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院長のとっておきの話 その68 その胃の不調、原因は「お口」かも?ピロリ菌と歯科の意外な関係

はじめに:胃だけの問題ではなかった?

「ピロリ菌」と聞くと、多くの人が胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となる「胃の菌」を思い浮かべるでしょう。これは、医学的な常識として広く知られています。

では、もし、そのピロリ菌が、あなたの「お口の中」にも潜んでいるとしたらどうでしょうか?

この記事は、単にピロリ菌の意外なすみかをご紹介するだけではありません。お口と胃は別々の器官ではなく、一つのつながった経路であるという新しい視点から、私たちの健康を捉え直す試みです。この理解は、今まさに歯科と消化器内科の垣根を越えた、新しい医療のあり方を示唆しています。

最新の科学的研究に基づき、ピロリ菌と口腔内の健康との驚くべき関連性と、それが全身の健康にとって何を意味するのかを、4つの重要なポイントにまとめて分かりやすく解説します。

ポイント1:ピロリ菌は、実はお口の中にも潜んでいる

ピロリ菌は胃に感染する菌として知られていますが、実はそれだけではありません。研究により、ピロリ菌は歯の表面に付着するネバネバした細菌の塊である「歯垢(デンタルプラーク)」や「唾液」といった口腔内からも検出されることが分かっています。

専門的には、口腔内がピロリ菌の「胃外の貯蔵庫(リザーバー)」として機能する可能性があると言われています。これはつまり、お口の中がピロリ菌にとって、胃から離れた安全な「隠れ家」や「すみか」になっているかもしれない、ということです。研究で使う検出方法の違いによって結果にばらつきがあるため、まだ議論が続いていますが、多くの研究がお口の中がピロリ菌の重要な「隠れ家」である可能性を支持しています。

ポイント2:口腔内のピロリ菌が、虫歯・歯周病・口臭と関連している

研究によると、口腔内に存在するピロリ菌は、歯周病、虫歯、そして口臭といった、私たちにとって非常に身近な口のトラブルと関連があることが示唆されています。

例えば、ある研究(Zaric et al., 2015)では、胃のピロリ菌を除菌する治療を行ったところ、口臭が大幅に改善したという結果が報告されました。

これは、お口の健康が単独の問題ではなく、体の他の部分、特に消化器系と密接に関わっていることを示す非常に興味深い証拠と言えるでしょう。

ポイント3:胃のピロリ菌が再発する「隠れた原因」は口かもしれない

胃のピロリ菌を除菌するために薬を飲んだにもかかわらず、治療がうまくいかなかったり、一度はいなくなったはずの菌が再び見つかったりするケースは少なくありません。

その「隠れた原因」の一つとして、口腔内に潜むピロリ菌が関わっている可能性が指摘されています。たとえ薬で胃の中のピロリ菌を完全に退治できたとしても、お口の中に菌が残っていれば、それが唾液と共に再び胃に運ばれ、再感染を引き起こしてしまうのです。

この事実は、ピロリ菌治療が胃の中だけを対象にするだけでは不十分であり、口腔内を含めた「包括的なアプローチ」がいかに重要であるかを物語っています。口腔内のピロリ菌は「治療の失敗や再感染の重要な原因となりうる」と考えられているのです。

ポイント4:歯周病治療が、胃のピロリ菌除去の成功率を高める

ここまでのポイントを踏まえると、最も重要で実践的なメッセージが見えてきます。それは、歯科治療、特に歯周病の治療が、胃のピロリ菌対策において極めて有効であるという事実です。

複数の研究(Ozturk, 2021; Bouziane et al., 2012)により、歯周病の治療を並行して行うことが、胃のピロリ菌除菌の成功率を大幅に向上させ、再発率を低下させることが示されています。

具体的なデータを見てみましょう。あるメタアナリシス(Ozturk, 2021)では、歯周病治療を併用することで、胃の除菌が成功する確率が4倍以上に跳ね上がり(専門的にはオッズ比4.11と報告)、再発のリスクは5分の1以下に激減したのです(同オッズ比5.36)。

これは、歯科治療が単にお口の健康問題にとどまらず、これまで内科の領域と考えられてきた胃の疾患治療においても、決定的な鍵を握る可能性があることを示しています。まさに、歯科と医科の連携が患者さんの未来を大きく変える、新しい時代の幕開けと言えるでしょう。

まとめ:これからの健康管理に活かすために

この記事で解説した4つの重要なポイントを振り返ってみましょう。

  1. ピロリ菌は胃だけでなく、お口の中にもいる。
  2. 口腔内のピロリ菌は、虫歯・歯周病・口臭と関連している可能性がある。
  3. お口の中のピロリ菌が、胃での再発の原因になることがある。
  4. 歯周病治療を行うと、胃のピロリ菌除菌の成功率が劇的に高まる。

ピロリ菌の問題を考えるとき、もはや胃だけを見るのではなく、口の中から胃腸までをつなげて考える「包括的なアプローチ」が重要です。もしあなたが胃の不調に悩んでいたり、ピロリ菌の除菌治療がうまくいかなかったりした経験があるなら、次の一手は歯科医院にあるのかもしれません。かかりつけの歯科医に相談し、お口の専門的なチェックを受けることが、胃の健康を取り戻すための重要な鍵となります。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)

Cuba E, Sánchez MC, Ciudad MJ, Collado L. Association of Helicobacter pylori as an Extragastric Reservoir in the Oral Cavity with Oral Diseases in Patients with and Without Gastritis-A Systematic Review. Microorganisms. 2025 Aug 21;13(8):1955. doi: 10.3390/microorganisms13081955. PMID: 40871459; PMCID: PMC12388271.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医