ブログ
木を見て森をみる その2 歯ぐきからの出血
最近、テレビや雑誌で歯周病の問題が取り上げられる機会が増えているように思います。
その内容は、歯周病菌が全身的に問題を起こしているというものです。
歯周病菌が産生した物質(TNFα)は、インスリンに対する抵抗性を上げると言われています。
インスリン抵抗性というのは、インスリンが分泌されても効きづらくなるということです。
血糖を下げるホルモンはインスリンしかありませんので、
血糖が高い状態が続いてしまう可能性があるということになります。
先日、ご紹介したこの書籍↓の中で血糖コントロールの重要性が詳しく書かれています。
さらに、歯周病菌の中にある毒素(内毒素:LPS)も問題があります。
口の中、とくに歯のつけ根の周りに歯垢(バクテリア)が増えて
よどんだ状態になっていると、唾をごっくんとしただけで飲み込んでいます。
これが胃の中にいきますと胃酸で溶かされます。
しかし、内毒素LPSは胃酸では溶かされません。
そのまま腸の中に運ばれます。
そして、腸内細菌バランスが撹乱されます。
腸というのは、とても大事な場所で免疫物質産生工場の中心であり、他にもセロトニンという精神を安定させる物質を作っています。
詳細を知りたい方は腸関連の書籍をお読みになることをお勧めします。
お勧めの書籍をいくつか挙げておきます。
人の命は腸が9割 ~大切な腸を病気から守る30の方法 (ワニブックスPLUS新書)
腸目線を作ってみて下さい(ただし、腸目線だけでは偏ります)。
話を歯ぐきに戻します。
歯周病のための検査は、X線写真と歯周病検査(ポケットプロービング、出血の有無、動揺の程度、分岐部病変の程度)を行ない診断します。
治療は、1段階目として歯石(感染した細菌が古くなってこびりついたもの)を取り除きます。
(定期的に歯石を取っているという方が多いですが、すでに病原性が発揮された後に歯石化しますので、それではタイミングが遅いです。その前段階のバイオフィルムという状態をコントロールする必要があります。)
その後再発の可能性を残すような骨の破壊があれば、その部分を整形し直します(骨を再生させる場合もあります)。
治療は通常ですと3ヶ月ほどかかりますし、再生療法をする場合は1年以上かかります。
さて、このような大変な状態になっていても来院される方が少ないのが現状です。
もし、あなたが先手を打ちたいのであれば、
以下の文章をよーく読んでおいて下さい。
ここからは、一般的な保険の給付で行なわれている歯周病治療とはかけ離れますが、
根本療法だと個人的に考えています。
一番大事なことは、
歯周病の初期段階の歯肉炎を絶対に見逃さないこと。
ここでくい止めるのが最も効率的で確実です。
では、見逃さないためにはどういった行動をしたら良いでしょうか?
ブラッシングを頑張ることでしょうか?
残念ながら、ブラッシングは対症療法です。
もっと上流にある原因にアプローチする必要があります。
まず、歯肉炎がないかのチェックを年に一度は歯科医院でチェックすることです。
歯肉炎があるということは、歯肉がぶよぶよになっているということです。
歯垢が付着したから、歯周病菌がいたことが原因でぶよぶよになったのでしょうか?
それともぶよぶよになっていて、栄養分が外に漏れ出るところにバクテリアが繁殖したのでしょうか?
私は後者だと考えています。
前者を特異的プラーク説、
後者をエコロジカルプラーク仮説と言います。
一般的には、ブラッシング指導がなされますし、
それが当然のような教育が我々歯科医療従事者にされています。
確かにブラッシングをしっかりとしていれば、バクテリアを取り除いていますので
歯肉炎は治ります。
でもこれはぶよぶよの歯ぐきの原因を治したことになるでしょうか?
ある栄養素が不足していてぶよぶよになっていたとしましょう。
ブラッシングをしたからといって栄養が補充されたわけではありませんよね。
もしかしたら再発しやすい状態で治っていると考えられませんか?
根本的には、従来のブラッシングをしっかりと行ないながら
栄養バランスの乱れまで目を向けて、
足りないものを適切に食事由来(サプリメントを含む)で補充していくと見違えるほどしっかりとした歯肉が構築されます。
これを行なうには、歯科医師、歯科衛生士が自主的に
栄養学、分子生物学、生化学、医学をミックスさせた分子栄養医学を学ぶと
すんなり理解できるかと思います。
当院では、このように根底にある栄養不足に目を向け補充し、
栄養不足を助長する薬剤や感染(ピロリ菌感染など)を考慮することで、
再発しづらい状態まで治癒させる歯周病治療を行なっています。