神経は温存するに限る
投稿日:2018年7月30日
カテゴリ:神経温存
むし歯がとても大きくなっている場合に、むし歯の部分を全部取ると中の神経が露出することがあります。そしてこの露出した場所にカルシウムを置いて樹脂で封鎖するという治療がありますが、カルシウムの強度があまり強くないために処置した後にしみるとか痛みが出るということがよくありました。
これを解決するために、当院では別の素材を使って神経温存処置を提案することが多くあります。その理由は、術後のしみるとか痛みが圧倒的に少ない、つまり成功率が高いから。MTAという素材を使います。
MTAが販売された当初は、輸入して使っていました。今は特許が切れて国内でも認可がおりて購入できるようになったため比較的容易に入手できるようになりましたが、原料の価格は非常に高いです。当院ではMTAを4種類使い分けています。
さて、先日このような方がいらっしゃいました。むし歯が深くて神経が露出してひとまずカルシウムと樹脂で封鎖することになりました。これで上手くいけばいいのですが、残念ながらあまり成功率は高くないことを伝えておき、ダメな場合のMTAによる神経温存療法(Vital Pulp Therapy)を提案しました。
結果はやはりよろしくないようで、処置した後の痛みがあるようで、MTAによる神経温存療法を選択されました。本日、術後の経過確認を電話で行いました。幸いにも痛みから解放されてなんともなくなったとのことで、この結果はある程度予想されていたものの嬉しく思いました。
温存する神経細胞が溶けていたりするとこの方法の適用にはなりませんが、マイクロスコープで細胞の状態を確認した上で神経温存ができるかどうか判断しています。
なぜ、神経温存にこだわるのか?
これは歯の根の治療になると、個人個人でバリエーションがたくさんある複雑な形をしているので、根管治療をすることにより抱え込むリスクが増えることを避けるためです。
歯がしみる、痛い → 神経をとりましょう
この流れは治療方法に制限のある保険診療においてのみ成り立つ考え方であり、とても古い考え方だと今では思います(現在でも、感染が歯の内部まで到達してしまっている場合は、根管治療一択しかできないこともあります)。
もしくは、
治療した歯がしみる → 様子をみましょう → ずっとしみ続けた結果神経をとりましょう
という好ましくない流れもあり得ます。
またMTAを使えばいいのかと言えば、そうではありません。
ラバーダムにて唾液の侵入のない状態にした上で、マイクロスコープで見ながら丁寧にむし歯の部分を完全に取り除き、神経や血管の状態をしっかりと観察してどこまで取り除くかを判断し、その上でMTAを用いて封鎖し、さらに周囲をしっかりと封鎖していきます。だいたい45分ほどかかることが多いです。
MTAを用いた神経温存療法は保険外診療で3万円(税別)ほどかかりますが、根管治療を避けることや歯の寿命を考えると非常に有効な治療方法だと思います。
この処置と同等の結果を1500円ほどの予算の保険治療で求められた場合、昔の手法で肉眼でラバーダムなしで短時間でどう対応すればいいのか考えていつも悩みます。
浦安市でむし歯が深い、神経温存の可能性を知りたい方はぜひ一度ご相談ください。
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