院長のとっておきの話

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院長のとっておきの話 その116 クレアチンは何に効くのか

― 話題の研究と最新メタ解析から読み解く

クレアチンで確かな根拠があるのは「筋トレと併用したときの筋力・除脂肪量の上乗せ」です。脳機能や「運動なしでの筋力向上」は、まだ研究段階にとどまります。

2026年9月、SNSで「クレアチン、運動なしでも筋力向上の可能性」という投稿が16万回以上表示されました。本記事では、その元になった論文と、2024〜2026年に発表されたメタ解析を中心に、クレアチンについて現時点で言えること・言えないことを整理します。

本文中の★はエビデンスの強さの目安です(★5:質の高いRCTのメタ解析、★3:単一のRCT、★1〜2:小規模・対照群なし・動物研究など)。数字の[ ]は末尾の引用文献番号です。

■ 話題の研究:運動なしでも筋力が増えた?

元になったのは、米テキサスA&M大学の研究グループが2026年8月に発表した12週間の試験です[1](★3)。45〜65歳の運動習慣のない成人73名が参加し、64名が解析されました。クレアチン1日10g(5g×2回)またはプラセボが二重盲検で割り付けられています。

結果として、運動も食事介入もしなかったクレアチン群で、除脂肪量・筋力・筋持久力が増加しました。運動と減量食を組み合わせた群では、体脂肪率の低下がより大きかったと報告されています。

ただし、読むときに注意したい点が4つあります。

  1. 運動をするかどうかは無作為化されていません。参加者は、運動プログラムに参加するかどうかを自分で選んでから、クレアチンかプラセボかに割り付けられました。そのため「運動なし群」と「運動あり群」の比較には選択バイアスが入ります。
  2. 除脂肪量はDXAで測定されています。クレアチンは筋肉の水分を増やすため、この増加がそのまま筋肉の増加とは言えません(水分増加の仕組みは後述します)。
  3. 1日10gは、一般的な摂取量(3〜5g)の2〜3倍です。4群に分けているため、1群あたりの人数も少なくなります。
  4. 認知機能や血液マーカーの結果について、著者自身が「探索的に解釈すべき」と書いています。

なお、この研究グループは国際スポーツ栄養学会(ISSN)のクレアチンに関する公式見解[3]の筆頭著者と同じ研究室です。研究の質を否定するものではありませんが、同じグループの研究が根拠として重なっている点は、読み手として意識しておきたいところです。

■ クレアチンとは:体内で作られ、食事からも入る物質

クレアチンは、筋肉が短時間に強い力を出すときのエネルギー(ATP)を素早く補充する物質です。体内のクレアチンの95%以上は骨格筋にあります[2]。

体内では2段階の反応で作られます。

酵素反応主な臓器
AGAT(アルギニン:グリシン アミジノトランスフェラーゼ)アルギニン+グリシン → グアニジノ酢酸腎臓
GAMT(グアニジノ酢酸 N-メチルトランスフェラーゼ)グアニジノ酢酸+メチル基 → クレアチン肝臓

これらの酵素や、クレアチンを細胞に取り込むトランスポーター(SLC6A8)の遺伝的な異常は「脳クレアチン欠乏症候群」と呼ばれる病気を起こします[25]。合成酵素の異常ではクレアチン補充が治療になりますが、トランスポーターの異常では補充がほとんど効きません。

体重70kgの成人では、1日に約2gのクレアチンがクレアチニンに変わって尿に排出されます[2]。その分は、肉や魚などの食事と体内での合成で補われています[2]。植物性の食品にはほとんど含まれないため、菜食の方は体内合成に頼ることになります。

