院長のとっておきの話

アドバンス審美/スマイル

院長のとっておきの話 その119 その顔で、笑えるように 歯科医師が考える、見た目と心 第5章 「いいね」がなくても、自分を認められるか

■ 数字を、何度も確かめてしまう

写真を一枚、投稿したとします。しばらくして、つい画面を開く。「いいね」はいくつついただろう。さっき見たばかりなのに、また確かめてしまう。

数が伸びれば、少しうれしい。伸びなければ、写真の選び方が悪かったのかと考えてしまう。そんな経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。

こうした、人に認められたいという気持ちを「承認欲求」と呼びます。この章では、その気持ちがどこから来て、どこから苦しみに変わるのかを考えます。

■ 「いいね」に反応する脳

この「認められたい」という気持ちが、SNSの画面でどう動くのかを調べた実験があります。

アメリカの研究グループは、10代の若者に、Instagramに似せた画面で写真を見てもらいました。そのあいだ、脳のどこが働いているかを画像で調べる装置で、活動を記録しました。

若者たちは、「いいね」が多い写真ほど、自分も「いいね」を押しやすくなっていました。そうした写真を見ているとき、ごほうびを感じる働きや、他人の気持ちを察する働きに関わる脳の場所が、より強く動いていました。ただし、参加者の少ない小さな実験です。

認められているかどうかは、昔は目に見えないものでした。いまは数字で表示され、人と比べられ、毎日更新されています。

■ 認められたい気持ちは、悪いものではない

「承認欲求」という言葉は、日本ではどこか否定的に使われることがあります。人に認められたいのは弱さで、手放すべきものだ、という考え方もあります。

けれども心理学の古典は、認められたい気持ちを、人の基本的な欲求の一つとしています。心理学者のマズローは、人には「尊重されたい」という欲求があると述べました。自分の力に自信を持ちたいという面と、他人から評価され、注目され、感謝されたいという面です。

精神分析家のコフートは、子どもの心の育ちについて考えました。子どもが健やかに育つには、育ててくれる人から喜びをもって見つめられ、認められる体験が欠かせない。その承認が少しずつ心の中に取り込まれ、人はやがて、他人の評価がなくても自分を支えられるようになる、というのです。

ほめられなくても、自分はここにいてよいと思える。この状態を、この章では「自己承認」と呼びます。コフートの考え方に立てば、承認欲求と自己承認は対立するものではなく、心が育つ道筋の「前」と「後」にあるものなのでしょう。

■ 分かれ目は、「価値の条件」

では、認められたい気持ちが苦しみに変わるのは、どこからでしょうか。

カウンセリングの一つの方法を築いた心理学者のロジャーズは、「価値の条件」という考え方を示しました。「いい子にしていれば愛される」「成績がよければ認められる」。子どもがそうした条件つきの愛情を受けると、その条件を自分の中に取り込みます。そして、条件を満たしているときにしか、自分に価値があると感じられなくなるのです。

いまの心理学では、これが「自己価値の随伴性」という名前で研究されています。難しい言葉ですが、「自分の価値を何に賭けているか」と言い換えられます。アメリカの心理学者クロッカーらによれば、賭けた分野でうまくいくかどうかで、人の自尊感情は上がったり下がったりします。自尊感情とは、自分には価値があると感じる気持ちのことです。

何に賭けるかは、人によって違います。成績に賭ける人もいれば、外見や、他人からの評価に賭ける人もいます。この考え方に当てはめると、外見や承認に価値を賭ける人は、「いいね」が多い日は自分に価値があると感じます。少ない日は、自分そのものを否定されたように感じることになります。

クロッカーらはさらに、自尊感情を追い求めること自体に「コスト」があると指摘しました。価値を賭けた分野では、自分の価値を証明することが目的になります。そこで価値が脅かされると、学ぶこと、人とつながること、自分で選ぶこと、長い目で見た心と体の健康が損なわれやすい、というのです。

追い求めて得られる一時の気分のよさは、そのコストに見合わないことが多い、というのが彼らの結論です。なお、これらの論文は、それまでの研究を整理して理論にまとめたものです。

