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根管治療の妙

投稿日:2023年1月13日

カテゴリ:根管治療

歯の内部の空間のことを根管といい、その空間が細菌感染した場合に感染を取り除く治療のことを根管治療(root canal)といいます。一般的には「神経をとる」などと呼ばれた時代もありました(今は神経をとることは稀であり歯の内部の神経や血管は感染により腐敗していることがほとんどなので、「神経をとる」という表現は一見わかりやすいですが実態と違っており適切ではありません。もし仮に神経や血管が残っている場合は取るのではなく、温存療法を行うのがフェアなやり方となっており、神経温存療法(Vitatl Pulp Therapy)と呼んでいます)。正確には感染根管治療と呼びます。

根管治療のよくある相談事として当院では、「なかなか治らない」、「痛みが取れない」、「ずっと通ってるけど治療が終わらない」、「根管治療が上手くいかないから抜歯を勧められた」等が挙げられます。

根管治療はどの歯科医院でも日常的に行われているにも関わらず、適切な治療が行われていない理由はなぜでしょうか?
その理由として考えられるのは、
1 個々の歯及び根管の形態の複雑性により十分な清掃を行うことが困難な場合がある(患者側の問題)
2 従来の2次元X線写真のみでは形態の把握が困難な場合がある(術者側の問題)
3 形態が把握できたとしても感染を除去出来ないことがある(術者側、器具の問題)
4 治療の質を上げるための治療時間や機材の確保が十分に出来ない(保険制度の問題)

各項目を順を追って解説します。(イラストと写真はテキストブック Pathways of the pulp 12ed より引用)
1 個々の歯及び根管の形態の複雑性により十分な清掃を行うことが困難な場合がある(患者側の問題) 
 例えば小臼歯の場合、この図のよう多彩なバリエーションあることが報告されています。

こちら↓は1本の歯をマイクロCTを用いて根管の広がりを見た画像です。複雑に分岐したり交通したりと多彩な様子を示しています。

根の先端の方に分岐が集中していることを示した画像です↓

根管内と外側との交通路のバリエーションを示した図です↓

一方で、よく示される模式図はこちらです↓ 
根管は1本ずつで分岐した枝も交通路もない単純化された図です。これだけ単純な構造であれば感染除去は容易になるでしょうが、実際はそうではありません。

 

2 従来の2次元X線写真のみでは形態の把握が困難な場合がある(術者側の問題)

この写真↓の左側では何も異常が見られません。しかし、写真の右側に向かい、X線の精度を上げていくと問題が見つかります。患者さんは症状を訴えたのに関わらず通常の2次元のX線を撮っても異常が見つからず、CTを撮影して初めて問題が見つかるというのは下あごの奥歯によく見られる現象です。


3 形態が把握できたとしても感染を除去出来ないことがある(術者側、器具、清掃方法の問題)

こちら↓は根管の表面に付着した細菌の画像です。根管の表面に存在するだけでなく、ぽこぽこ開いた穴の中にも入り込むことがあります。これらを除去していくのが治療になります。

根管内の感染を除去するためのさまざまな素材及び形の器具が開発されてきました。器具の一例を示します↓

これらの器具を駆使すれば根管内は綺麗になるのかというと実はそうではないことがわかっています。こちらの画像↓は治療前の形を緑で示し、治療後の形を赤で示しています。緑の部分が残っているということは、それだけ接触しないということを示しています。

つまり器具の操作だけでは全く取りきれていないということを示しています。器具で感染除去には限界があるということです。実際には、さまざまな洗浄方法を組み合わせたり、薬剤を組み合わせることで感染除去効率を上げていきます。その手法は各歯科医院によって異なります。

4 治療の質を上げるための治療時間や機材の確保が十分に出来ない(保険制度の問題)
昔から保険制度上の問題が言われています。検査や治療の手法そして薬剤、治療時間に相当な制約が生まれます。そもそも保険制度内で必要十分に出来れば一番いいのですが、現実はそうではなく日本全国において、まだまだ根管治療の平均的クオリティーは低いままと言えます。例えば、「この機材と薬剤はこれを使って、この時間内で治療のクオリティーを確保してください」とオーダーがあったとしたら、必要十分な力を発揮出来ず、期待に答えるのが難しいと答えざるを得ません。我々の医療は治すというのが大前提にあります。