クレアチンは加熱によってクレアチニンに変わるため、よく火を通した肉や魚では含有量が減ります。

■ 筋肉への効果:筋トレとの併用が前提

2026年に発表された複数のメタ解析は、いずれも「筋トレと併用すれば筋力と除脂肪量が上乗せされる」という結論で一致しています。

対象研究主な結果★
成人全般(63研究、1489名)Wang 2026[4]筋トレのみと比べ、上半身・下半身の筋力と除脂肪量が増加。脂肪量は差なし★5
18〜30歳男性(39試験)Gu 2026[5]除脂肪量が増えたのは筋トレと併用した場合のみ。無酸素パワーは筋トレの有無によらず向上★4
60歳以上(11試験)Yao 2026[6]筋力は小さいが改善。筋肉量と身体機能は有意差なし★4
閉経後女性(7試験)Naddafha 2026[7]1日5g以上を筋トレと併用した場合に、除脂肪量と筋力が改善。1日3g以下で筋トレなしでは効果なし。骨密度は変化なし★4
アスリート(52試験)Bai 2026[8]スプリント、ジャンプ、反復スプリントが改善。β-アラニンとの併用に上乗せ効果なし★4

特に若年男性のメタ解析[5]で、筋トレをしない条件では除脂肪量が増えなかったことは、冒頭の「運動なしでも増えた」という研究[1]とは異なる結果です。

高齢者については、筋力は改善しても、筋肉量や日常の身体機能への効果はまだ不確かです[6]。この解析の著者は、フレイルやサルコペニアの方にそのまま当てはめるべきではないとも述べています。

■ 脳への効果:期待は大きいが、根拠はまだ弱い

脳も筋肉と同じくATPで動いており、クレアチンを使うエネルギーの仕組みを持っています。ただし「仕組みがある」ことと「飲めば脳の働きが良くなる」ことは別の問題です。

脳へ届く量は多くありません

クレアチンは血液脳関門(BBB)を自由には通れず、専用のトランスポーターを通る必要があります。健康な若年者が1日20gを4週間とった研究では、脳内クレアチンの増加は平均8.7%で、個人差が3.5〜13.3%と大きいものでした[9](★2)。2026年のレビューも、脳内クレアチンの測定法には課題が多く、補充の効果は量や期間に左右される可能性があるとまとめています[17]。

睡眠不足のときの研究

ドイツの研究グループは、21時間の断眠中にクレアチンを1回だけ飲む試験を2回行っています。

  • 体重1kgあたり0.35g(70kgで約25g):脳のエネルギー指標とpHの低下が抑えられ、認知成績と処理速度が改善しました(15名)[10](★2)
  • 体重1kgあたり0.2g(70kgで約14g):論理・数値課題や言語の処理速度などで悪化が抑えられ、改善は最大12%でした。女性の方が効果が大きい傾向がありました(29名、平均27歳)[11](★3)

どちらも同じグループの研究で、対象は若年者です。著者自身も、高齢者に一般化できないこと、低用量での効果は控えめであることを述べています[11]。研究で使われた量は、日常的な摂取量(3〜5g)とは大きく異なります。

認知機能のメタ解析と、その批判

2024年のメタ解析(16試験)は、記憶力に小さな改善を報告しました[12](★3)。一方で、全般的な認知機能や実行機能には改善がなく、注意力の改善は健康な人のサブグループでは見られませんでした。2026年には、同じ研究のデータを重複して数えているという批判が発表されています[13]。

その他の研究

  • アルツハイマー病:患者20名が1日20gを8週間とったところ、脳内クレアチンが11%増え、認知検査の一部が改善しました[14]。ただし対照群のない試験です(★1)。
  • うつ症状:11試験のメタ解析で、効果の大きさは臨床的に意味のある差に届かず、エビデンスの確実性は非常に低いと評価されました[15](★3)。抗うつ薬などとの併用で有望とするレビューもありますが、双極性障害の試験では躁状態への移行が報告されています[16]。

■ 種類・量・個人差について

種類

クレアチンの研究のほとんどは、クレアチンモノハイドレート(一水和物)で行われています[3]。塩酸塩やエチルエステルなど他の形態も販売されていますが、モノハイドレートより優れているという臨床的な根拠は乏しいのが現状です。

量

研究でよく使われる量は、1日3〜5gです[3]。男女別の公式な推奨量はなく、体の大きさに応じて体重あたりで考えるのが一般的です。閉経後女性のメタ解析では、効果が見られたのは1日5g以上を筋トレと併用した場合でした[7]。

