません。近年のレビュー論文(Dale, H.F. et al.)では、超加工食品の摂取が多いことと、診断された過敏性腸症候群(IBS)のリスクとの直接的な関連性を探る研究が増えていることが報告されています。
考察: この結果は、食品の健康への影響が、カロリーや栄養成分表示だけでは判断できないことを強く示唆しています。同じ栄養素でも、「加工の度合い」が私たちの消化や代謝、さらには腸の健康にまで、予想外の影響を与えうるのです。
なぜ「加工」そのものが問題なのか?共通するメカニズム

この記事で紹介する様々な健康問題の背景には、共通するいくつかのメカニズムが潜んでいると考えられています。それは、①腸内環境の乱れ(dysbiosis)、②腸のバリア機能の低下、そして③全身の慢性的な炎症です。超加工食品に含まれる特定の添加物や、製造過程で生まれる物質が、これらの問題を引き起こす主な要因とされています。続く項目では、この共通のメカニズムがどのようにして各健康リスクに繋がっていくのかを見ていきましょう。
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2. 子供の肥満、特に男の子に強く関連
超加工食品は、特に成長期の子どもたちの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。カナダの子供2,217人を対象とした大規模な追跡調査研究(CHILD Cohort Study)は、衝撃的な事実を明らかにしました。

この研究によると、調査対象となった3歳児の1日の総エネルギー摂取量のうち、実に45%が超加工食品に由来していました。
そして、3歳時点での超加工食品の摂取が多いほど、5歳時点での肥満リスクが高まることが示されました。特にこの関連は男の子で顕著でした。具体的には、男の子の食事において超加工食品の割合が10%増えるごとに、過体重または肥満になる確率が19%も上昇することが示されました(オッズ比1.19)。これには、男の子のBMI(体格指数)だけでなく、腹囲身長比や肩甲骨下・上腕三頭筋の皮下脂肪厚といった、より詳細な肥満指標も上昇していました。
対照的に、女の子では統計的に意味のある関連は見られませんでした。この性差がなぜ生じるのかはまだ解明されておらず、今後の研究が待たれる興味深い点です。
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3. 体だけでなく「心」にも影響?うつ病との関連
超加工食品の影響は、身体的な問題だけにとどまりません。近年の研究は、メンタルヘルスとの関連性も指摘しています。
複数の観察研究を統合・評価した包括的なレビュー(アンブレラレビュー)では、超加工食品の高い摂取が「うつ病」や「一般的な精神疾患」のリスク上昇と関連していることが、「非常に示唆的(highly suggestive)」なエビデンスとして報告されました。

考察: なぜ食事が心にまで影響するのでしょうか。ここで先ほどの共通メカニズムが関係してきます。超加工食品が引き起こす「慢性的な炎症」や「酸化ストレス」は、脳の機能にも影響を与えます。また、腸内環境の乱れは、幸福ホルモンとも呼ばれる「セロトニン」などの神経伝達物質の生成を妨げる可能性があります。私たちの腸と脳は密接に繋がっており(腸脳相関)、食事が心の健康を左右する重要な要素であるという視点が、ますます重要になっています。
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4. 喘鳴(ぜんめい)やアレルギーのリスクを高める可能性
子どもの喘息やアレルギー疾患の増加が世界的な問題となる中、その一因として食生活の変化が注目されています。
前述のアンブレラレビューでは、超加工食品の摂取と「子どもや青少年の喘鳴」との間には、「説得力のある(convincing)」レベルの強い関連性があると結論づけられました。
さらに、欧州アレルギー・臨床免疫学会(EAACI)のタスクフォースによる別のレビューでも、超加工食品が喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーのリスク増加と関連していると報告されています。
メカニズムの解説: なぜ超加工食品がアレルギーに関係するのでしょうか。その背景には、共通メカニズムが深く関わっています。

- 腸内環境の乱れ(マイクロバイオータの dysbiosis、つまり善玉菌が減り悪玉菌が優勢になる状態):乳化剤(カルボキシメチルセルロースなど)のような添加物が、腸内細菌のバランスを崩すことが指摘されています。
- 腸のバリア機能の低下:高温加熱処理によって生成されるAGEs(終末糖化産物)や一部の乳化剤は、腸の細胞同士の結合(タイトジャンクション)を緩め、腸壁を「漏れやすく」する可能性があります。
- 慢性的な炎症:腸のバリアが弱まると、アレルギーの原因となる物質や細菌の成分が体内に侵入しやすくなり、免疫系が過剰に反応して全身の慢性的な炎症を引き起こします。これが喘息やアレルギーの土台となりうるのです。
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5. 気づきにくい腎機能の低下リスク
これまで挙げてきた問題よりもさらに意外で、しかし静かに進行する深刻なリスクとして、腎機能への影響が挙げられます。
アンブレラレビューで報告された最も確信度の高い結果の一つが、超加工食品の摂取と「腎機能の低下」との関連性でした。この関連性は、喘鳴と同様に「説得力のある(convincing)」レベルだと評価されています。
考察: なぜこれが重要なのでしょうか。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能がかなり低下するまで自覚症状が出にくいという特徴があります。そして一度損なわれた機能は、回復が非常に困難です。うつ病やアレルギーの背景で触れた慢性的な炎症や酸化ストレスといったメカニズムが、腎臓のような繊細な臓器にもダメージを与えている可能性が考えられます。日々の何気ない食事が、気づかないうちに長期的な健康を蝕むリスクに繋がる可能性があるという、非常に重要な警告です。
このレビュー論文は、私たちの食生活に一石を投じる、次のような力強い一文で締めくくられています。

「現在までに、超加工食品の摂取と有益な健康転帰との関連を報告した研究は一つも存在しない。」
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おわりに:明日からできる小さな一歩

この記事では、科学論文が示す超加工食品の5つの意外な落とし穴を見てきました。
- 「ヘルシー」な超加工食品でさえ、体重管理を難しくし、腸の不調を招く可能性。
- 子どもの肥満リスク、特に男の子で強い関連性。
- うつ病などメンタルヘルスへの影響。
- 喘鳴やアレルギー疾患との関連。
- 自覚しにくい腎機能の低下リスク。
これらの事実を知って、不安に感じた方もいるかもしれません。しかし、絶望する必要はありません。「すべての加工食品が悪」というわけではありませんし、食生活を完璧にする必要もありません。
大切なのは、意識することから始める小さな一歩です。明日からできることを具体的に提案します。

- 食品の裏の原材料表示を見る習慣をつける:原材料リストが不自然に長いもの、家庭のキッチンにはないようなカタカナの成分(乳化剤、安定剤など)や異性化糖(果糖ぶどう糖液糖)が多く含まれるものは、超加工食品のサインです。
- 加工の少ない、素材に近い食品を一つでも食事に加える:いつもの菓子パンやシリアルバーを、リンゴ1個と無塩のナッツ一掴みに変えてみませんか?甘いヨーグルトの代わりに、無糖のプレーンヨーグルトに生のフルーツを加えてみましょう。こうした小さな置き換えが、大きな違いを生みます。

次にあなたが食品を手に取るとき、その「加工度」について少し考えてみませんか?その小さな意識が、あなたとあなたの大切な人の未来の健康を守る、大きな一歩になるはずです。


【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)