以上、4項目に分けて根管治療はどの歯科医院でも日常的に行われているにも関わらず、適切な治療が行われていない理由を考察してみました。

ではここからはいくつか治療の例を挙げてみましょう。


ケース1 下の奥歯(#47) 
一度治療をしてある再治療ケースで前医にて抜歯と言われて来院されました。CTで見ると根管の形は根っこが癒合しており断面がCの字型(C-shaped)をしています。
Cの字型はそれだけで難易度が上がりますから、感染が中に残っているのでしょう。
外側に深い歯周ポケットも見られます。もしかすると縦に亀裂が入っているかもしれません。亀裂が確定した場合は、治療後割れる可能性が高く予測がつかないため、非常に難しい状態からのスタートとなりました。

Cの字型の根管↓は清掃が非常に難しいと言われます。

幸い亀裂はありませんでした。根管治療は1回で終了し、2回目の来院で補強と仮歯を装着しました。1年経過後の写真↓です。根管周囲の骨は回復し、歯周ポケットも改善しています。治癒が認められました。


ケース2 下の奥歯(#46)
当院にメンテナンスで通院中の方で、下の奥歯が噛むと痛いということで治療を行ったケースです。CTを撮ると根の先の方に問題がありそうです。症状がなければ必ずしも治療を行うわけではないケースですが、今回は再治療を行いました。

治療は1回で終わり、2回目に補強とアクセスするために開けた穴を封鎖しました。
写真↓は治療後3年後のものです。症状もなく治癒も認められています。

 

ケース3 下の奥歯(#36)

痛くて咬めない、痛みが持続するということで来院された方です。根管が4本あり、感染している影響で骨のミネラル分が減少しています。根管治療を行った形跡はないので、初回の根管治療をいかに成功させるかがこの歯を長持ちさせる鍵になります。前と後の二股に分かれており、それぞれの断面をCTで見ると根管が2本ずつあります。根管の本数が増えると治療時間も増えますが1回の治療で終えました。



9ヶ月後の状態↓です。症状はなく、感染で失われた骨のミネラル分も戻ってきており良好な状態が確認できます。仮歯を外して最終のジルコニアに変えたら治療は終了です。

 

ケース4 下の奥歯(#46)
右下の歯茎が腫れてきたという方です。CTを撮影すると以前の根管治療に不備があるようには見えませんが、感染により骨が吸収しています。根管内が感染している可能性があるため再治療を行いました。

治療前↓のCT画像。根管治療の不備があるようには見えないが感染が潜んでいる可能性がある。

根管内の充填材をできる限り除去し洗浄を行い、再充填を行った↓

再治療を行っても腫れの改善が認められませんでした。こういう場合は別の処置を行い感染を取り除いていきます。根の先の方を切除する処置↓(歯根端切除術 root-end)を行います。

根の先端3mm以内の部分は、分岐が多発してそこに感染が取り残されているという説や、根の内側ではなく外側に感染があるという説があり、どちらにしても感染を取り除くには根管内からでは限界ということです。



歯根端切除を行った状態↓

10ヶ月後の状態↓

10ヶ月後のCTでの評価↓ 症状は消失し、骨も回復し治癒は良好。また使える歯になりました。

 

ケース5 上の奥歯 #27

歩くと奥歯が響くという方です。大きな虫歯の治療の跡があります。歯根は上顎洞(鼻腔の横にある空洞)に突き出ており、上顎洞の粘膜が分厚くなっていることから根管が感染していることがわかります。
この歯の場合、歯根が非常に長くさらに湾曲しており、難易度が高いことが伺えます。

治療は1回で終了しました。
1年4ヶ月後のCT画像です。症状はなく、上顎洞粘膜も正常に戻っているため炎症も消えています。良好な治癒と言えます。

 

ケース6 上の前歯 (#11)

歯ぐきを押すと違和感があるという方です。高齢のため根管が狭くなっており難易度が上がります。
根管はCTでまだ見える方ですが、これ以上狭窄してしまう方もいます。その場合は非常に難しくなることがあります。

治療は1回で終えました。3年半後の状態です。症状も消失し、骨の治癒も良好です。前歯の場合は、補強のみで被せなくても済むことが多いです。

 