効果が出にくい人(ノンレスポンダー)

1日20gを5日間とった古典的な研究では、8名中5名で筋肉のクレアチンが約25%増えた一方、3名では5〜7%しか増えませんでした[18](★2)。もともと肉や魚をよく食べ、筋肉の蓄えが多い人ほど増える余地が少ないと考えられています。

体重が増える理由

飲み始めに体重が増えることがありますが、主な理由は筋肉の中の水分です。クレアチンは水に溶けやすく細胞膜を通り抜けられないため、筋肉に取り込まれると細胞の中にとどまります。細胞内の溶けている物質が増えると、濃度を保とうとして水が細胞の中に入ります(浸透圧による水の移動)。

体組成計で「筋肉が増えた」と表示されても、この水分が含まれている点には注意が必要です。冒頭の研究[1]の結果を読むときにも関わる点です。

加齢による変化

腸からの吸収は、年齢で変わらないようです。若年男性と高齢男性(平均70歳)にクレアチン5gを飲ませて血中濃度の推移を比べた研究では、吸収の速さや最高濃度に差はありませんでした[26](★2)。

一方、筋肉への取り込みについては、研究によって逆の結果が出ています。同じ研究[26]では、5日間の摂取で筋肉のクレアチンリン酸が若年者で35%増えたのに対し、高齢者では7%の増加にとどまりました。別の研究では、7日間の摂取で高齢者の方が小児や雑食の成人より大きく増えています[27](★2)。どちらも小規模で対象者も異なるため、現時点で結論は出せません。

体内のクレアチンの95%以上は骨格筋にあるため[2]、加齢で筋肉量が減れば、体内の総量も減ると考えられます(推論)。なお、同じ研究[27]では、7日間の摂取で脳のクレアチンリン酸はどの年齢群でも増えませんでした。

■ 安全性:腎臓の検査値と、注意が必要な方

血清クレアチニンは上がるが、実測の腎機能は変わらない

2026年のメタ解析(26研究、1036名)では、クレアチン摂取で血清クレアチニンが平均0.14 mg/dL上がり、クレアチニンから計算したGFRは約11 mL/min低く出ました[19](★4)。一方、別の方法(Cr-EDTA)で実際に測ったGFRには差がなく、尿蛋白なども変化していませんでした。著者らは、腎臓の障害ではなくクレアチニンの代謝が変わった結果と考察しています。別のメタ解析でも同様の結果です[20]。

このため、クレアチンを飲んでいる方は、健康診断などで「腎機能が低い」と判定される可能性があります。受診時には摂取していることを医師に伝えてください。1年を超える長期のデータは、まだ不足しています[20]。

脱毛との関係

2009年に、クレアチンで脱毛に関わるホルモン(DHT)が増えたという報告がありました[21](★2)。その後、2025年のRCTでは、12週間の摂取でDHTにも毛髪の状態にも差は見られませんでした[22](★3)。

効果が見られなかったもの

炎症マーカー(CRP、IL-6)[23]と、コレステロールや中性脂肪などの脂質[24]については、メタ解析で効果は確認されていません。

特に注意が必要な方

  • 腎臓の病気がある方、腎臓に負担のかかる薬を使っている方
  • 双極性障害の方(前述の躁状態への移行の報告[16])
  • 妊娠中・授乳中の方、未成年の方(安全性のデータが不十分)

サプリメントの利用を考えている方、特に持病や服薬のある方は、事前にかかりつけの医師にご相談ください。

■ まとめ

目的現時点の評価
筋トレと併用して筋力・除脂肪量を上乗せする根拠が強い(★5)
短時間の高強度運動のパフォーマンス根拠が強い(★4)
高齢者の筋力維持(筋トレと併用)筋力は小さく改善、筋肉量・身体機能は不確か(★4)
運動なしでの筋肉量・筋力の改善単一の試験のみ、水分の影響を分離できていない(★3)
健康な人の認知機能記憶にわずかな効果の報告、方法論への批判あり(★3)
睡眠不足時の認知機能若年者での高用量・単回投与の研究のみ(★2〜3)
うつ症状臨床的に意味のある効果は示されていない(★3)
炎症・脂質効果なし(★4)