外見については、イランで美容手術を希望する人およそ90人を調べた調査があります。自分をよく理解している人ほど、うつや不安、ストレスが少なく、外見や承認に価値を賭ける傾向も弱くなっていました。「外見や承認に価値を賭ける人ほど心が苦しい」という結びつきは、自分をどれだけ理解しているかで、すべて説明がつきました。

ただし、一時点の調査なので、どちらが原因かまでは分かりません。イランの一つの集団での結果で、日本に当てはまるかも分かっていません。

ロジャーズとクロッカーの考え方を合わせると、次のように整理できます。ただし、これは理論の上での整理で、研究で直接確かめられたものではありません。

承認欲求そのものは、人として自然な気持ちです。問題になるのは、自分の価値の条件が、外見や他人の評価といった「外側」に置かれている状態です。評価が得られなければ、自分の価値そのものが揺らいでしまいます。

自己承認は、評価とは関係なく、欠点も含めた自分がここにいてよいと認められる状態です。価値の条件が「内側」にあるか、条件そのものがゆるんでいる状態と言えるでしょう。

■ 自分を「高く評価する」こととは違う

自己承認は、自分を高く評価すること、つまり自尊感情を高めることとは違います。自尊感情は多くの場合、他人との比較や、何かを達成したことに支えられています。だから、比べて負けたり失敗したりすると、簡単に下がってしまいます。

これに対して近年注目されているのが、「セルフ・コンパッション」です。日本語にすれば「自分への思いやり」。失敗して落ち込む友人にかける言葉を、自分にもかけてやること、と考えると分かりやすいかもしれません。

アメリカの心理学者ネフは、これを3つの要素で説明しました。苦しいときに自分を責めず、友人にするように優しく接すること。苦しみは自分だけのものではなく、人に共通するものだと理解すること。つらい感情に飲み込まれず、それに気づいていること。セルフ・コンパッションは、他人より優れていることを必要としません。

外見との関係でも、この考え方を支えるデータが集まっています。たくさんの研究をまとめた報告によれば、セルフ・コンパッションが高い人ほど、自分の体のイメージ(身体像)の悩みが少なく、体を肯定的に捉えていました。それを育てる取り組みでも、比較のためのグループに比べて、身体像の悩みが改善していました。

■ 外見ではなく、体の「働き」に目を向ける

もう一つ、興味深い研究があります。オランダの研究グループは、自分の体に否定的なイメージを持つ女性81人を、くじ引きのように2つのグループに分けました。

一方のグループは、体の「働き」について書く課題に取り組みました。歩けること、抱きしめられること、話せること、味わえること。体が自分のためにしてくれていることを、書き出すのです。もう一方のグループは、比較のための別の課題を行いました。

その結果、体の働きに目を向けたグループでは、外見への満足、体の働きへの満足、体への感謝が高まりました。自分の体を、外から眺められる「物」のように見る見方も、弱まっていました。

外見を直接変えなくても、体を「見られるもの」から「自分のために働くもの」として捉え直すと、外見への満足も高まったのです。ただし、参加者の少ない研究で、効果を追いかけた期間も1週間だけです。効果が長く続くかどうかは分かりません。

■ 日本の若者は、自分に満足しているか

気になる数字があります。こども家庭庁が2023年度に、13〜29歳の若者を対象に5か国で行った調査です。「自分自身に満足している」と答えた日本の若者は57.4%で、調べた国の中で最も低い割合でした。最も高かったフランスは75.6%でした。

2018年度に内閣府が行った同じ種類の調査でも、日本は最も低い割合でした。もちろん、この数字だけで、日本の若者は自分を認められていないと決めつけることはできません。

自分を控えめに評価するのをよしとする文化が、答え方に影響していると考えられるからです。そのうえで、いまの若者は、冒頭で見たような、承認が数字で表示される環境の中にもいます。

■ 心理カウンセリングの考え方から

外見の悩みを考えるとき、「どこを変えたいか」だけでなく、次のような問いを自分に向けてみることもできます。

変わったら、何が起きると思いますか。 誰に、どのように見られたいですか。 それが叶ったら、自分の中の何が満たされると思いますか。

答えが「自信がつく」「人に好かれる」「やっと自分を好きになれる」だったとします。そのとき求めているのは、外見そのものより、外見を通じて得られるはずの承認なのかもしれません。これらの問いは、自分の価値の条件がどこに置かれているかを探る、手がかりになります。

