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院長のとっておきの話 その58 食事だけが原因じゃない?血糖値と虫歯の意外な関係

「甘いものを食べると虫歯になる」。これは、誰もが知る虫歯予防の常識ですよね。私たちはこれまで、口から入る食事の糖分に注意を払ってきました。しかし、もしあなたが口にする食べ物以外にも、虫歯菌に栄養を与えている「隠れた砂糖」が体の中から湧き出ていたとしたら、どうでしょうか?

実はこれ、歯科科学における大きな発見なのです。長年、虫歯研究は口の中に入ってくる「外からの糖」にほぼ限定されていました。しかし最近、大阪大学の研究チームが、私たちの体の中にある「血糖値」と「虫歯」の間に、まったく新しい生物学的な経路が存在することを突き止めたのです。それは、体内の血糖が虫歯菌を直接育てるという「内からの糖」のルートでした。今回のブログでは、この画期的な研究に基づき、虫歯予防の新しい視点を分かりやすく解説していきます。

驚きの発見1:血糖値が高いと、血液中の糖が唾液に漏れ出て虫歯菌のエサになる

今回の研究で明らかになった、最も重要な発見がこちらです。

糖尿病などで血糖値が高い状態が続くと、血液中に含まれる「グルコース(ブドウ糖)」と「フルクトース(果糖)」という2種類の糖が、唾液を作り出す唾液腺を通り抜け、唾液の中に直接漏れ出てくる現象が確認されました。これは、食事で口から摂取する糖とは全く別のルートで、体の中から虫歯菌にエサが供給されることを意味します。

そして、この唾液に漏れ出た糖は、虫歯の主な原因菌であるミュータンス菌などにとって、格好のエサとなってしまいます。エサが豊富にあることで菌の活動は活発になり、歯を溶かす酸を大量に作り出すため、虫歯のリスクが著しく高まるのです。実際に研究では、この血液から唾液への「糖の移行」が多い人ほど、虫歯の数や歯垢(プラーク)の量が多い傾向にあることが示されました。

しかし、この漏れ出た糖の何がそれほど危険なのでしょうか?研究はさらに、ある特定の糖が特に問題を引き起こすことを明らかにしました。

驚きの発見2:特に「フルクトース(果糖)」が悪玉菌を増やすカギだった

血液から唾液に移行する糖の中でも、特に「フルクトース(果糖)」が、お口の環境を悪化させる重要なカギを握っていることが分かりました。

私たちの口の中は、様々な細菌が共存する「口腔マイクロバイオーム」という生態系になっています。ここには、虫歯の原因となるミュータンス菌のような「悪玉菌」と、お口の健康を守る働きをする「善玉菌」(例えば、虫歯予防に役立つとされるストレプトコッカス・サングイニス菌など)が常に存在しています。虫歯は、単に悪玉菌がいることではなく、この生態系のバランスが崩れること(専門的には「ディスバイオシス」と呼ばれます)で引き起こされる病気なのです。

研究によると、唾液中の「フルクトース」が増えると、このバランスが大きく崩れることが判明しました。漏れ出た大量のフルクトースは、悪玉菌であるミュータンス菌に競争上の優位性を与えてしまいます。これにより、悪玉菌が善玉菌を圧倒して増殖し、歯を守ってくれる善玉菌を隅に追いやってしまうのです。このようにお口の生態系が乱れることで、虫歯になりやすい危険な状態が作られてしまうことが明らかになりました。

驚きの発見3:血糖コントロールで、口内環境は改善できる

では、このやっかいな問題を解決する方法はないのでしょうか?ご安心ください。今回の研究では、希望の持てる事実も明らかになっています。

研究では、2型糖尿病の患者さんたちが2週間の集中血糖コントロール治療を受けました。その結果、血液から唾液への「フルクトース」の移行が大幅に減少したのです。

さらに素晴らしいことに、それに伴って口腔内の細菌バランスにも劇的な改善が見られました。具体的には、悪玉菌であるミュータンス菌が減少し、善玉菌であるサングイニス菌が増加したのです。

これは、適切な血糖管理が、食事制限や丁寧な歯磨きといった従来の虫歯予防に加えて、口内環境を根本から改善する非常に有効な戦略となり得ることを示しています。

まとめ:お口の健康は、全身の健康の鏡

今回の記事のポイントをまとめます。

  • 虫歯の原因は、私たちが口から食べる糖分だけではありませんでした。
  • 体内の血糖値が高くなると、血液中の糖が唾液に漏れ出し、虫歯菌の「隠れたエサ」になってしまいます。
  • 適切な血糖コントロールは、唾液への糖の移行を抑え、お口の生態系を健康なバランスに戻す可能性があります。

お口の健康は、全身の健康と密接に繋がっています。今回の研究は、全身の代謝コントロールが口内環境にどれほど重要かを具体的に証明した、初めての包括的な科学的証拠と言えるでしょう。つまり、「体内の代謝をコントロールすることが、口の中にいる虫歯菌を直接飢えさせることにつながる」という、確かな証拠が示されたのです。

あなたの笑顔を守るために、一度、全身の健康を見直してみませんか?

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Sakanaka A, Furuno M, Ishikawa A, Katakami N, Inoue M, Mayumi S, Kurita D, Nishizawa H, Omori K, Taya N, Isomura ET, Kudoh M, Takeuchi H, Amano A, Shimomura I, Fukusaki E, Kuboniwa M. Diabetes alters the supragingival microbiome through plasma-to-saliva migration of glucose and fructose. Microbiome. 2025 Dec 4. doi: 10.1186/s40168-025-02256-x. Epub ahead of print. PMID: 41345979.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医