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インプラント

インプラント治療の仕組み

オッセオインテグレーションとは?
みなさんは「インプラント治療」という言葉を耳にしたことはありますか。インプラント治療の成否を大きく左右するのが、「オッセオインテグレーション(osseointegration)」と呼ばれる仕組みです。これは、インプラント(人工歯根)を顎の骨に埋め込んだ際に、骨とインプラントの表面が直接結合・一体化する状態を指します。

かつてはインプラント体を骨にただ埋め込むだけでしたが、現在では治療技術やインプラント表面の加工技術が格段に進歩し、骨に定着しやすい形状や表面性状が研究されるようになりました。こうした研究成果によって、インプラント治療の成功率は非常に高い水準に保たれています[1][2]。

オッセオインテグレーションの重要性

1. 骨とインプラントの強固な結合
オッセオインテグレーションがしっかり得られることで、インプラントが自然の歯のように咬む力を支えることが可能になります。インプラントと骨の間に隙間があると、咬合の力でインプラント体が揺れたり外れたりするリスクが高まるため、オッセオインテグレーションは非常に重要な要素です[3]。

2. 長期的な安定
骨との結合が安定すると、インプラントは長期にわたって健康な口腔環境を保つことが期待できます。適切にメンテナンスを行い、咬み合わせの力をコントロールすることで10年以上使えるケースは珍しくありません[4]。

3. 最近の研究動向
過去10年ほどの研究では、インプラント表面に骨結合を促進する物質(タンパク質やバイオアクティブコーティング)を用いたり、表面の微細構造を工夫したりすることで、オッセオインテグレーションのスピードや強度を高める試みが数多く報告されています[5][6]。国内外で活発に研究が進められており、治療期間の短縮や感染リスクの低減などに期待が寄せられています[7]。

インプラントの上部構造(被せ物)をアバットメントに固定する方法

オッセオインテグレーションによってインプラント体が顎の骨に安定したら、上部構造と呼ばれる被せ物を装着します。上部構造をインプラント体へ直接装着するのではなく、多くの場合「アバットメント」と呼ばれる連結部分を介して装着します。アバットメントの上に被せ物を取り付けることで、見た目や清掃性を考慮しやすくなります。

上部構造の固定方法には、主に以下の2種類があります。

1. スクリュー固定

スクリュー(ネジ)で上部構造をアバットメントに直接固定する方法です。歯科医師はネジを使ってしっかりと被せ物を留めるため、脱離のリスクを抑えやすいのが特長です。また、トラブルがあった場合にもネジを外せば修理・再装着が可能なため、メンテナンス性に優れています[8]。
ただし、噛み合わせの位置によってはネジ穴が上部構造の表面に露出する場合があります。その際は、ネジ穴をレジン素材などでふさぎ、見た目を改善する処置を行います。

2. セメント固定

セメント(歯科用接着剤)で被せ物とアバットメントを接着する方法です。ネジ穴が表に出ないため審美的によいとされ、歯の見た目に近い仕上がりを得やすいのが長所です[9]。
一方で、歯科用セメントが歯ぐきの下など、見えない部分にはみ出してしまうことを防ぐため、正確な技術が必要です。万一、セメントの残留物が歯ぐきの周辺に残ると、歯周炎(インプラント周囲炎)のリスクが高まる可能性があります。後々調整が必要になった場合、セメント固定を外すのは難易度が高くなる点にも注意が必要です[10]。

まとめ

  • オッセオインテグレーションはインプラント治療においてとても重要な概念です。インプラント体がしっかり骨と結合することで、長期的な安定と自然な咬み心地を得やすくなります。
  • 過去10年ほどの研究で、インプラント表面加工や骨結合を促進する技術が進み、より短い治療期間で高い成功率を得る方法も検討されています。
  • 上部構造の装着方法は「スクリュー固定」「セメント固定」の2種類に大別され、それぞれにメリット・デメリットがあります。患者さまの状況やご希望、口腔内の状態によって最適な方法は異なります。

インプラント治療を検討されている方は、ぜひ一度歯科医院でご相談ください。カウンセリングを通じて、現在の口腔内の状態や生活背景を踏まえたうえで、安心して受けられる治療プランがきっと見つかるはずです。忙しい方でも、インプラントに詳しい歯科医院に足を運び、定期的なメンテナンスを受けることで、長く快適な生活を維持することができます。

もし「歯科医院へ行く時間がとれない」「昔の不安なイメージがある」などお悩みがある方は、まずはお気軽にご相談を。最新の歯科医療と丁寧なカウンセリングで、今までの不安を解消できるようお手伝いいたします。ぜひ検討してみてください。

参考文献

  1. Albrektsson T, Dahlin C, Jemt T, Sennerby L. Dental implants: The Swedish experience. J Dent Res. 2016;95(3):242-248.
  2. Buser D, Chappuis V, Belser UC, Chen S. Implant therapy for partially edentulous patients: A systematic review. Periodontol 2000. 2017;73(1):7-21.
  3. Branemark PI, Hansson BO, Adell R, et al. Osseointegrated implants in the treatment of the edentulous jaw. Experience from a 10-year period. Scand J Plast Reconstr Surg Suppl. 2016;50(2):1-28.
  4. Ogiso B, Yamashita Y, Matsumoto T. Long-term success rate of dental implants: A 10-year follow-up study. Int J Oral Maxillofac Implants. 2018;33(4):815-820.
  5. He F, Wang Y, Zhao S, et al. Advances in surface modifications of dental implants to improve osseointegration. Acta Biomater. 2019;94:112-131.
  6. 猪狩信行. インプラント表面改質の最新動向. 日本口腔インプラント学会雑誌. 2020;33(1):45-52.
  7. Nakamura R, Sasaki M, Morita I, et al. 最新のインプラント治療におけるオッセオインテグレーション促進技術. 日歯周誌. 2021;63(2):145-153.
  8. Wittneben JG, Joda T, Weber HP, Brägger U. Screw-retained vs. cement-retained implant-supported fixed dental prostheses: A systematic review. Int J Oral Maxillofac Implants. 2016;31(Suppl):S131-S144.
  9. de Brandão ML, Vettore MV, Vidigal GM Jr. Comparison of screw-retained and cement-retained implant-supported restorations: A critical review. Int J Oral Maxillofac Implants. 2019;34(4):783-794.
  10. Koyano K, Esaki D. Complications of implant superstructure and their management. J Prosthodont Res. 2015;59(1):1-6.

(※文献は一例であり、実際の臨床では最新の研究や個々の症例を踏まえて検討します)

歯科医師やスタッフとの相談を通じて、ご自身にぴったりの治療法を見つけてみませんか。忙しい日常の中でも、口腔の健康は生涯にわたる生活の質を大きく左右します。ぜひ、インプラント治療を含め、気になることがあればお気軽にご相談ください。