萎縮した骨のインプラント治療|浦安市の歯医者|新浦安駅のローズタウン歯科クリニック

1day短期集中治療対応

低侵襲治療

インビザラインGo

お問い合わせ・ご相談

抜歯に関するセカンドオピニオン受付中

047-354-5418

千葉県浦安市富岡4-1-8【新浦安駅近く】

萎縮した骨のインプラント治療

投稿日:2023年3月30日

カテゴリ:インプラント

上あごの奥歯の領域は、インプラント治療をする上で難易度が非常に高くなることが比較的多くあります。
上顎洞という骨の中に空洞が存在することでインプラントを入れる骨が不足しやすいというのが主な理由です。「骨が非常に薄いのでうちではインプラント治療は出来ません」と断られたりすることが多いのはこのためです。

これまでインプラント学の世界において骨の量が不足した上あご奥歯の部分にインプラントを行うために骨を増やしていく治療(上顎洞挙上術)が開発され続けてきました。

(2011年出版のこちらの書籍よりイラストを引用しています)

ざっと書きますとサイナスリフト(トラップドア、シェイブオフなど)、

 

 

ソケットリフト(搥打法、水圧法、ピエゾ併用水圧法、顕微鏡併用直接剥離、骨による挙上、PRFのみの挙上、骨とPRFとの併用など)の二つに大きく分かれます。

どちらも同じ効果を狙ってはいるものの、処置を行う範囲の大きさから術後の腫れる度合いはサイナスリフトの方が圧倒的に大きく、マスクをしてもわかるほど腫れたり、場合によっては皮膚が紫色になったり(内出血斑:次第に紫色が黄色くなって消えていく)することがありました。

 

そのようなダウンタイム(腫れ)がより少なくなるようにと、時代とともに腫れがより少ない方法であるソケットリフト法や上顎洞を避けてインプラントを行う手術法の開発がどんどん進みました。現在、サイナスリフト法で行われてきた手法を用いなくとも、ソケットリフト法と短く太いインプラントを使用することで良好な結果(術後の不快感の軽減、低侵襲性、治療期間の短縮、コストの削減)が得られるというエビデンスが蓄積してきています。[1][2][3][4][5]


ソケットリフト法に比べると体の負担が圧倒的に少ないソケットリフト法ですが、直径3mmほどの鍵穴手術的手法のため非常にテクニックセンシティブで決して簡単な方法ではありません。小さな穴から骨の奥の方を見ながら上顎洞の粘膜を剥離する(剥がす)のですが、患者さんによって粘膜の厚みが異なるため、あまりにも薄い場合は破れやすく厚い場合は破れにくく、粘膜が薄いというだけで難易度が上がってしまいます。

粘膜が破れた場合、そのまま処置を中止して粘膜の治癒を待ち、2ヶ月後に再度同じ処置を行うこともありますし、その場でサイナスリフト法に切り替えてリカバリーを行うこともあります。
最初からサイナスリフト法を行えばいいように思いますが、相当腫れる処置になるというのがデメリットの一つですから、患者さんの立場からすると難易度が高くても腫れを回避できるソケットリフト法で行いたいわけです。

実際の例で示してみます。

Case1) 左上奥歯を喪失してしばらく経過しています。上顎洞が大きく骨の厚みは不足しておりこのままではインプラントは入れられない状態です。
このように粘膜を上に挙げる必要があります。このようにインプラントを入れる場所から押し上げます(ソケットリフト)。

別の角度から見たところです。

実際に粘膜が押し上げられインプラントが入った状態です。


別の角度から

術後の腫れもほとんどなく経過良好でした。(腫れに関しては個人差が非常に大きいですが、サイナスリフトに比べると圧倒的に不快感は少ないと言えます)。2ヶ月経過を待ちインプラントの安定度を計測した後、安定が得られていれば型取り(口腔内スキャン)を行い歯を作成予定です。 持ち上げられた粘膜と骨との間は次第に骨が出来てきます。。

Case2)左上奥歯の抜歯せざるを得ない歯を抜歯し、4ヶ月ほど経過しています。骨が高度に萎縮しています。職業柄、大きく腫れる処置や長いダウンタイムがNGという方でした。

このままインプラントをすると、薄い壁にネジを入れた状態と同じく、負荷に耐えられない状態となります。

 

このケースもソケットリフトにて行いました。術直後から歯が入って負荷が与えられると、骨が成熟していきます。

手術直後

3ヶ月後

歯が入って3年後
インプラント周囲は分厚い骨に囲まれました。これで咬む力に耐えられます。

 

Case3) 右の奥歯(大臼歯)2本を失っている方です。相対する右下の歯は第一大臼歯まで残っているので今回右上は1本補えば良いといえます。

 

設計すると骨の量が不足しているので、

骨を増やして

骨が安定するのを待ち、被せもの型取り(スキャン)に入ります。

特に大きく腫れることなく治療が済みました。

Case4)歯にヒビが入って根管治療ではどうしようも出来ず、抜歯をせざるを得ない状態です。骨も薄くなっています。

抜歯をして3ヶ月経過したところです。少し骨が復活してきています。

今回は上顎洞を触れることなくインプラントを入れることが出来ました。
治療後の骨は安定した状態です。

Case 5)右上奥歯にインプラントを計画していますが骨が萎縮して薄い状態です。

一度、ソケットリフトを試みたのですが粘膜が非常に薄く脆弱で破れてしまったため、一旦処置を中断し粘膜の治癒を待ち再度オペを計画しました。

粘膜が非常に薄いことからソケットリフトではなくサイナスリフトを行いました。サイナスリフトの術中においても粘膜は破れましたが、手術は中断せずリカバリー処置を行いインプラントを設置出来ました。