ケース7 上の前歯 (#21)
被せ物が壊れてきた方です。被せ物を新製するにあたり、根管が感染している可能が高く、今現在症状はありませんが後々に問題を起こすリスクを考慮し、再治療を行ったケースです。

根管治療は1回で終わりました。治療2年半後の状態↓ 骨の治癒も見られ経過良好です。これで再治療の可能性はなくなり安心です。


ケース8 上の小臼歯(#23、24)

治療を放置していたので治療したいと希望された方です。大きなう蝕により根管は感染しているだけでなく、崩壊してしまい歯根だけの状態になってしまっています。


根管治療は1回で終わりました。しかしこのままでは歯を作ることが出来ない位置にあるため、引っ張り出す部分矯正治療(挺出)を行います。

位置の是正が終わったところです。根管治療を行った歯の骨の治癒は途中段階です。

1年5ヶ月後のCT画像です。骨のミネラル分も戻ってきて治癒は良好です。
被せ物も無事に入りました。

 

ケース9 上の前歯 (#11、21、22)

歯ぐきを押すと痛い、被せ物も新製したいという方です。根管は感染が見られ、再治療を行う必要がありそうです。前歯は3本同時にやりかえることになりました。3本それぞれを評価します。

治療は1回で完了しています。2年3ヶ月後のCT画像です。症状はありません。それぞれで比較してみますと、治癒傾向は認められますが完全に骨のミネラルが戻った状態ではない部位もあります。CT上で完全に戻っていない部位は症状がなければ治癒と認められますが、今後も注意深く見守る必要はあるでしょう。もし問題が起こった場合は歯根端切除(root-endo)を行うことになります。

 

ケース10 上の前歯 (#21、22)

他院からの紹介ケースです。治療をしても根管からの出血が治らない、違和感も続いている方です。CTにて状況を確認しますと、歯の外部が3箇所ほど不規則に吸収している(黄↓)のがわかります。
また、隣の歯との間の骨が吸収しており、重度歯周病の状況になっている(赤↓)ようです。

正直言ってかなり厳しい状態です。長期的に持つかどうか、根管治療だけでなく、歯周病の再生治療も必要になります。患者さんは歯を残すことにチャレンジしたいとのことで着手しました。依頼は2本でしたが、まず出血が止まらないという厳しい方の歯から治療をスタートしました。

歯の裏側から状況を見ていきます。

確かに出血してきます。


出血点をレーザーを用いて殺菌しながら根管内の感染を除去していきます。かなりの難症例です。
1回の治療で3つの穴も塞ぎ、根管治療を終えました。次回は歯周組織再生療法に取りかかります。


根管治療の2週間後、再生治療を行いました。

歯根の穴が空いていた部分の外部からアクセスし感染除去を行った後、再生材料を使用しています。

最小限の切開で行ってかなり細い糸を使って縫合しています。

処置から8ヶ月後の状態↓です。治癒は良好です。

CTで確認すると骨の再生が認められます。重度な方の歯はこれで攻略できたと言えます。
しかし、隣の歯に違和感があるようです。重度な方の影響で痛みを感じていたのではないことが判明したためそちらの治療に取りかかります。

古い充填材の周りに感染がある可能性が高いため、これを外します。

古い充填材を外せたことを確認し、洗浄し

充填し直します。

1回の治療で終えることが出来ました。その翌週に症状が消失していることを確認し補強して治療を終了し、紹介元の先生のところに戻られました。

以上、根管治療がなぜ治りにくいかの説明を4つに分けて説明し、臨床のケースを10ケースほどご紹介しました。治療の情報源は根管治療先進国の情報を元に説明しました。
根管治療は抜歯を避けることにつながるため非常に有効な治療方法であることをご理解いただけましたでしょうか。

根管治療は基本的にほとんどの治療で1回の処置で完了しますが、ごく稀に2回かかることがあります。
掲載した全ての治療において、国内未承認薬剤及び未承認機器を使用しており、保険適用外治療(自費治療)となっています。またこれらの薬剤の安全性及び重大な副作用やリスクについて諸外国での報告はありません。治療前後の3次元的X線診断や検証は当院独自で行っているもので一般的に普及した診査方法ではありません。

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