ロジャーズは、カウンセラーが相手を条件なしに受け入れることが、人が変わるための大切な条件だと考えました。外見や成果と関係なく受け入れられる体験を重ねると、人は自分の中の価値の条件を、少しずつゆるめていける、という考え方です。コフートの言葉で言えば、外からの承認を、心の中に取り込み直す作業でしょう。

コフートの考え方に立てば、10代はこの取り込みの途中にある時期です。冒頭の実験で調べられたのも、この年代でした。いまの10代は、その途中で、承認が数字で表示され、際限なく比べられる環境にいるのです。

■ ピタンギーの言葉に、もう一度

この連載の最初に読んだ、形成外科医ピタンギーの本『形成外科――その広がりへの展望』(2016年)に、こんな一文があります。

「しかし、虚栄心を競争の産物とみなすべきではない。一人の人間として自分を大切にするための、各人の必要とみなすべきである」(ピタンギーの本より。筆者訳)

同じ「きれいになりたい」という気持ちの中に、2つのものを見分けている一節です。競争の産物としての虚栄心は、他人との比較の中にある承認欲求で、価値の条件が外側にある状態。一人の人間として自分を大切にしたいという必要は、自己承認に近いものと読めます。

同じ本には、「自分の年齢を受け入れている人ほど、形成外科の結果をよく受け入れる」という一文もありました。外見の変化が救いになるかどうかは、受け取る側が自分をどう受け入れているかに関わる。この一文も、そう読めるのでしょう。

この章では、認められたい気持ちは自然なもので、分かれ目は自分の価値を何に賭けているかにある、という考え方を見てきました。自分への思いやりや、体の働きに目を向ける取り組みも、研究が重ねられています。次の第6章「隣の国で起きていること――韓国の美容医療」では、価値の条件が個人の心だけでなく、社会の仕組みにまで組み込まれている国を取り上げます。

歯科医師 青山達也

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■ 参考文献

[一次資料] Pitanguy I(編). Cirurgia Plástica – Uma Visão de Sua Amplitude. São Paulo: Editora Atheneu; 2016.  成書第5章 Cirurgia de Rejuvenescimento da Face(Pitanguy I, Machado BHB)p.79–80。★1(専門家の意見)

[理論(PubMed非収載の古典を含む)] Maslow AH. A theory of human motivation. Psychol Rev. 1943;50(4):370-396. Rogers CR. A theory of therapy, personality, and interpersonal relationships, as developed in the client-centered framework. In: Koch S, ed. Psychology: A Study of a Science. Vol 3. New York: McGraw-Hill; 1959. Kohut H. The Analysis of the Self. New York: International Universities Press; 1971. Neff KD. Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self Identity. 2003;2(2):85-101.

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Valikhani A, Goodarzi MA. Contingencies of Self-Worth and Psychological Distress in Iranian Patients Seeking Cosmetic Surgery: Integrative Self-Knowledge as Mediator. Aesthetic Plast Surg. 2017;41(4):955-963. ★2 DOI: 10.1007/s00266-017-0853-8

[承認とSNS] Sherman LE, Payton AA, Hernandez LM, Greenfield PM, Dapretto M. The Power of the Like in Adolescence: Effects of Peer Influence on Neural and Behavioral Responses to Social Media. Psychol Sci. 2016;27(7):1027-35. ★2 DOI: 10.1177/0956797616645673

[セルフ・コンパッションと身体像] Turk F, Waller G. Is self-compassion relevant to the pathology and treatment of eating and body image concerns? A systematic review and meta-analysis. Clin Psychol Rev. 2020;79:101856. ★3 DOI: 10.1016/j.cpr.2020.101856

[体の働きへの注目] Alleva JM, Martijn C, Van Breukelen GJP, Jansen A, Karos K. Expand Your Horizon: A programme that improves body image and reduces self-objectification by training women to focus on body functionality. Body Image. 2015;15:81-9. ★2 DOI: 10.1016/j.bodyim.2015.07.001

[日本の若者] こども家庭庁. 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度). 2024年. 内閣府. 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度). 2019年.

院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医