「脳のサプリ」「運動なしでも筋肉がつく」といった分かりやすい言葉は広まりやすいものです。しかし現時点のエビデンスが最もはっきり支持しているのは、筋トレと組み合わせた使い方です。

院長視点の推論(以下は論文から直接導かれたものではなく、筆者の臨床的な考えです)

口の周りの筋力や咀嚼機能の低下(オーラルフレイル)と全身の筋力低下は、同じ流れの中にあると筆者は考えています。ただ、2026年9月にPubMedで検索した範囲では、健康な人や高齢者でクレアチンが口腔機能に与える影響を調べた研究は見つかりませんでした(神経筋疾患の患者で舌圧を副次的な評価項目に含めた試験計画が1件あるのみです)。全身の筋力維持の手段として考えるなら、まず運動習慣があり、そのうえで補助として検討する、という順番が妥当だと考えます。

■ 引用文献

  1. Chun J, et al. Effects of creatine supplementation with and without exercise and diet intervention on body composition, cognitive function, and markers of health in middle-aged and older adults. J Int Soc Sports Nutr. 2026;23(sup1):2716273. DOI: 10.1080/15502783.2026.2716273
  2. Balsom PD, et al. Creatine in humans with special reference to creatine supplementation. Sports Med. 1994;18(4):268-80. DOI: 10.2165/00007256-199418040-00005
  3. Kreider RB, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:18. DOI: 10.1186/s12970-017-0173-z
  4. Wang H, et al. Resistance training combined with creatine supplementation: a three-level meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2026;23(sup1):2718316. DOI: 10.1080/15502783.2026.2718316
  5. Gu J, et al. Creatine supplementation in young men under resistance versus non-resistance training: a systematic review and meta-analysis. Front Nutr. 2026;13:1800546. DOI: 10.3389/fnut.2026.1800546
  6. Yao L, et al. Effects of resistance training combined with creatine supplementation on muscle strength, physical function, and muscle mass in older adults. Front Nutr. 2026;13:1919884. DOI: 10.3389/fnut.2026.1919884
  7. Naddafha S, et al. Creatine monohydrate for lean mass, strength, and bone density in postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2026;23(1):2668435. DOI: 10.1080/15502783.2026.2668435
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院長紹介

院長

Tatsuya Aoyama

皆さま、こんにちは。私たちの歯科医院では、患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。
精密な技術と設備を活用し、痛みの少ない治療を心掛けています。また、審美治療やインプラント、メインテナンス、訪問診療、抗加齢医学的栄養療法など、幅広いニーズに対応できる専門的なケアを提供しております。皆さまの笑顔を守り、健康的で美しい歯を維持するお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

略歴

H6年3月
宮崎県立延岡高校卒業
H12年4月
国立徳島大学 歯学部歯学科卒業
H12年5月
歯科医師免許証取得
H12-15年
インプラントセンター、予防歯科医院など3件で勤務
H15年7月
瑞の木会 ローズタウン歯科入社
H22年2月
ローズタウン歯科クリニック 継承
H31年4月
医療法人 地天泰 理事長 就任

所属

  • 日本歯周病学会(歯周病)
  • 日本口腔インプラント学会(インプラント)
  • 日本顕微鏡歯科学会(マイクロスコープ)
  • International Team for Implantology(ITI) member(インプラント)
  • 日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
  • 日本分子状水素医学生物学会(アンチエイジング)
  • 日本アライナー矯正歯科研究会(マウスピース矯正)
  • Er-YAGレーザー臨床研究会(レーザー)
  • 日本口腔検査学会
  • 浦安市歯科医師会
  • 千葉県歯科医師会
  • 日本歯科医師会
  • 学校歯科医会

資格

歯科医師、日本抗加齢医学会専門医、ITIセクションジャパンインプラントスペシャリスト認定医