来院者専用ブログ

慢性炎症/歯周病/根尖病変/口腔がん

院長のとっておきの話 その7 「根管治療は危険」は本当?SNSで話題のウソとホントを最新研究から徹底解説

1. はじめに:なぜ根管治療はネットで怖がられているのか?

「根管治療は危険」「抜いた方がいい」——。インスタグラムなどのSNSで、このような過激な動画や投稿を目にして、不安になったことはありませんか?かつては痛い治療の代名詞だった根管治療ですが、近年では「全身の病気の原因になる」といった、より深刻な情報が拡散され、多くの患者さんを混乱させています。

この記事では、歯科情報リテラシー専門家・現役歯科医師として、こうしたネット上の情報の実態を解き明かす最新の研究論文(2025年発表)をもとに、何が真実で何が誤解なのかを徹底的に解説します。この記事を読めば、氾濫する情報に惑わされず、ご自身の健康を守るための知識が身につきます。

2. SNS上の根管治療情報、驚くべき5つの実態

今回ご紹介するのは、2025年に発表された学術研究です。この研究では、インスタグラム上に投稿された根管治療に関する100件の投稿を分析し、ネット上でどのような情報が、どのように語られているかを調査しました。その結果は驚くべきもので、なぜ誤った情報がこれほど効果的に広まってしまうのか、その仕組みが明らかになりました。

2.1. 驚きの事実①:情報の75%が「根管治療は危険」と主張するネガティブな内容だった

分析対象となった100件の投稿のうち、実に75件が「根管治療は有害である」と主張し、治療を受けないように促すネガティブな内容でした。

これは、オンラインで情報を探す患者さんが、バランスの取れた情報や肯定的な情報よりも、恐怖を煽るネガティブなコンテンツに遭遇する可能性がはるかに高いことを意味します。検索を始めた最初の段階で、すでに偏った認識が形成されてしまう危険性があるのです。

2.2. 驚きの事実②:ネガティブな情報の多くは「歯科医師」自身が発信していた

さらに驚くべきことに、こうしたネガティブな投稿の多くは、専門家であるはずの歯科医師によって作成されていました。調査対象の投稿のうち62件は歯科医師によるものでしたが、そのうち38件が根管治療に対して否定的な内容だったのです。特に、調査対象となった投稿の4分の1近く(23件)が、わずか3人の歯科医師クリエイターによって作成されていたことも判明しました。

現役歯科医師として、専門家が誤情報を広めるこの現実は最も憂慮すべき点です。人々は当然、歯科医師の言葉を信頼します。その専門家が誤った情報を発信すると、それは非常に信憑性があるように見えてしまい、患者がエビデンス(科学的根拠)に基づいたアドバイスと区別することは極めて困難になります。

研究では、こうした歯科医師の心理についても分析されています。彼らは自らを、巨大な権力に立ち向かう「勇敢で献身的な少数派」と位置づけ、まだ世間が気づいていない陰謀をいち早く見抜いた先駆者として振る舞うのです。この手法が、専門家からの情報という信頼性と相まって、非常に強力な説得力を生み出してしまいます。

2.3. 驚きの事実③:過激でネガティブな投稿ほど「いいね」やコメントが多かった

データは、過激な主張ほど注目を集めやすいというSNSの特性を浮き彫りにしました。

ネガティブな感情を煽る投稿は、肯定的な投稿に比べて、平均して「いいね」の数が約6倍(13,987件 vs 2,295件)、コメント数も多い(399件 vs 307件)という結果でした。これらの投稿は、しばしば扇動的な言葉やイメージを巧みに利用します。実際に、ある投稿では次のように主張されていました。

口の中にありうる最も危険なものは根管治療です。その理由は、根管充填された歯は死んだ歯だからです…。そこには微生物が住み着くことができるのです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。研究によると、ネガティブな情報を発信する側は、カメラアングルや音楽、個人的な物語といった感情に訴えるツールを巧みに使い、視聴者との「親密さ」を演出するのが非常に上手いのです。一方で、科学的根拠を重視する歯科医師は、専門家としての「権威」に頼りすぎてしまい、情報が一方的で冷たい印象を与えがちであると分析されています。

2.4. 驚きの事実④:一見科学的な「証拠」は、古い情報や研究の悪用だった

誤った情報を発信する人々は、自らの主張が正当であるかのように見せるため、科学研究を悪用することがあります。これは、自説に都合の良い部分だけを科学論文から抜き出してくる「チェリー・ピッキング」と呼ばれる典型的な手口です。

例えば、ある投稿では「根管治療を受けた歯の100%がエンドトキシン(内毒素)を産生する」と主張するために、権威ある歯内療法学の専門誌『Journal of Endodontics』の論文を引用していました。しかし、引用された元の研究論文を詳しく見ると、それは根管治療が失敗した症例に関するものであり、成功した一般的な根管治療とは全く文脈が異なります。

また、科学的根拠の欠如から20世紀初頭に主流から外れた「病巣感染説」(歯の細菌が全身に広がるという理論)を、あたかも最新の知見であるかのように持ち出す手口も見られました。これは、オンラインで提示される「証拠」に対して、私たちがいかに批判的になるべきかを教えてくれます。(※根管治療の炎症物質と全身への影響に関してはまた別の記事で解説します)

2.5. 驚きの事実⑤:治療を批判する側にも「商業的な動機」が隠されていた

根管治療を批判する人々は、しばしば「主流の歯科医療は巨大なビジネスだ」と非難します。しかし、今回の研究で、批判する側にも商業的な利益相反が存在することが明らかになりました。

彼らは根管治療を危険だと主張する一方で、高価な代替治療を宣伝しているケースが多く見られたのです。あるインフルエンサーは、次のように語っていました。

それ(根管治療した歯)は抜きなさい。その歯は死んでいる。そのままにせず、ジルコニアインプラントを入れなさい…。少し値段は張るけれど、その価値はある。

この点は、彼らの主張の矛盾を浮き彫りにします。もちろん、これは彼らだけの問題ではありません。研究では、主流の歯科医療界自体が商業主義と複雑な関係にあり、そのことが一般の方々の不信感を生む土壌になっている可能性も指摘されています。だからこそ、私たちはあらゆる情報に対して、その裏にある動機を冷静に見極める必要があるのです。

3. まとめ:信頼できる情報を見極め、あなたの歯を守るために

今回の解説で見てきたように、ソーシャルメディアは根管治療に関する魅力的で、しかし誤解を招きやすい情報で溢れています。そして驚くべきことに、その一部は商業的な目的を持った歯科医師自身によって広められています。

しかし、どうか安心してください。根管治療は、大多数の歯科専門家によって支持されている、安全で効果的な標準治療です。

情報が溢れる現代において、最も大切なのは「誰を信じるか」です。結局のところ、最も重要な対話はスマートフォンの画面上で行われるものではなく、あなたの口の中を実際に診察した専門家との診察室で行われるものです。ネット上のインフルエンサーと、あなたを直接診察する歯科医師、どちらの言葉を信頼しますか?不安や疑問があれば、必ずかかりつけの歯科医師に直接相談し、ご自身の状況に合った最適な治療法を一緒に見つけてください。

【動画で知りたい方はこちら↓】(一部読み方がおかしい部分がありますが内容は正確です)

引用)
Holden, A.C.L. Root Canals and Conspiracies: A Social Semiotic Analysis of Digital Narratives on Social Media and the Promotion of Misinformation. Dent. J. 202513, 453. https://doi.org/10.3390/dj13100453

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医