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水分子を超音速で飛ばす!?
今季も情報のアップデートをどんどん行っています。いつもながらテクノロジーの進化には驚きます。
テクノロジーが進化すると、治療の術式も変化しますし、結果ももちろんより良い方向に変わります。
先日参加してきた光を使った治療の会もその一つでした。機器の開発から25周年が経過した記念公演でした。25年前は、光を使って歯を切削するというのがメインの使われ方でした。その後、科学的実証が進み、今は保険治療に「う蝕歯無痛的窩洞形成」として登場することになりました。
さらに光で歯石を取れることがわかり、保険治療において「手術時歯根面レーザー応用」として登場しました。
読まれている方の中には「むし歯を削るのは、従来の方法で削ればいいのでは?」「歯石を取るのも超音波で取れば良いのでは?」とお思いになる方がいることでしょう。
私もずっとそう思っていましたので当然です。ただの趣味的な機械だと思っていました。
それが全く違っていました。まずそれを説明しておきます。
上記に説明した光治療は数あるレーザーのうち、エルビウムヤグレーザーのみが使えることになっています。エルビウムヤグ、聞き慣れない言葉ですみません。まずこのレーザーは水に対する反応性が高く、水分子に当たると微小な水蒸気爆発を起こし、一気に気化させ水分子が超音速で飛んで行きます。水分子のサイズは2〜3Å(オングストロームと読みます1Å=100億分の1m(メートル)=0.1nm(ナノメートル)=100pm(ピコメートル)です)それが360°の方向に飛んでいくことで、対象物を除染します。
これにより歯周病で問題になる歯周病菌は殺せるわけです。
秘技、ウォーターマイクロエクスプロージョンと言います。
しかし!実は厄介なのは歯周病菌が出す毒素(LPS)です。200℃で30分の熱処理をしないと無毒化できないLPSは、超音波での歯石取りでは無毒化していないのです。エルビウムヤグレーザーの波長は2.94μm、LPSの光吸収波長は2.92μmと似ていて、これによりLPSが無毒化出来ることがわかっています。
LPSを無毒化できるということは、菌血症リスクが著しく下がるということになります。
話が難しくなってきたので、簡単にしましょう。
この機械はこれまで使われてきたどの器具にもない特性を持っていると言えるわけです。
さてさて、そこでさらに掛け算は続きます。
これに立体で診断できるCT画像診断、拡大視野で治療するマイクロスコープ、さらに近年確立されてきた低侵襲な歯周再生外科の術式が加わると歯周病の治療自体が大きく変化します。
従来の手法とは全く異なる治療法に変化するということです。使うメスも切開線も考え方もまるで変わりました。
あと、インプラント治療の時の骨の造成処置の時にもエルビウムヤグレーザーはあると良いですね。
他にも使い道はたくさんありますが、今回はこの辺りでにしておきます。
医院にCT、マイクロスコープ、エルビウムヤグレーザー、口腔スキャナーを完備して使えば、歯髄温存療法、歯周組織再生治療、根管治療、インプラント治療がかなり高いレベルで行える時代になったと思います。若い歯科医師の先生方にも是非是非、頑張って欲しいと思います。同時に矯正治療、抗加齢医学や栄養医学、栄養学も学んでおくと解決策の引き出しが増えて患者さんにとってはいろんな解決策が提案できるようになるのでかなり良いと思います。
というわけで今回は水分子を超音速で飛ばす機械の話でした。