幸いにも大きく腫れることなく経過良好でした(腫れ、痛みについては個人差が大きい)。

Case 6) 左上奥歯にインプラントをいれる方です。この方の場合は様々な条件が加わり非常に難しいケースとなっています。

様々な条件はこのトゲみたいに見える部分(隔壁、Septum)の存在です。

立体で見ると上顎洞を分け隔てる壁のようになっています。
インプラントを入れたい部分に丁度重なります。

この隔壁部分の粘膜は破るリスクが非常に高いため、破るのを回避する方法が提唱されていたりします[6]
外側からアプローチ(サイナスリフト)する際に、隔壁の規定部分を意図的に骨折させて浮かせた状態にするという方法や、隔壁の前後に相当する部分に窓を2つ開けてそれぞれ持ち上げて上の部分で繋げる方法など、テクニックセンシティブ(高度なテクニックが要求される)な処置と言えます。

 

さて、この方の話に戻って、外側からのアプローチを考えてみますと、ここでもハードルがありました。
動脈(後上歯槽動脈)の位置が比較的低い位置にあるということです。

外側からアクセスすると骨の中に埋まっている動脈をクリアしないといけないわけで、
動脈を傷つけずに骨だけを切削する超音波切削器具(ピエゾサージェリー)で、動脈の周りの骨を切削しないといけなくなります。ハイリスク(動脈損傷による大出血)、ハイテクニックセンシティブそして何より患者さんへの侵襲が大きくなることで大きく腫れることは避けられないとなってしまいます。

隔壁の存在と動脈の低い位置により、難易度は最大と言えるでしょう。
流石に頭を悩ませられました。インプラントを避けることはいつでも出来ますが、インプラントでしか達成できないこと(咬む力の回復、固定式であることによる生活の質の向上など)があるのは事実です。

結局、腫れることと侵襲性を下げることを目的にソケットリフトから行いました。結果的には上手くいきました、腫れもほとんどなく膜の損傷もなく終わりました。しかしながら、非常に難しいソケットリフトのオペでした(どうやってクリアしたかの詳細は割愛します)。

術後の写真と3ヶ月後の写真です。

 

以上、萎縮した上あごの骨のインプラント治療について書いてみました。
私自身、2004年にインプラント治療を初めて着手してきました。インプラントの世界では、患者さんの腫れやダウンタイムをいかに減らしたり長期安定させるかというテーマで、様々な手法が提案され検証され改善されるというのを繰り返しています。今後も変わらず、情報の最新アップデートを継続していく次第です。少しでも参考になりましたら幸いです。

尚、連続した場合、前歯のインプラントや、下あごのインプラントはまた違った考えが必要になります。

 

引用)

International Team for Implantology treatment guide vol.5 sinus floor augmentatoin 2011

参考文献)

[1]Toledano M, Fernández-Romero E, Vallecillo C, Toledano R, Osorio MT, Vallecillo-Rivas M. Short versus standard implants at sinus augmented sites: a systematic review and meta-analysis. Clin Oral Investig. 2022 Nov;26(11):6681-6698. doi: 10.1007/s00784-022-04628-1. Epub 2022 Sep 7. PMID: 36070150; PMCID: PMC9643210.

[2] Lombardo G, Signoriello A, Marincola M, Liboni P, Faccioni P, Zangani A, D'Agostino A, Nocini PF. Short and Ultra-Short Implants, in Association with Simultaneous Internal Sinus Lift in the Atrophic Posterior Maxilla: A Five-Year Retrospective Study. Materials (Basel). 2022 Nov 12;15(22):7995. doi: 10.3390/ma15227995. PMID: 36431480; PMCID: PMC9695726.

[3]Schiegnitz E, Hill N, Sagheb K, König J, Sagheb K, Al-Nawas B. Short versus Standard Length Implants with Sinus Floor Elevation for the Atrophic Posterior Maxilla. Acta Stomatol Croat. 2022 Jun;56(2):143-153. doi: 10.15644/asc56/2/5. PMID: 35821724; PMCID: PMC9262115.

[4]Hadzik J, Kubasiewicz-Ross P, Nawrot-Hadzik I, Gedrange T, Pitułaj A, Dominiak M. Short (6 mm) and Regular Dental Implants in the Posterior Maxilla-7-Years Follow-up Study. J Clin Med. 2021 Mar 1;10(5):940. doi: 10.3390/jcm10050940. PMID: 33804340; PMCID: PMC7957497.

[5]Wang M, Liu F, Ulm C, Shen H, Rausch-Fan X. Short Implants versus Longer Implants with Sinus Floor Elevation: A Systemic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials with a Post-Loading Follow-Up Duration of 5 Years. Materials (Basel). 2022 Jul 5;15(13):4722. doi: 10.3390/ma15134722. PMID: 35806845; PMCID: PMC9267683.

[6]Jung J, Hwang BY, Kim BS, Lee JW. Floating septum technique: easy and safe method maxillary sinus septa in sinus lifting procedure. Maxillofac Plast Reconstr Surg. 2019 Nov 28;41(1):54. doi: 10.1186/s40902-019-0233-1. PMID: 31824892; PMCID: PMC6881492.

[7]Alhumaidan G, Eltahir MA, Shaikh SS. Retrospective analysis of maxillary sinus septa - A cone beam computed tomography study. Saudi Dent J. 2021 Nov;33(7):467-473. doi: 10.1016/j.sdentj.2020.11.001. Epub 2020 Nov 11. PMID: 34803288; PMCID: PMC8589581.

5th Generation Implantology

トップへ戻る